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3月11日（日本時間）、ダイヤモンドバックスとのオープン戦で2塁打を放った大谷。開幕シリーズに向けて調子は上向きだ【写真は共同】

　MLBの2025年シーズンはドジャースとカブスが対戦する東京シリーズで幕を開ける。昨季はドジャースが両リーグ最多の98勝を挙げ、ポストシーズンも勝ち進んで4年ぶり8度目のワールドシリーズ制覇を達成。前人未到の50本塁打＆50盗塁を達成した大谷翔平の活躍も光った。今季はドジャースがディフェンディング・チャンピオンとして21世紀初のワールドシリーズ連覇を目指すシーズンとなる。

　今季もワールドシリーズ制覇の最有力候補はドジャースだ。今オフはテオスカー・ヘルナンデス、ブレーク・トライネンといった昨季の主力と再契約を結び、ブレーク・スネル、佐々木朗希、タナー・スコット、カービー・イェイツと大物投手を次々に獲得。アンドリュー・フリードマン編成本部長は夏場のトレード市場が基本的には「売り手優位」になることを念頭に置き、「トレード・デッドラインで補強するのは避けたい」という方針のもと、豪華な戦力を築き上げた。

　主力の多くが30代に突入し、いつ急激な衰えが始まってもおかしくないこと、相変わらず先発陣に故障リスクの高い投手が多く、シーズンを通した稼働を計算できないことなど、懸念材料がまったくないわけではないが、大谷、ムーキー・ベッツ、フレディ・フリーマンの「MVPトリオ」から始まる強力打線は今季も健在で、メジャー2年目を迎える山本由伸にも昨季以上の活躍が期待できる。二刀流を再開する予定の大谷は、投手としての復帰時期の見通しが立っていないが、大谷の投手復帰を急がなくてもいいくらいに戦力は充実している。よほどの誤算が生じない限り、地区優勝は通過点に過ぎず、ワールドシリーズ連覇は極めて現実的な目標と言えそうだ。

　西地区でドジャースと張り合うチームが現れるとすれば、それはダイヤモンドバックスだろう。昨季は惜しくもポストシーズン進出を逃したが、リーグ優勝した前年よりも勝ち星を増やしていた。今オフは主砲クリスチャン・ウォーカーがFAで抜けたが、穴埋めとして昨季31本塁打＆108打点のジョシュア・ネーラーを獲得。「2年目のジンクス」に苦しんだ元新人王コービン・キャロルの復調も期待でき、トップクラスの得点力を維持できるはずだ。そして、投手陣には元サイ・ヤング賞投手のコービン・バーンズが加入。昨季10勝を挙げたライン・ネルソンがローテーションから漏れるほどの強力先発陣となった。確固たるクローザーが不在のブルペンが機能すれば、強力なライバルとしてドジャースの前に立ちはだかっても不思議ではない。

　昨季ドジャースを追い詰めたパドレスは財政難の影響もあり、複数の主力が流出して戦力ダウン。今季は地区3番手という位置づけだ。とはいえ、フェルナンド・タティスやマニー・マチャドを筆頭に、投打とも多くの好選手を擁しており、ポストシーズン進出は十分に狙える戦力。ダルビッシュ有と松井裕樹の両日本人投手もチームに不可欠な戦力である。

　ジャイアンツは昨年9月末に就任したバスター・ポージー編成本部長のもとで新たなチーム作りに着手。球団史上最高額の大型契約でウィリー・アダメズを獲得し、現役最多の通算262勝を誇るジャスティン・バーランダーも加わったが、予想以上の大活躍を見せる選手が複数現れるような状況にならない限り、ポストシーズン進出は難しそう。

　ロッキーズは明らかに戦力が不足しているため、今季も地区最下位が定位置となるだろう。

3月11日（日本時間）、オープン戦のガーディアンズ戦に登板した今永昇太。2被弾4失点と開幕に向けて課題を残した【写真は共同】

　中地区は東京シリーズでドジャースと対戦するカブスが本命だ。2年連続で惜しくもポストシーズン進出を逃し、今オフは「真の強打者」としてアストロズからトレードでカイル・タッカーを獲得。メジャー4年目を迎える鈴木誠也はもちろん、ピート・クルーアームストロングやマット・ショウといった若手の成長も期待でき、打線は確実に戦力アップした。投手陣にはマット・ボイド、コリン・レイ、ライアン・ブレージャー、ライアン・プレスリーらベテラン勢が加入。全体的に層は厚くなったが、チームが5年ぶりのポストシーズン進出を成し遂げるためには、メジャー2年目を迎える今永昇太に今季もエースとしての働きが求められる。

　カブスを追うのは地区2連覇中のブリュワーズと名将テリー・フランコーナを新監督に迎えたレッズだろう。ブリュワーズは高額年俸の主力を引き留めず、若手の成長によってカバーすることで安定した強さを維持しているチーム。今オフもウィリー・アダメズや守護神デビン・ウィリアムズが抜けたが、史上最年少で20本塁打＆20盗塁を達成した新鋭ジャクソン・チョウリオがチームを牽引し、昨季のトビアス・マイヤーズのように、今季も意外な選手が台頭して主力流出の穴を埋めるはずだ。

　レッズはハンター・グリーン、エリー・デラクルスという投打の軸が確立。伸び盛りの若手が多く、その勢いとフランコーナ監督の経験値が上手く融合すれば、大躍進を遂げる可能性を秘めている。

　ワールドシリーズ制覇11度を誇る名門カージナルスは今オフのFA市場でメジャー契約が1件もなく、ラーズ・ヌートバーをはじめとした若手・中堅の頑張りに期待するシーズンとなる。投打の歯車が上手く噛み合えば、3年ぶりのポストシーズン進出も決して不可能ではないだろう。

　パイレーツはポール・スキーンズ、ミッチ・ケラー、ジャレド・ジョーンズの先発3本柱が魅力的で、打線にもオニール・クルーズがいるものの、投打とも戦力不足は否めない。強力な先発3本柱を擁しているにもかかわらず、得点力アップに向けてフロントオフィスのやる気があまり感じられないのは残念だ。

3月4日（日本時間）、マーリンズとのオープン戦で好投した千賀滉大。エースとしての働きが求められる【写真は共同】

　東地区は明確な「3強2弱」の構成となる。昨季13年ぶりの地区優勝を成し遂げたフィリーズはザック・ウィーラーとアーロン・ノラの2本柱を中心に、メジャー屈指の強力ローテーションを誇る。ブルペンも駒が揃っており、マイナー契約の青柳晃洋がこの強力投手陣に割って入るのは難しいだろう。打線はカイル・シュワバーを1番から中軸に回し、トレー・ターナーを1番に繰り上げるなど、多少のマイナーチェンジがあるものの、ブライス・ハーパーをはじめとしたスター軍団は今季も健在。複数の主力が契約最終年を迎える今季、是が非でも頂点を狙ってくるはずだ。

　ブレーブスは昨季、スペンサー・ストライダーやロナルド・アクーニャの早期離脱など、誤算が相次いだ。主力打者も軒並み不調だったが、それでもワイルドカードを死守したように、やはり地力のあるチーム。今季は先発陣の駒不足が懸念されるものの、それでも上位争いに加わるだけの戦力はある。

　メッツは今オフの目玉だったフアン・ソトの獲得に成功し、紆余曲折の末にピート・アロンソとも再契約。それ以外は選手層に厚みを加えることを重視した補強を行った。ショーン・マナイア、フランキー・モンタス、フランシスコ・アルバレスなど、早くも故障者が続出しており、エースとしての働きが求められる千賀滉大を筆頭に、ほかの選手たちの頑張りがシーズン序盤の戦いを左右することになりそうだ。なお、この地区の「3強」はポストシーズンの戦いにおいて、ドジャースの強敵となることも予想される。

　小笠原慎之介が加入したナショナルズは楽しみな若手もいるが、まずは勝率5割が目標。

　マーリンズは元サイ・ヤング賞投手のサンディ・アルカンタラがトミー・ジョン手術から戻ってくるが、投打とも明らかに戦力不足で、今季も厳しい戦いを強いられるだろう。

（企画構成：スリーライト）