昨季越えを果たした京都ハンナリーズの「共に、登る。」成長ストーリー【B MY HERO!】

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【B.LEAGUE】

最低勝利数から再出発の今シーズン

今シーズンからチームの指揮を執るロイ・ラナ新HC 【(C)B.LEAGUE】

 こんにちは、B MY HERO!特派員、京都ハンナリーズブースターのデリックです。

 2月12日、京都ハンナリーズは大阪エヴェッサとのホームゲームを89-82で勝利。レギュラーシーズン15勝目を挙げ、昨シーズンの勝利数を越えた。シーズン38試合での到達は、早いとは言えないかもしれない。それでも、ここまでの流れを振り返ると感慨を持たずにはいられなかった。

 2017-18シーズンの西地区2位をピークに、戦績はシーズンを重ねるごとに下がっていく。昨シーズンは開幕直前の外国籍選手の契約解除から全ての歯車が狂い、ケガ人も続出して2度の2ケタ連敗を喫したあげく、過去最低の14勝でシーズンを終了した。株式会社マツシマホールディングスと株式会社アーキエムズの2社による共同経営体制という新体制で迎え、「共に、登る。」をスローガンに掲げた今シーズン。新ヘッドコーチに育成年代からNBAまで幅広い実績を誇るロイ・ラナが就任し、26歳の若さでNBA通算183試合出場のシェック・ディアロや初のアジア枠となるマシュー・ライトらを補強する。だが日本人選手は、主将の満田丈太郎、成長著しい若手PGの久保田義章こそ残留したものの、日本代表歴のある永吉佑也や主力として活躍した鈴木達也、細川一輝らが移籍。代わりにB1で実績のある選手を獲得できたとは言えず。「降格候補」として名が挙がっても仕方がない状況だった。

 さらに開幕直後は昇格組の仙台89ERS、ファイティングイーグルス名古屋にチームの完成度の差を見せつけられる。開幕2戦目こそかろうじて勝利したが、70点にも届かないスコアを続ける試合ぶりは前途の険しさを感じさせた。加えてシーホース三河戦GAME1でティージェー・ロールが脳震盪により離脱(10月18日インジュアリ―リスト入り)。“昨シーズンの二の舞”が頭をよぎる。

急成長のPG久保田がチームを牽引 【(C)B.LEAGUE】

 だが、今シーズンはここからが違った。続くGAME2、欠場の満田丈太郎の代役を務めた水野幹太が日本代表の西田優大をよく抑え、シェック・ディアロのファウルトラブルをトビンマーカス海舟がカバー。そして古巣との対決にジェロ―ド・ユトフが26得点と爆発。シーズン初めて70得点以上を上げ76-73で勝利したこの試合が今シーズンのターニングポイントだった。また、「共に、登る。」の象徴的存在と言える小西聖也がプレータイムを伸ばしたのもこの第3節三河戦だった。

 続く新潟アルビレックスBB戦はGAME1でシェック・ディアロが1試合のBリーグ最多ダンクを記録するなど連勝したハンナリーズだが、名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦でそのディアロが退場処分となりレバンガ北海道戦GAME1が出場停止。3週間のリーグ戦中断期間開けに暗雲立ち込めるかに見えた一戦だったが、ハンナリーズはこの日リーグ戦初ベンチ登録のザック・モーアのリバウンドも光り80-75で勝利!続くGAME2もマシュー・ライト24得点の活躍もあり連勝!! この後の展開を考えるとここで連勝できたのは大きかった。

 この北海道戦で得点ランキングトップに躍り出たジェロード・ユトフ(2月12日現在は9位)、そして押しも押されもせぬエースPGに成長し2月12日現在でもアシストランキング5位に付ける久保田義章。序盤は特にこの二人が両輪となりチームをけん引した。だがこのころの課題は彼ら二人を含む主力メンバーの負担の大きさ。時にプレータイムは大きく偏り、ベンチメンバーが出てもミスした途端に久保田義章・満田丈太郎をすぐ再投入という局面が多かった。また4人しかスコアしていない北海道戦GAME1(しかもジェロード・ユトフ、久保田義章、マシュー・ライトで80点中74点)に象徴されるように、TJ・ロール離脱後はベンチポイントが少ないのも課題とあった。

 そしてその後12月24日までの約1カ月、ハンナリーズは1勝11敗と苦しい時期を迎えることとなる。特に信州ブレイブウォリアーズ戦GAME2、負傷者続出でベンチ登録8人になってしまった信州の魂のバスケの前に屈するとそこから連敗街道に。終盤まで接戦だったアルバルク東京戦GAME2や小澤智将のスリーで追い上げた三遠ネオフェニックス戦GAME1など見せ場のあるゲームもあったが、特に三遠戦で苦しんだゾーン守備攻略が大きな課題となっていた。

 迎えた12月24日富山グラウジーズとのアウェーGAME1では今シーズンで一番の低調な試合となり、ついに8連敗を喫した。だがこの試合の終盤、ここまで出場機会が本当に少なかった小室昂大が躍動してチームにエナジーを注入する。迎えたGAME2、ハンナリーズは前日苦しんだ富山のジョシュア・スミスのインサイドへのパスをジェロ―ド・ユトフが寸断すると、課題のゾーン攻略に解答を見せ91-69で連敗ストップ! そしてこの試合に見せたゾーン攻略は、12月最終週アウェー5連戦を3勝2敗で勝ち越す原動力となった。

得点ランキングで上位を維持するユトフ 【(C)B.LEAGUE】

今シーズンのベストバウトは川崎とのGAME1

 12月のラストはこの時点で中地区首位に立つ川崎ブレイブサンダースとの対戦。滋賀レイクス戦にも勝利し連勝で迎えたGAME1はチームをけん引してきたジェロード・ユトフが厳しいマークにあう中、久保田義章が19得点8アシスト、シェック・ディアロ18得点18リバウンドなどで渡り合う。序盤は70点取るのも苦労していたチームが強豪相手に真っ向から点の取り合いを挑んだ末、87-83で堂々勝利!

 この試合が今シーズンここまでのベストバウトだと僕は思っている。

川崎を破り喜びにわく選手たち 【(C)B.LEAGUE】

 だが続くGAME2は第3クォーター終盤までリードしながら、篠山竜青のスーパーな活躍などで逆転されるとその後は自滅。終わってみれば76-89と差をつけられての敗戦で2022年を終えることになる。

 年が明けて1月6日、ハンナリーズはサンロッカーズ渋谷戦GAME2で約4年2カ月、1515日ぶりに渋谷に勝利! 続くFE名古屋戦は壮絶な点の取り合いの末敗れたが、印象に残ったのは終盤の残り1分1点ビハインドの相手ボール。失点が許されないこの局面で、ディフェンスの進境著しい小西聖也がエースPG久保田義章に代わり投入、その期待に応えたのだ。彼の成長と育成の確かさが感じられた1シーンだった。

 翌週、ホーム水曜開催過去最多となる2458人の観衆が詰めかけた大阪エヴェッサ戦。シーズン折り返し地点を87-77で快勝したこの試合、ハンナリーズは前半の間にベンチ入り12人が全員出場することになる。 この頃には選手起用も幅が広がり、序盤からのタイムシェアもできるようになってきた。そしてアルバルク戦以降加入のノヴァー・ガドソンのスコアリング能力もあり、ベンチスコア問題もこの頃にはもう囁かれなくなってきた。

 シーズン後半戦スタートの群馬クレインサンダーズ戦は、GAME2の青木龍史の活躍も光ったのだが連敗。1月最後はこの時点で川崎に代わり中地区首位に立つ横浜ビー・コルセアーズとの対戦。GAME1はこの直前にインジュアリ―リストから復帰したTJ・ロールが持ち前の機動力をゾーンディフェンスでいかんなく発揮し、横浜攻撃を第2クォーター以降封じることに成功。80-76で勝利し前月に続き中地区首位をアウェーGAME1で撃破! そしてGAME2も第3クォーターまでリードするが河村勇輝のスリーで逆転される。前月も見た展開だったが、ここから粘りを見せ食い下がり、マシュー・ライトと満田丈太郎の連続スリーで残り23秒ついに再逆転! 最後は横浜にまた逆転を許し敗戦ではあったが、ラストプレーまで勝敗が分からない試合ぶりに前月からの進歩を見せた。

 2月に入り茨城戦GAME1、ハンナリーズはシーズン序盤になかなか取れなかったフリースロー(それが響き2月12日までのFTは試投数リーグ23位、成功数同22位)を第4クォーターに9本すべて決めるなど我慢合戦を制し昨シーズンに並ぶ14勝目をあげた。

 だがこの試合で久保田義章が左眼窩内壁骨折のアクシデント。エースPGを欠いたハンナリーズは昨シーズン越えを前に足踏みをすることになる。そうして迎えた冒頭の2月12日大阪エヴェッサ戦。満田丈太郎がTJ・ニュービルを5得点に抑え、最大14点ビハインドを跳ね返す!チームをけん引してきた久保田義章抜きで勝利をもぎ取り、昨シーズン越えを果たした。

チームの強化だけでなく運営側の整備も急ピッチに進行

 ここまで振り返るとチームの成長は「共に、登る。」というスローガンにふさわしい成長を遂げている。選手たちの頑張りが第一だが、ロイ・ラナHCをはじめとするスタッフのチーム作りが本当にうまくいっているのを感じる。その点でいけばこのスタッフを揃えた新体制の運営や渡邉拓馬GMについても触れたい。

 今シーズン前、実績のあるロイ・ラナHC招へいに加えアシスタントコーチ4人体制を敷いた。これがベンチメンバーの成長につながっているのは想像に難くない。またメディカルスタッフも大幅に拡充。ハンナリーズはここ数シーズン、シーズン中の故障者に悩まされてきたが、今シーズンはチームの屋台骨を揺るがすような長期離脱がここまではない。またTJ・ロールのインジュアリ―リスト入りの際には直後にチリジ・ネパウェを、彼の契約満了後はノヴァー・ガドソンを獲得してその穴を埋める施策をフロントが即時実行。「コワレナイ」チーム構築がここまではできている。さらには新体制の運営も社員を30人超の体制にまで拡充(社員一桁の時代が長いのを知る古いブースターにはこれはすごいことなのだ)。新規スポンサー獲得や観客動員、さらには地域活動の増加などこちらも「共に、登る。」を日々実感できている。

 もちろんまだシーズンは3分の1を残している。中断明け3月8日以降のリーグ戦には、西地区上位の4強(島根スサノオマジック、広島ドラゴンフライズ、琉球ゴールデンキングス、名古屋)+リーグ全体1位の千葉ジェッツとの対戦が合計15試合残るという試練が待ち構える。だが、シーズンのここまでを思い返せば、この試練を乗り越えどこまで登っていくのだろう、というワクワク感がある。次のホームゲームは3月18日・19日の千葉J戦。ここで「4000人超総動員」を目指し大阪戦後に号外を配布した。今シーズンより就任の松島鴻太代表取締役社長も「本気で取り組む」と力強く語っている。今の京都ハンナリーズは本当に面白い。「推す」という言葉を本来の意味で使いたくなるチームだ。是非もっとたくさんの方に見て、感じてもらえたらと思う。

 まだまだ広がる「共に、登る。」成長ストーリーを。

 GO KYOTO HANNARYZ!!!!!!

運営側も観客増員などで新たな挑戦を続けている 【(C)B.LEAGUE】

デリック(B MY HERO!特派員)

【(C)デリック】

京都ハンナリーズブースターです。実は生まれも育ちも現在住んでいるのも大阪府ですが、京都には何かとご縁がありました。チーム創設の年にふらっと見に行ったところ、マクムード・アブドゥル=ラウーフのプレーとはんなりんに興味を惹かれて見に行くようになり、当時のブースターさんの動きを見て「ここで何か面白いことが起こりそうだ」と通うようになって早幾年。今ではホームもアウェーも行けるかぎり参戦中です。

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