今季から米PGAツアーに本格参戦 欧州ツアー優勝も経験した星野陸也の決意と原点
欧州初V直後に急病で約2カ月ツアーを離脱
この長い休みからの復帰第1戦で選んだのが全米オープン。星野はあえて高い壁を選んだ。「正直、全米オープンで上手くいくとは思っていませんでした。ただ、あえてコースが難しい試合に出ることで、試合感とかが早く戻るのでないか」という戦法だった。全米オープンでは予選落ちとなったが、翌週にオランダで実施された「KLMオープン」では10位に入る活躍。「ショットの感覚はまだ戻ってなかったが、ゴルフ感は全米オープンに出たことでかなり戻っていた」。一番厳しい環境に身を置くという戦略が功を奏した。
「結局、失敗しても成功しても、反省というか次につながると思っています。全くやっていないことに挑戦するのでは何も得ることはないと思いますが、今までの経験があっての大きなことへのチャレンジなので、もしダメだったとしてももう一つの次のパターンに行けるんです」。常に厳しい選択をすることで、得ることができることの大きさを強調する。
今オフは体力の回復を最優先にし、PGAツアー参戦への準備は万全
これまでのキャリアで積み上げてきた経験を活かし、アメリカでも順応力を発揮していくつもりだ。「ヨーロッパで得た経験は、アメリカでも絶対に生きると思います。コースの芝質や環境が大会ごとに大きく変わるので、どんな状況にも対応できる順応力を身につけることができました」と話す。
2024年11月中旬の欧州ツアーの最終戦から試合には出ずに調整をしてきた。「気胸を患った後はPGAツアーの出場資格を得るために体力が完全に回復していないのに無理をして試合に出ていました。体力も気力を使い果たしてしまい、実は終盤は飛距離も10ヤードくらい落ちていました。このオフは体力の回復を最優先に行い、今は昨年2月の優勝時の筋力量まで戻りました」
ゴルフは仕事でも“楽しむ”が大切――多彩なショットこそ自分の持ち味
実際、星野のショットメイキングは多彩だ。「一時期、同じ球筋を打つほうがスコアは安定すると思っていた時もありました。でも、それではゴルフが楽しくなくなってしまったんです」と語る。「自分は、風に合わせて低い球を打ったり、右に曲げたり左に曲げたり、いろんなショットを打つことが楽しい。それが僕の持ち味だと思います」
星野陸也の目標と確固たる姿勢
笑顔でインタビューに応じてくれた星野陸也選手 【北村収】
星野の魅力は、穏やかな表情の中に秘められた強い意志だ。大学を中退し、プロの試合に飛び込むという大胆な決断をし、さらに復帰戦にあえて最難関の全米オープンを選ぶなど、その姿勢は常に挑戦を恐れない。星野の行動には、強い信念と揺るがない覚悟がある。
さらに、星野が口にする言葉の端々には、感謝の気持ちがにじんでいる。「家族のサポートがあったからこそ、ここまで来られました。高校時代の恩師や、ツアーで出会った仲間たちからも多くを学びました」と、インタビューのところどころで周りへの感謝を語っていた。多くの人々からの支えを自らの力に変え、これまでのキャリアを築き上げてきたのだ。
「松山さんのように勝利を重ねて、いずれはメジャーでも勝ちたいです」と、星野は未来の目標を明かす。学生時代、日本ツアー、欧州ツアー、そして来年からのPGAツアーと、着実に階段を上がってきた星野陸也。これからも一段一段、確かな足取りで、世界の頂点を目指して歩んでいくだろう。
星野が築き上げてきた確固たるその姿勢と努力は、いずれ大舞台での栄光を手にする感動的な瞬間を、日本のファンに届けてくれるはずだ。
取材協力:宍戸ヒルズカントリークラブ