なぜ伊藤洋輝は戦列復帰後すぐに重要戦力となれたのか? バイエルンで安定的に出番を得るために必要なのは――
納得のいく強豪バイエルンへの移籍
昨シーズン、セバスティアン・へーネス監督のもとポゼッションサッカーを志向したシュツットガルトで、リーグ全体を見渡してもトップクラスのパフォーマンスを見せていた伊藤洋輝が、昨夏の移籍市場でバイエルン・ミュンヘン行きを決断した。
このニュースは日本では驚きをもって伝えられたようだが、普段からブンデスリーガを見ている人間にとっては納得のいく移籍であり、今シーズン、ドイツきっての強豪クラブでのさらなる飛躍が期待されていた。
しかし、シーズン開幕を前にして、伊藤はアクシデントに見舞われる。まず、プレシーズンマッチで中足骨を骨折して長期離脱を強いられた。その後、少しずつ回復傾向にあったが、昨年11月頭には再手術したことが判明。年明けにランニングメニューを再開したが、コンパニ監督は戦線復帰を3月以降と示唆し、ピッチに立つまでには多少時間がかかると予想された。
それでも、復帰は周囲の予想よりも早くに訪れる。全体練習に合流したと伝えられた2月4日(現地時間、以下同)以降、いつ取材に行こうかとタイミングを図っていたのだが、わずか1週間後に行われた12日のチャンピオンズリーグ(CL)のノックアウトフェーズ・プレーオフ第1レグ、敵地のセルティック戦でまさかのベンチ入り。78分にはいきなり出番を得て、バイエルンでの公式戦デビューを飾っていた。
デイビスの不在も関係していたとはいえ
もちろん、当時はアルフォンソ・デイビスが負傷中で、両サイドバックのプレーが安定しない試合が多かったことも関係していただろう。それでも、短い時間でコンパニ監督の信頼を勝ち取り、ピッチに立ったこと自体が称賛に値する。
そのCLセルティック戦の3日後に行われたブンデスリーガ第22節、2位レバークーゼンとの天王山では、左サイドバックとして初スタメンを飾る。さらに翌週23日の3位フランクフルトとの上位対決も再び先発に起用され、セットプレーの流れから移籍後初ゴールも奪取。晴れやかな完全復活を印象付けた。
決して簡単な道のりではなかっただろう。希望と野心を胸に名門クラブの扉を叩いたが、リーグ戦が始まる前に長期離脱。新天地でのスタートで躓いたことで、間違いなく大きな不安を抱えていたはずだ。
ただ、一歩一歩前に進んできた。地道なリハビリに励み、苦しい時期を乗り越えたからこそ、重要な試合でスタメンを任される現在の立場がある。