さすがの大谷翔平でも緊張した第1打席…今永昇太との対決の裏側 開幕戦快勝も王者ドジャースが抱える不安要素
伏線――いや、伏線というほどではないが、前段がある。
山本が会見に応じているとき、私服に着替えた大谷が、会見場に早々と姿を見せた。そのとき一番後ろで、「早く終われ。いつまで喋ってるんだ?」とばかりに、左腕を叩いたりしながら、山本を急かしていた。ただそれに動じない山本はむしろ、普段よりゆっくりと話し、通訳の方が焦り、途中、言葉に詰まった。
大谷にプレッシャーを掛けられれば、萎縮するのは投手だけではない。
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「打席では緊張しない方なんですけど…」
ややあって、アイコンタクトが成立。そこでゆっくり大谷は打席に入り、マウンド上の今永昇太の初球――今年のメジャーの第1球を待つことになる。
その初球。今永は前日の会見で、こんな話をしていた。
「初球、何を投げるかっていうのを教えるということは、じゃんけんでチョキを出すと言っているようなものなので、1球目は言えない」
ただ、やはり真っ直ぐ。しかも昨年、彼の成功を導いた高め。独特の低いVAA(バーティカル・アプローチ・アングル)、高い回転効率、回転数を誇り、相手に“浮き上がっている”と錯覚させる球だ。
しかも、東京ドーム。親善試合のときから真っ直ぐの縦の変化量が、気圧の関係なのか、数インチ(1インチは2.54センチ)高く出ると話題になっていた。そのことにはもちろん、両チームとも気づいている。
ドジャースのコナー・マクギネス投手コーチ補佐は、「おそらく、これまでのイメージで振ると、バットは下をくぐるはず。投手には、高めを効果的に使おう、という話になるだろう」と明かした。
そうした経緯を知っていれば、今永が、高め真っ直ぐで大谷の反応を確かめようとすることは想定できた。振ってきた場合、バットがボールの下をくぐるのか、あるいはファウルになるのか。いずれのケースでも、大谷の想定よりも、今永の真っ直ぐが、伸びている証拠。
実際はしかし、そのいずれでもなかった。ストライクだったが、オープン戦のようにABS(自動判定システム)が使えたなら、判定が覆ったはず。大谷は、手を出さなかった。
大谷は結局、ほぼ真ん中の真っ直ぐを打って二塁ゴロ。これは何を意味するのか? ゴロということは、それほど伸びがなかった? あのコースではそもそも変化量の違いを感じにくいが、おそらく、大谷のミスショット。試合後の会見で大谷は、「打席では緊張しない方なんですけど、久々に緊張した」と話した。「四球だけはいらないなという感じで、思い切りすぎているなという感覚があった」。
大谷にしては、珍しく力が入りすぎた。
「日本独特の雰囲気というか、これだけお客さんが入ってくれているのもそうですし、打たなければいけないみたいな雰囲気があった」
よって、3打席目の初ヒットに安堵した。しかも、チャンスが広がり、そこから逆転につながったのだ。
「なんとか、ヒットを打ててよかった」