学生の夢を支援しチームと地域も活性化 徳島インディゴソックスのリモートインターン制度
学生ならではの視点、アイデアから生まれた企画の数々は好評を博し、公式チャンネルのYouTube登録者が1万人以上増加、グッズ・ファンクラブの売り上げも年々アップ。また、それだけではなく、卒業生が即戦力としてスポーツ業界に就職するなど、リモートインターン制度は学生たちの夢を支援する形ともなっている。
この取り組みが高く評価され、さまざまなスポーツ団体の広報・PR・情報発信に焦点を当て表彰する『スポーツPRアワード2024』のエコシステム賞を受賞。徳島インディゴソックスの高島駿輝さんと、リモートインターン生の大仲菜奈さんに話を聞いた。
リモートで全国から広く受け入れ
高島 この制度自体は2020年シーズンからスタートしています。発端としては2019年12月に前球団代表が就任して、その人を中心に球団のSNSなどリソースが足りていない部分をもう少し補い、球団の存在価値を高めていこうと話し合った結果、リモートインターンという形で学生に参入してもらいながら球団を盛り上げていこうということで、この制度が始まりました。
普段、学生たちにはSNSの運用や動画編集・制作をはじめ、選手にフォーカスした企画、グッズやファンクラブの企画・構成なども興味のある学生たちには入ってもらって一緒に練ってもらっています。それらを年間通して活動する長期のインターン制度となっております。
――このリモートインターン制度は大学生が対象なのでしょうか?
高島 最初はそのつもりで募集をかけていたのですが、組織が少しずつ大きくなるにつれて高校生が入ってきたり、2020年からスタートしていますので初期にインターンとして活動していた学生が大学卒業後もOB・OGとして携わってくれているパターンもありますね。今年4月の更新で言いますと、OB・OG組が7人、学生が14人。トータルで21人となります。これまでは15人程度の組織だったのですが、昨年一挙に人数が増えました。事業拡大というわけではないのですが、人数が多ければそれだけできることも大きくなっていくと思いますので。
――地元の学生限定ではなく、リモートインターンという形で全国から学生を募集しようと思ったのはなぜでしょうか?
高島 徳島県の内情としては、高校生までは県内にいるのですが、高校卒業して大学進学や就職を機に都市部に出てしまう子たちも多いのが現状です。人口流出がなかなか止まらない県でもありますし、インターネットやSNSが発達している時代でもありますので、県内で絞ってしまうよりは広く受け入れられればという思いがありました。
また、全国を見渡した時に、そもそもインターン制度自体をとっているスポーツチームが少ないという印象でした。短期インターンはあるかもしれないのですが、長期の受け入れはなかなかない。将来スポーツに携わりたいと考えている学生が多い中で需要と供給が合っていないのが現状のスポーツ業界の課題だと個人的に感じていましたので、リモートであれば徳島に限らずとも全国から学生が集まってくれるのではと思い、この形となりました。現在、学生に限れば徳島にゆかりのある子は3人くらいです。いろいろなところから参加してくれていますね。
――例えばSNS運用だと、現在はプロ集団を抱える専門の会社などもあると思いますが、そこをあえて学生たちに任せようと思ったのはなぜでしょうか?
高島 球団の新規ファン獲得のターゲティングとして、年代的には学生と同じ20代を増やしていきたいという思いがありました。そうすると、同じ目線を持った学生たちにSNSの運用を任せてみるのも面白いのではないかと思ったんです。
――なるほど。では、学生たち主導で実現した企画のいくつかを教えてください。
高島 SNSや動画に関してはやっぱりドラフト関連になりますね。ドラフト指名される選手を輩出するということが球団の一つの目標にしている部分で、同時にドラフト前後のPV数なども大事にしている部分です。その中でドラフトに向けた選手のドキュメンタリー動画も学生たちが企画、構成していまして、それらが多くの視聴者に見ていただけたことが大きな成果の一つになっています。スポーツナビさんに入稿している動画に関しても昨年1年間で再生回数が約1億6千万でしたから、学生たちの力の大きさを感じています。
ファンクラブやグッズに関しても年々、売り上げが伸びていて、デザインやどのようなものを販売していこうかということも含めて企画してもらっているんです。どうしても僕たちのように現場にずっといる人たちですと考え方が偏ってしまったり堅くなりがちなので、学生たちの柔らかい考え方から出たアイデアはすごく重宝しています。
SNS投稿、動画編集、自ら企画立案も
大仲 私は小さいころからいろんなスポーツをしてきたのですが、高校生の時に野球部のマネージャーを経験してからスポーツする人を支えること、スポーツをビジネスとして捉えることって面白いなと感じたんです。そこからプロスポーツチームのフロントスタッフになりたいという夢ができました。ただ、大学2年生のときにスポーツマーケティングやプロスポーツを専攻するゼミに入ったのですが、自分自身、実践経験が全く足りていないことに気が付いて、そうした経験ができるところはないかなと調べた時に徳島インディゴソックスのリモートインターン制度を見つけました。私は部活もやっていて現地にずっと行くことは不可能だと思っていたのでリモートでできるのはピッタリでしたし、社会人さながらの業務内容やスポーツビジネスの知識、即戦力で活躍するための力を身につけたいと思っていたので、「これだ!」と思ってすぐに応募しました。
――リモートインターンではどのような形で活動しているのでしょうか?
大仲 私の場合、部活が週3~4日あったり、ゼミの研究発表の準備などもあるので、タスクを明確に整理したうえで空き時間や隙間時間を上手く活用するにようにしています。例えば電車での通学時間にSNSの投稿文作成などスマホでできるタスクはそこで終わらせられるようにして、動画編集や記事執筆は授業の間の空き時間に集中してやるなどしています。
また、インターンのメンバーが全員集まるのは毎週月曜の夜8時から定例ミーティングという形で実施しています。そこでみんなの進捗状況を確認したり新しいアイデアの意見交換をしながら企画を進めていますね。
基本的にはどの業務も全員で担当するという形なのですが、ある企画に関して幹部から募集がかかったり、自らアイデアを持っていって企画から始めたりする場合もあります。球団さんから任せられる仕事ももちろんありますが、自分から企画を提案して実行することもさせてもらっているので、すごく幅広く活動させていただいています。
――大仲さんが企画して実現したものはありますか?
大仲 ちょうど今進めている企画があるのですが、スポーツツーリズムに関するnoteの記事を企画して、構成を練っている段階です。私自身、地域密着に関してすごく興味があって、徳島にも実際に行く機会が何回かあったのですが、その中で感じた徳島の魅力をスポーツ観戦のついででもいいからもっとたくさんの人に知ってほしいなと思ったんです。また、徳島に行きたいと思った人がついでに野球観戦もしてほしいなという思いもあって企画を提案してみたところ、快諾していただけました。
今度また徳島に行ったときにめちゃくちゃ調べようと思っているのですが(笑)、企画を通して、ちょっとでも徳島を観光する人や県外から試合観戦する人が増えたり、逆に徳島に住んでいる人がここに行ってみようと思ってもらえたらいいなと思いながら頑張っています。
大仲 2つあって、1つ目はプロモーションビデオを作成したことが印象に残っています。インターンに入ってすぐのころに徳島対阪神の2軍の試合があって、その試合に向けたプロモーションビデオ作成の担当をさせていただきました。それまで私は動画編集をしたことがなかったので不安もあったのですが、これはやってみたいなと思ってチャレンジしたところ、ファンや選手から「この動画めっちゃいい!」という感じの反応をいただけたのがすごく嬉しかったですね。またそれが自信にもつながって、今年2025シーズンの球団PVの作成も担当させていただきました。それはまだ公開されていないのですが、どういう反応をもらえるかなと楽しみにしているところです。
2つ目は現地での活動です。ずっとリモートインターンだったので現地に行くことはないのかなと思っていたのですが、個人的には将来は現場で働きたいという思いがあったので、現地に行ってみたいですと高島さんに相談したところ快諾してくださって、実際に現場広報や選手インタビューなどをさせていただきました。そうやって自分から行動したら何でも受け入れてもらえる環境もすごく印象に残っています。