SVリーグの選手が語るそれぞれの「春高」 彼女たちは何に気づき、どう活かすのか?

田中夕子

笠井季璃(写真右)はクインシーズ刈谷のルーキー 【写真提供:SV.LEAGUE】

 10月に開幕したSVリーグも、前半戦が終わった。

 1月25、26日にはオールスターゲームが行われるため、レギュラーラウンドは一時休戦となるが、前半戦を終え、それぞれの課題や収穫を得ながら前に進む選手の中で、日々壁にぶつかりながらも乗り越え、強くなろうとしている選手がいる。

 SVリーグ女子、クインシーズ刈谷のルーキー、笠井季璃だ。

 昨年の春高では旭川実業の主将、チームの大エースとして31年ぶりにベスト4、チームを3位に引き上げた。アンダーカテゴリー日本代表でもその実力は周知の通りではあったが、連戦が続く春高で「持って来い!」とどんな時もトスを呼び、ブロックが何枚つこうと打ち抜く。豪快なプレーと周囲を鼓舞するリーダーシップは多くの人の心を惹きつけた。筆者も、魅了された1人だ。

春高から1年を経た笠井は今

 あれから1年、クインシーズのルーキーとしてプレーする笠井だが、自身も「1年目は経験の年だと思っている」と話すように、試合出場のチャンスをつかみながらも「波がありすぎる」と反省の弁を述べるように、経験を重ねるたびに壁にもぶつかる。

 1月18、19日にSVリーグ男子、ウルフドッグス名古屋のホームアリーナ、エントリオで開催されたSAGA久光スプリングス戦はまさにそんな2戦となった。

 1日目の18日はスタメン出場を果たすも「全然だめだった」と振り返るように、武器である攻撃面でも相手ブロックに屈し、ミスも出るなど安定感を欠き、3セット目で交代を命じられた。翌日の19日は笠井に代わり、同じくルーキーの吉永有希がスタメン出場。相手ブロックに対しても冷静に、当てて出し、コースが塞がれればプッシュを織り交ぜた攻撃で得点を重ね、サーブでもブレイクを重ねる活躍を見せた。

 笠井に出番が訪れたのは第2セット。久光がリードした終盤に前衛へ上がった吉永に代わってコートへ。直後にサーブで崩され、相手のダイレクトスパイクで失点を喫したが「すぐ切り替えた」と言うように、次のプレーに意識を向ける。

 その“切り替え”こそが前日の反省から得た糧でもあったと振り返る。

「ダイレクトになってしまったけれど、次のオフェンスに集中しよう、と。昨日(18日)は崩れてから冷静でいられなくて、決定率もかなり落ちてしまった。今日(19日)はどんな時でも冷静に決めるための方法を常に考えて打とうと思っていました」

 有言実行、とばかりに次のラリーでは上がってきたトスを、強打で攻めるばかりでなくコート中央の空いたスペースに落とす技ありのスパイクでブレイクする。さらにもう1本、笠井らしい力強いスパイクで得点を重ねると、笑顔も見せた。試合は1対3で久光が勝利し、笠井の出場機会も限られたが、着実に前へと進んでいる姿を見せた。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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