ハミルトンがついに王者に返り咲く? F1・2025シーズン開幕間近!

柴田久仁夫

攻めの姿勢を見せた新車SF-25

ハミルトンはヘルメットデザインも一新し、新車をドライブする 【©ScuderiaFerrari】

 もちろん新車SF-25はようやく出来上がったばかりで、その潜在能力はまだ未知数だ。ハミルトン自身、「努力し続ける必要性はもちろんわかっているし、あらゆる分野で向上しなければならない」という認識を示している。

 しかし同時に、「このチームには勝つための要素がすべて揃っているのは、絶対的に明らかなことだ。僕はこの場所が本当に好きで、1日中離れたくない」と、マクラーレン、メルセデス時代には決して見せなかった、フェラーリへの熱い思いも吐露している。

 SF-25の基本デザインは、昨年型SF-24と大きく変わっていないように見える。しかしテクニカル・ディレクターのロイック・セラは、「車体のほとんどが新しくなっている」という。外からわかる最大の変化は、フロントサスペンションがプッシュロッドからプルロッドへの変更だ。マクラーレン、レッドブルも採用するこの形式は、低重心化と空力性能の向上に有利とされる。

 去年のフェラーリは高速区間で、この2チームに遅れを取っていた。さらにシーズン中盤以降、車体性能を向上できなかったことも大きな問題点だった。そのため「空力性能の改善と、シーズン中にアップデートできる余地のあるマシンを目指した」と、セラはいう。

 ただしフロントサスの形式変更は、マシン全体の空力特性や挙動を激変させる可能性がある。来季2026年に予定される車体、パワーユニット両方の大幅な変更を見据え、多くのチームは去年型のキープコンセプトで行くはずだ。その中でフェラーリは、攻めの姿勢を見せた。

最大の脅威はルクレールか

新車SF-25のシェイクダウンを担当したのはルクレール(右)。最大のライバルでもある 【©ScuderiaFerrari】

 もちろんその賭けが、裏目に出る恐れはある。逆に開発陣が想定した通りのパフォーマンスを発揮すれば、八度目のタイト獲得を狙うルハミルトンにとってはこの上ない追い風になるだろう。ただしハミルトンには、脅威となるべき存在がある。チームメイトのシャルル・ルクレールだ。

 確かに経験と実績だけで言えば、ハミルトンの足元にも及ばない。これまで7年のF1キャリアで、優勝回数は8回。まだチャンピオンですらない。一方でフェラーリ移籍初年度の2019年には、その年最多となる6回のポールポジションを獲得。2022年には年間9回までPP記録を伸ばし、予選一発の速さに限ればハミルトンが去年大苦戦したラッセルを凌ぐ。

 さらに去年は混戦状態の中、3勝を含む13回の表彰台を記録。レース中の自滅や精神的な不安定さも、すっかり影を潜めた。もしSF-25が最強のマシンになった場合、その恩恵を受けるのはハミルトンだけではないということだ。

 フェラーリ代表のフレデリック・バスールは、ジュニアカテゴリー時代のハミルトン、ルクレールの育ての親でもある。二人が激しい優勝争いを繰り広げた時、バスール代表の采配が両者の明暗を分けることもあり得るだろう。

 いずれにしてもルクレールが、ハミルトンの最大のライバルとしてその前に立ち塞がる可能性は十分にありそうだ。

(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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