千葉ジェッツのファン層がこの1年で急増!? その秘密は「2分で撮影する」YouTubeショート動画

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千葉ジェッツのYouTubeショート動画は新規ファン獲得に大きな貢献を果たした 【(c) CHIBAJETS FUNABASHI】

 この1年で、プロバスケットボールBリーグ・千葉ジェッツのYouTubeショート動画を見たという人も増えたのではないだろうか。2023-24シーズンから本格的に開始したショート動画には千葉ジェッツの選手がふんだんに登場するなど人気を博し、1年でYouTube登録者数が4.3万人も増加、2023年の年間再生数は5000万回を超えてプロ野球・Jリーグなども含めた全スポーツチームの中で5位となるなど、新規ファン層の拡大に大きな役割を果たした。

 この企画と取り組みが高く評価され、さまざまなスポーツ団体の広報・PR・情報発信に焦点を当て表彰する『スポーツPRアワード2024』のソーシャルメディア賞を受賞。施策の中心を担った千葉ジェッツYouTubeチームの小原淳平さん、MIXI動画クリエイティブ室の沖浦雅俊さんに話を聞いた。

選手の負担軽減、ショート動画に活路を見る

――はじめに今回の千葉ジェッツさんの施策の概要から教えてください。

小原 選手の練習時間を取らず、また撮影によって選手のコンディションにも影響しない、“2分で撮れるショート動画”が施策の概要です。千葉ジェッツはプロスポーツチームですので、試合で結果を残すことを第一に考えています。そのため、選手の考えや時間の使い方を尊重しながら、撮影することを意識していました。

 練習終わりの選手をまるで街頭インタビューのような要領で声がけ。帰る前の2分ほどの時間をもらって撮影し年間約300本の動画を公開できたことが施策のポイントです。

 従来の長尺動画撮影ですと、選手は1時間を割いてもらい撮影していたのですが、時間的にもコンディション的にも負荷がかかってしまいます。試合で結果を残すことが本業のチーム側からはネガティブな意見が出ることもありました。そこに追い打ちをかけるように2023-24シーズン、千葉ジェッツはEASL(東アジアスーパーリーグ)に出場。例年に比べ試合数やそれに伴う移動日が増加し、選手の時間もほとんど取れない。われわれとしても、何とかこの状況を打破しないと公開できる動画が一切ない、という状況に追い込まれていました。

 そこで着目したのがショート動画です。当時、どのチームも手を出しておらず、挑戦してみるにはもってこいのタイミングでした。

沖浦 そして、こういったコア施策を考えチャンネルで公開している動画の制作はもちろん、どう戦略的にチャンネルを伸ばしていくのか、全体の運用を担っているのがグループ会社であるMIXIのデザイン本部に所属する我々の運用チームです。強みとしては、千葉ジェッツの広報チームと強固な連携を取り合い、実務の部分で分業化している点で、他のチームさんではあまり見られないやり方なのかなと思います。

――ファン拡大のためにはやはり動画YouTubeは欠かせないものと考えていたのでしょうか?

小原 そうですね。まだまだNPBやJリーグなどのメジャースポーツに比べて、認知度も話題性も低いバスケットボールです。そのような状況を変えたいという想いのもと、1人でも多くの皆さんに「千葉ジェッツの魅力」を伝えていくためには欠かせないツールだと思います。

沖浦 MIXIチームと共同で運用を始めた2021-22シーズン当初は、長尺の横動画を中心に公開していましたが、昨季は「撮影時間が取れないチーム状況」と「全世界的にトレンドとなりはじめていたショート動画」この2つのタイミングが合致したことで、思い切ってYouTubeショート動画に全ベットできましたね。ショート動画特有の「レコメンドされる機能」も相まって、より多くの人にショート動画がきっかけで千葉ジェッツを知ってもらえました。そして、そのような新規の視聴者さんがすでに公開されていた横動画をチャンネル内で自発的に発見してくれることによって、より千葉ジェッツへの愛が深まっていく…というような視聴の流れを作り出せるようになってきました。

ショート動画で選手との関係も変化

練習終わりの選手たちをキャッチしてわずか2分で撮影、選手たちからも企画のアイデアが寄せられているという 【(c) CHIBAJETS FUNABASHI】

――当初は横動画を専門的に制作していたところから、いわゆるショート動画にもチャレンジするという点で、動画チームの皆さんにとっては全く新しいチャレンジだったのでしょうか? それとも同じ動画だからスムーズに進めることができたのでしょうか?

沖浦 横動画とショート動画の性質はあまりにも違い過ぎましたね(苦笑)。実は運用チームのメンバーは僕を含め、ほとんどがテレビ業界・CM業界出身者で構成されています。なので、縦型であるショート動画の制作実績は一切無し。そこにショート動画の波がやってきたわけですから、最初は見様見真似でした。ただ、「このままではいかん!」ということで、ショート動画に特化したインフルエンサーの皆さんとコラボという形で一緒に撮影させていただき、撮り方や意識すべき点を教えてもらいました。例えば、「チャンネル登録お願いします!」と動画のラストで選手に言ってもらうのは実際にテクニックの一つとして教えてもらったことで、これをやった動画が直接、登録者数増加に大きく寄与したという成功体験もありました。

 さらには、撮影現場だけでなく実際にMIXI本社に来訪してもらい、ショート動画の社内講習会などを開催し、少しでもショート動画の制作へのタッチポイントを増やすなど、わからないなりに工夫をしていました。

――沖浦さんたち動画チームにとっても色々と新しい経験、チャレンジだったのですね。では、ショート動画を始めてからの成果などを教えていただけますか?

小原 一番分かりやすいところで言いますと、やはり動画の再生回数と登録者数が爆発的に伸ばせたところがショート動画を活用した結果かなと思っています。

沖浦 そうですね。そもそもの動画の本数も今まで月に1〜2回の撮影で、1〜2本のバラエティ系動画でしたが、今は月に平均20本程度のショート動画を出せるようになり、単純にYouTubeを通して視聴者にリーチできる数がおおよそ10倍以上に増えました。

 そうして今まで千葉ジェッツのことを知らなかった方たちにも千葉ジェッツを知っていただく機会が増え、YouTube上でアンケート調査を行った結果、約53%の方が「YouTubeきっかけに現地観戦した」という嬉しい数値が出てきたのも、ショート動画を始めてからの成果かなと思っています。

小原 別のベクトルになりますが、選手とのコミュニケーションもより取りやすくなった雰囲気も感じています。これまでの横動画では選手にどうしても時間、体力的にも負担をかけてしまっていたのですが、短時間で済むショート動画の撮影方式に変えてから選手と動画チームがより良い関係を築けるようになり、お互いにやりやすい環境作りもできたのではないかなと感じています。

――そうした環境の中で、選手から「こういう動画撮りましょう」と提案されることもあるのでしょうか?

沖浦 そうですね。ショート動画は選手からも好評をいただいておりまして、直近で言いますと、選手からやりたいと要望をいただいたのが「学力テスト」です。

 こちらはすでに公開されているので、ぜひ観ていただきたいのですが選手の「かわいい素の姿」が随所に見られるコンテンツとなっています。

 僕たちYouTubeチームが練習場にいることによって、今では選手たちから「今日は何の撮影ですか?」とか「今度こういうのやりたいッス」という、コミュニケーションを取れるようになり、お互いの「やりたい」を一つずつ実現させていくことで、信頼関係も築けているのではないかと感じています。

――選手も動画スタッフもチーム一丸で盛り上げていこうという雰囲気が出ているんですね。

沖浦 そうかもしれないですね。運用に携わり始めて初年度の頃は、自分たちの撮りたい気持ちを優先させた結果、選手の気持ちが乗らずになかなか重苦しい空気になったときもありましたから。大反省しました(苦笑)。

小原 横動画を中心に撮影していときは、限られた時間の中で撮れ高が欲しいYouTubeチームと、試合に支障を出さないために早く撮影が終わって欲しい選手・広報チームでピリピリしたときもありました。でも、現在の撮影スタイルになってからは本当に誰もフラストレーションなく、フランクな感じで撮影していますので、選手のより自然な姿もお届けできているなと感じています。

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