生物多様性保護などゴルフの素晴らしさを解説 全英オープンで設置された「SASTAINABLE GOLF HUB」とは?

北村収

ギャラリープラザのど真ん中に設置された「SASTAINABLE GOLF HUB」 【北村収】

 4大メジャーの中で唯一の英国開催である全英オープン。7月18日(木)から21日(日)までスコットランドのロイヤルトゥルーンGCで開催された今年の大会では、期間中の1週間で約25万人のギャラリーが訪れたと言われており大きな盛り上がりを見せた。この全英オープンを主催するR&Aが今年力を入れて取り組んだことの一つが、「SUSTAINABLE GOLF HUB」というブースの設置。ゴルフ場がいかに環境保護に貢献しているか、全英オープンが行っている社会貢献活動、そしてゴルフが人々の健康や福祉にいかに寄与しているかを紹介している。

ゴルフ場は生物多様性保護に多大な貢献をしている

ゴルフと自然の関係を説明したパネル 【北村収】

「SUSTAINABLE GOLF HUB」は昨年よりスタート。今年は規模を拡大し、ギャラリープラザのど真ん中に設置された。

 中に入ると「GOLF AND NATURE」の文字が目に飛び込んでくる。「ゴルフコースと自然は、独特で互いに有益な関係を共有している。ゴルフ場の緑地は自然を支える上で重要な役割を果たしており、R&Aはゴルフを自然保護の力として積極的に推進している」と説明がある。そして「その中心にあるのが『R&A ゴルフコース生物多様性プロジェクト』で、世界的な生物多様性の減少を改善する役割を果たせるかを理解することを目的としている」と解説されている。

 2023年にこの『R&A ゴルフコース生物多様性プロジェクト』によって調査された25のコースで、なんと1,576種類の植物と野生生物が確認された。この調査結果は、ゴルフコースが豊かな生物多様性を支えていることを示している。

 今回全英オープンが開催されたロイヤルトゥルーンGCでは、絶滅危惧種にも指定されているヒバリが生息している。また、イギリスのコウモリ種の72%がゴルフコースで観察されており、100種以上のアンバーリスト(生息数が減少しているが、まだ深刻な絶滅危機には瀕していない種)またはレッドリスト(絶滅危惧種や絶滅のリスクが高い種)に載っている鳥の種もゴルフコースによって支えられていることが確認されているそうだ。

 また、1970年代以来、イギリス全体で蝶の80%が減少したと言われる。ところが、49%の種がこれまでにゴルフコースで観察されている。

全英オープンの大会を通じて社会に貢献

 全英オープンの目指す大会のあり方は、SUSTAINABLE CHAMPIONSHIPS(持続可能なチャンピオンシップ)だ。使い捨てプラスチックの削減、再生可能エネルギーの使用、自然生息地の保護などの環境問題への対応に加え、全英オープンを通じて人々の健康と福祉の促進も目標にしている。

 会場に訪れたファンは平均して8キロ(5マイル)を歩き、コースを回る過程で11,500歩を歩くことになる。また、全英オープンの開催地近くの住民を中心としたボランティアの活動時間は47,000時間以上になる。ボランティア活動は自信や自尊心、コミュニケーションスキルを育み、新しい友情を築くことができると証明されている。

 物理的な貢献も行っている。2021年以降、「ジ・オープン・ウォーター・イニシアチブ」により83,000本以上の木を再生。2016年以降、「ジ・オープン・レガシー・ファンド」を通じてホスト地域の持続可能なコミュニティプロジェクトに50万ドル以上を寄贈している。さらに、2022年の第150回全英オープン後、14,800本のネジと釘が「ジ・オープン・コミュニティ・リユース・プログラム」によって寄付され、鳥の巣箱、ベンチ、さらには小屋の建設に使われている。

 さらに、誰にでも開かれたアクセス可能なチャンピオンシップの開催にも取り組んでおり、会場内には車椅子に乗って観戦するギャラリーが多く、車椅子用トイレも充実している。さらに移動が困難なギャラリーを送迎するアクセシブル・シャトル・バギーが会場内を走っている。

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著者プロフィール

1968年東京都生まれ。法律関係の出版社を経て、1996年にゴルフ雑誌アルバ(ALBA)編集部に配属。2000年アルバ編集チーフに就任。2003年ゴルフダイジェスト・オンラインに入社し、同年メディア部門のゼネラルマネージャーに。在職中に日本ゴルフトーナメント振興協会のメディア委員を務める。2011年4月に独立し、同年6月に(株)ナインバリューズを起業。紙、Web、ソーシャルメディアなどのさまざまな媒体で、ゴルフ編集者兼ゴルフwebディレクターとしての仕事に従事している。

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