阪神・大竹耕太郎が語る「スローボール」の極意、恩師・岡田監督退任で変化は? ホークス時代の後輩に五十嵐亮太が直撃!
相手を「おちょくる」余裕を持ちたい
大竹 いろんな想定はしておきますね。事前に攻め方のバリエーションをイメージしておいたうえで、ゲームでは柔軟性を持つことを意識しています。自分の中での組み立てが思うようにいかなくて動揺してしまわないように、そうなったらこうしてみようかな、と。その場のバッターや球場の雰囲気などの要因で配球も変わってくるので、あまり決めつけないで頭を柔らかくするように心掛けています。
五十嵐 それはいつ頃から考え方を変えたんですか?
大竹 坂本(誠志郎)さんと事前の打ち合わせはもちろんしますが、試合の中でバッターを見ながらやっていこうといつも言っていただいています。阪神に来てからはバッターのちょっとした仕草や踏み込んでくる方向、そういったものもしっかりと見ながら投げるようにしています。
五十嵐 大竹投手の投球でいつも驚かされるのがスローボールなんですよ。僕は投げたときの怖さやリスクをいろいろと考えますが、大竹投手はピンチのような「ここで行くのか?」という場面でスローボールを使ったりしますね。そこは自信があるのか、どんな気持ちを込めてスローボールを投げているのですか?
大竹 自分を俯瞰して見たときに、打たれるシーンは力で真っ向勝負をし過ぎることが多いんですよ。終盤の大事なシーンでこそ、相手を“おちょくる”遊び心が大事になってくると思っています。そういう投球ができているときは結果が良いです。そこを逆算してスローボールを意識して使うことによって、ストレートの力感も少し余裕が出てくるんです。
五十嵐 相手を抑えるためにも有効ですし、自分を上手くコントロールするうえでも大事な一球なんですね。
大竹 「コイツなめてんのかな」と思わせようというか、ちょっと相手をイライラさせたい。打てそうなのになんか打ち取られる、気付いたら試合に負けていた。そんなピッチングを目指すうえで、スローボールはとても大事になってくると思っています。
野球を忘れる時間をあえて作る
大竹 いや、そんなことはないですよ。でも20代半ばまではそんな感じでした。「24時間野球のことを考えていなければダメなんだ」という生き方をしていたような気がします。30歳を前にやっと、いい意味で「野球はあくまで仕事だ」という感覚を持てるようになりました。だからこそ野球に集中できている部分はすごくあります。野球を忘れる時間はむしろ意識して作っているくらいです。料理をしたり、ペットを飼い始めたのですが戯れている時間もいいですよね。
五十嵐 今年監督が変わりました。大竹投手と岡田彰布前監督は良いつながりだったと思うんですよ。岡田前監督が大竹投手を勝てる投手に成長させてくれた部分もあると思います。藤川球児監督に変わって心境の変化はありますか?
大竹 監督が変わっても自分のやるべきことは同じだと思っています。新体制になってスタートダッシュがすごく大事になってきます。春先からしっかりと勝って勢いをつけて、新体制になっても強さを見せたいという気持ちは自分の中にもあります。開幕してシーズン最初の登板に向けて、しっかりと100パーセントまで作っていくことを意識しています。藤川監督との会話の中でも、戦力として期待していただいているとすごく感じるので、監督の期待に応えたい気持ちは十分に持っています。
五十嵐 では最後に、才木投手にも聞いたのですが、大竹投手から見て、今年イチオシの“若虎”、面白い存在の若手選手は誰ですか?
大竹 門別(啓人)投手です。
五十嵐 才木投手と一緒ですね! 理由は何ですか?
大竹 僕はプロ8年目でいろんな選手を見てきましたけど、あの落ち着きぶりは最近二十歳を迎えたとは思えないです。
五十嵐 理由まで一緒ですね(笑)。
大竹 同級生くらいの人と話しているような感覚がすごくあります。それがマウンドでもそのまんまという選手はあまり見たことがないですね。落ち着きの中に負けん気、情熱みたいなものをすごく感じます。「一軍の選手だな」というような性格ですね。もちろん技術的にも良い球を投げますけど、性格的な部分ですごい選手だなと感じることがあります。
五十嵐 門別投手すごいですね! ありがとうございました!