SVリーグ開幕を選手はどう見たのか サントリー主将が味わった「今までにない感覚」

田中夕子

SVリーグ開幕戦で大阪ブルテオンと対戦したサントリーサンバーズ大阪(手前) 【写真は共同】

 2024年10月11日、大同生命 SV.LEAGUE(SVリーグ)が開幕した。

 大阪ブルテオンとサントリーサンバーズ大阪の試合が地上波で生放送され、注目度はこれまでの開幕と比にならない。サントリーの主将として臨んだ藤中謙也は、開幕前日の会見で「これまでと違う楽しみがある」と胸を躍らせていた。

「明らかな変化を感じているので、どうなるんだろう、というワクワク感ですよね。前回は、そこまで大きな変化を感じられなかったので」

これまでにない期待感

 藤中が言う“前回”は2018年を指す。VリーグからV.LEAGUEへと名称が変わり、1会場で行われる試合に4チームが集まり、1日2試合、土日で対戦方式が変わっていた従来のスタイルから、1会場1試合で土日は同じチームと対戦する。ホームゲームも各チームが特色を打ち出して、演出や集客に尽力して、稼げるリーグを目指すべく変化を遂げる。

 はずだった。

 そのオープニングマッチを飾ったのが、当時のサントリーサンバーズとJTサンダーズ(現・広島サンダーズ)。大田区総合体育館で開催されたナイトゲームは、プロジェクションマッピングによる演出など、新たな方向へと舵を切るスタートとなり、それ相応の注目は集めた。だが実際はどうか。藤中はその時もサントリーの主将を務めていたが、“変化”という面で言えば、今とは比較にならないと語る。

「僕もその年、プロになったんですけど当時はまだプロ選手も少なかった。チームも事業化という面ではそこまで積極的ではなかった。でも今はプロ選手や移籍も増えて、(選手の)意識も変わった。運営側も稼ぐことに対して力を入れているのが今まで以上に伝わってくるし、リーグ全体も大同生命という冠スポンサーがついて下さって、各チームもスポンサー獲得のために努力している。これまでにない期待を感じています」

外国籍選手増加の影響は

 VリーグからSVリーグへ名前を変えただけでなく、今季からは外国籍選手も1名から2名に増えた。サントリーにはポーランド代表のアウトサイドヒッター、アレクサンデル・シリフカが加入し、ブルテオンも同じくアウトサイドヒッターでキューバ代表のロペス・ミゲルが加わった。2チームに限らず、世界のトップ選手というくくりにはおさまらない、トップオブザトップの選手たちがずらりと顔を揃えたSVリーグのレベル自体は間違いなく上がる。

 だが一方で、外国籍選手の出場機会が増えれば日本人選手が出場機会を失うことは明白だ。これまではオポジットのみ外国籍選手を獲得していたチームも、得点力向上や組織として頂点を狙うためのピースを埋めるべくアウトサイドヒッターの加入も多い。サントリーに関して言えば、シリフカだけでなく昨シーズンまでイタリアでプレーした日本代表の高橋藍も加わった。

 守備力に長け、本数自体は多くなくとも巧みな攻撃で着実に点を獲る。大崩れすることもなく、常に計算できる働きをする藤中は相手にとって実に嫌な選手なのだが、その藤中でも出場機会が限られるほど、戦力が充実している。

 同様に外国籍選手や日本代表でも活躍する選手たちの移籍を見据え、今シーズンは海外でプレーすることを決めた選手や、チームを移籍した選手も少なくない。藤中にも当然、選択肢がなかったわけではない。だがその中で、“あえて”自分はサントリーを選んだ。藤中はそう言う。

「単純に海外へ行けばいいか、といえばそうではなくて、このチームだからこそ経験できるもの、得られるものがある。世界トップレベルの選手たちと一緒にプレーできるのも財産になると思ったし、個人的に見れば厳しいシーズンになるかもしれないですけど、だからこそ自分の成長にもつながる。僕は自分が決めて、覚悟を持って残ったつもりだし、そのうえでキャプテンを任されたと思っているので。どんな結果になったとしても、責任を持ってやりたいです」

 迎えた開幕戦、藤中の出番がやってきた。

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著者プロフィール

神奈川県生まれ。神奈川新聞運動部でのアルバイトを経て、『月刊トレーニングジャーナル』編集部勤務。2004年にフリーとなり、バレーボール、水泳、フェンシング、レスリングなど五輪競技を取材。著書に『高校バレーは頭脳が9割』(日本文化出版)。共著に『海と、がれきと、ボールと、絆』(講談社)、『青春サプリ』(ポプラ社)。『SAORI』(日本文化出版)、『夢を泳ぐ』(徳間書店)、『絆があれば何度でもやり直せる』(カンゼン)など女子アスリートの著書や、前橋育英高校硬式野球部の荒井直樹監督が記した『当たり前の積み重ねが本物になる』『凡事徹底 前橋育英高校野球部で教え続けていること』(カンゼン)などで構成を担当

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