U18年代が憧れる大会とスター輩出へ大きな一歩 日本バスケットボール協会が仕掛ける高校バスケ年間PR強化大作戦
高校生が憧れる大会、そして10代スター輩出へ――日本バスケットボール協会による高校バスケ年間PR強化の裏側を聞いた 【(c)SoftBank ウインターカップ2023】
この企画と取り組みが高く評価され、さまざまなスポーツ団体の広報・PR・情報発信に焦点を当て表彰する『スポーツPRアワード2023』を受賞。JBA競技・運営グループ U18推進セクションシニアマネージャーの新出浩行さん、同セクション兼 広報・PRグループ 広報・PRセクションアシスタントマネージャーの石田拓也さんに、高校バスケ年間PR強化の概要や目的、高校バスケ界の未来などについて話を聞いた。
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競技とマーケティングの観点から両立、U18推進セクション
新出 我々の取り組みの中でユニークな部分は組織内の機能としてU18推進セクションという部門が新しく立ち上がったことです。競技が真ん中にありながらも、そこに選手や出場チーム、大会の価値最大化を図るマーケティング観点と両立させて、理念である「バスケで日本を元気に」に向けて取り組んでいるところがポイントと思っています。そして、それを1つ1つの大会ごとの施策に集結させるのではなく、年間を通じて高校バスケ、U18年代のバスケットボールをどうしたら世の中に話題を提供できるかということも考えながら、日々活動をしています。
石田 バスケは高校スポーツの中でも、野球、サッカー、バレーボール、ラグビーと比べて、一般的な大会認知度が低いと認識しています。また、バスケの中でもまずは日本代表があって、B.LEAGUEB、Wリーグなどのトップカテゴリーがある中で、高校バスケの認知度向上をどのように図っていくかを考えました。
その取り組みの一つが、年間を通じて情報発信していくこと。複数のメディアで扱ってもらうことで話題量を増やしていくことを年度初めの目標として立てて、パートナーの皆様と一緒になって露出を増やしていく取り組みをスタートしました。
――この施策の中での注力ポイントは?
石田 各種メディアでの話題量最大化に取り組んでいますが、特にテレビで露出されるための仕組み作りに注力しました。これはパートナーの皆様の理解があって成し遂げられた部分が非常に大きいのですが、試合映像を現地取材に来られないテレビ局の皆様に送付するスキームを構築することにしました。ニュース露出を逆算して、活用されやすい素材を需要あるタイミングに送付できる仕組みを作ったことと、それをテレビ局の皆様にお届けすることで、地元のチームを応援してもらう露出を作ることができました。
また、ニュースになるイベントの積極広報も推進しました。例えば、大会前の組み合わせ抽選会の映像については各地で活用されやすいニュース用素材を作って、テレビ局が素材を入手しやすい状況を作りました。露出していただきやすい環境づくりを行ったことが、両大会での共通することになりますね。
加えて、8月から12月のシーズンを通じて長い期間のタッチポイントとなるU18日清食品リーグの情報を積極的に発信していくことで、各メディアにはウインターカップも含めて「高校バスケ3冠」と取り上げてもらえました。U18日清食品リーグは創設間もない大会でしたが、早々に全国大会としての権威付けをすることができたということも我々のブランディング観点では非常に良かったと思っています。そういうことも相まって、今年度のウインターカップの有料入場者数は過去最多の6万1554人を達成することもできました。
これは、我々が露出を広げたからというだけのことでは決してなくて、夏のFIBAワールドカップ2023での男子日本代表の躍進などバスケに関わる色々な話題が連鎖し、オールバスケの力を結集したことで過去最多の有料入場者数という形になったと思いますし、年間を通じて高校バスケの情報発信を続けたことの一つの成果と思っています。
高校生にとって憧れの大会が身近にあることの重要性
JBAと大会パートナーが一体となって取り組み、ローカル局を中心としたテレビでの露出が大幅に増えた 【(c)SoftBank ウインターカップ2023】
新出 B.LEAGUEの開幕や日本代表の注目度が高まってきてからも、選手の認知度をより一層高めていかなければならないことを課題に感じていました。
例えば野球やサッカーでスターと呼ばれる選手たちはどうやってスターになったのだろうと考えると、学生時代からずっと注目されていたんだと思います。そこで東京2020オリンピック以降、JBAでは高校バスケプロジェクトを立ち上げて、U18年代の競技環境を戦略的に発展させていくことで、選手たちにとってよりよい環境をつくり、「バスケで日本を元気に」することを様々なアプローチで取り組んでいける仕組みづくりの一環が高校バスケPR強化の経緯ということになります。
――施策の話に戻りますが、先ほどウインターカップの有料入場者数が過去最多を更新したというお話がありましたが、それ以外に今回のPR強化施策をやってきた中ですごく手応えを感じたこと、あるいは明確な成果として得られたことなどがありましたら教えてください。
石田 明確な成果としては、やはりローカル局の皆様を中心にテレビでの露出量を伸ばすことができたということだと思っています。これは、地元で応援して頂くために地域での露出を狙い、それをパートナー様と一緒に取り組ませてもらうことで露出を創出することができました。我々だけの取り組みだとここまで絶対に露出できないので、それぞれのパートナー様と一緒に「こういった取り組みをやりたいので、ぜひローカル局の皆様さんによるお取り上げをお願いします」ということを取り組んできました。
――今回、施策を進めていく中で、高校バスケの熱や盛り上がりなどを実際に感じられた体験などがありましたら教えてください。
石田 僕はちょっとネガティブなので(笑)、まだまだだと思っています。高校生の大会は全ての入り口だと思っています。競技者の入り口でもあり、ファンの入り口でもある。その入り口をいかに大きく広げていくか、ということが私たちの使命だと捉えているので、現状に満足せず色々な競技団体の皆様をお手本にさせていただきながら、1歩ずつ着実に成長していかなきゃいけないと思っているところです。
新出 僕はじゃあ、ポジティブにいきましょうか(笑)。石田同様、現状に満足しているかと言いますと、正直、今の僕たちがやっていることが正解なのかどうかは、あと10年ぐらい経たないと分からないことだと思っています。ですが、高校バスケにおいて憧れを持たれる大会が、インターハイも含めて、これだけ出来上がってきました。それがまたメディアやSNSを通じて身近な環境になってきているということは、すごい伸びしろに繋がるのではないかと思っています。
特にリーグ戦文化というのは、実力拮抗のリーグで切磋琢磨して強化に繋げるという目的があるものの、私自身もそうだったように「目指せ県大会」レベルのチームはトーナメントで戦う公式戦の数はすごく限られてしまう。1回戦で負けてしまったら、その1回で終わってしまう。2回戦まで行っても2試合で終わってしまう。トーナメントをやっている以上、試合をやったら半分のチームがそこで終わってしまうのは仕方ないのですが、リーグ戦という文化が出来上がることで公式戦の機会が充実する環境というのは、競技者としても見る方としてもこれからもバスケットボールをずっと好きでいてくれるというきっかけに絶対繋がると思っているんです。そのような競技環境づくりをブロック協会や都道府県協会、パートナーとともに発展させていこうとしていることがとても有り難くポジティブな面だと考えています。今の高校生を羨ましく思います。