注目は「投球メカニックの進化」 大谷、2度目のトミー・ジョン手術からの完全復活なるか

丹羽政善

見どころは実戦形式の登板

ブルペンで投球練習を行うドジャースの山本由伸 【Photo by Chris Coduto/Getty Images】

 では、このキャンプではどんなことに注目すべきか。おいおいテーマを深掘りしていくが、まずは大谷のメカニックがどう進化しているのか、ということになる。

 バイオメカニクスの観点から見て、故障のリスクが低い投げ方と、その投手が投げやすい投げ方は、必ずしも一致しない。例えば、左足のかかとが地面についたとき(ヒールコンタクト)、ボールを持った右手は右肘よりも上にあるのか、下にあるのか。上にある方(外旋位コックアップ)が、故障リスクが低いとされ、下にある場合(内旋位コックアップ)は体幹の加速に対して、腕が遅れて加速されることになるので、肩や肘への負担が大きくなる。

 2020年の復帰過程で大谷は、「そう(故障リスクが低い)言われていますね」と外旋位コックアップの利点を認めたが、こう続けた。

「いいタイミングで(腕を)上げられるんだったら良いと思いますが、それを今やって、できるかといったら、合った人にはできると思いますし、合わなかった人だったらすぐにはできないので。(どこかで)折り合いはつけないといけないですし、言われたら、やってみるのも一つの手ではないかなと思います」

 最終的には外旋位コックアップになったが、今回、実戦に向けて調整をする中で、どうなっているのか。現在は中間位のようだ。

 伴ってリリースポイントがどうなるかも気になるところ。2021年、22年に比べて、23年はリリースポイントが全体的に下がった。次回以降、改めてデータを紹介するが、それが故障につながったのかどうか。いや、肘は下がっておらず、下半身の動きが変わったことによるものなのか。

 ブルペンに入るようになれば、それも明らかになるはず。ただ、大きな手術明けは、どの投手も腕を通す位置が体に近くなるため、リリースポイントが高くなりやすい。その方が故障のリスクが低く、無意識にそうなるケースもある。となると、大谷のスイーパーはどうなるのか? 以前のように曲がるのか?

 復活そのものも、みんな、当たり前のようにそうなると考えているかもしれないが、実は2度のトミー・ジョン手術からの復帰確率は、決して高くない。そのデータも次回以降に改めて紹介するが、これまで65%前後しか復帰できていない。復帰できたとしても、その後、完全復活(10回以上登板が目安)できるのは、50%を切る。

 大谷の場合、人工靱帯とのハイブリットなので、必ずしもこれまでの例には当てはまらないが、打者に投げ始めてから、セットバックということもある。その見極めはもう少し先のことになるが、キャンプ終盤に実戦形式の登板を始めるなら、見どころの一つとなる。

大谷は開幕から二刀流登録

投球練習を行うドジャースの佐々木朗希 【Photo by Chris Coduto/Getty Images】

 なお、大谷はルール変更により、開幕から二刀流登録されることになった。

 昨年、投手として全休したことで、一旦は二刀流資格を喪失。開幕は投手登録で迎え、負傷者リストに入ったのち、指名打者としては出場可能な特例を利用するかと思われたが、MLB機構は公表することなくルールを書き換え、二刀流資格の対象を過去2シーズンまで広げた。これはMLB.jpの村田洋輔編集長が2月6日、MLBジャパンを通じて確認し、真っ先に報じたが、これで登録問題はクリアとなっている。

 さて、キャンプ初日も非公表のまま、“1日ずれる”という異例のスタートとなったが、11日は山本がブルペンに入り、大谷、佐々木もそれぞれ汗をかいた。確かに全体練習はなかったが、クラブハウスもメディアに解放され、通常のキャンプ初日の雰囲気だった。

 明日は、大谷、佐々木の会見が行われる予定。山本は14日に取材を受ける見込みだ。長い、長いシーズンがいよいよ幕を開ける。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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