角田裕毅がレッドブル初テスト! 昇格の可能性は?

柴田久仁夫

セルフコントロールも大きく改善した

雨のサンパウロGPで、角田は圧巻の走りを見せた 【(C)Redbull】

 とはいえ今季の角田vs.ローソンは、上述したように予選、レースともに角田が大きく優った。かつてはフェルスタッペンを凌ぐ速さ、強さを見せたリカルドにも完勝している。レース運びの巧さ、粘り強さはデビュー当時から定評があり、2021年イギリス、ハンガリーでの16番グリッドからの10位、6位入賞はその典型だった。

 さらに今季はサンパウロの3番手、ラスベガスの7番手のように、予選一発の速さにも磨きがかかってきた。なのにフェルスタッペンのチームメイト候補の、最有力とは目されない。角田にしてみれば、これ以上何をすれば正当な評価をしてくれるのかという思いだろう。

 コース上で熱くなりすぎ、自分を抑えられなくなる悪癖も、シーズン初めに比べればすっかり影を潜めた。確かに開幕戦バーレーンでの、角田の行動は酷かった。レース終盤に「リカルドに順位を譲れ」と指示が出たことに怒りが抑えられず、無線で悪態をついただけでなく、チェッカー後にはリカルドに対して煽り運転をやらかした。

 しかし角田はそこで巻き起こった批判に対し、「改善に取り組んでいますし、やり遂げる自信があります」と言明。実際、その後の角田は、去年までなら無線で喚き散らしているような状況でも、グッと抑えてきた。かなり感情をコントロールできるようになったと言っていいだろう。

高く評価されたアブダビテスト

「僕の運転スタイルに合った車だった」と角田自身も好感触だった 【(C)Redbull】

 10日に行われたテストで、角田は127周を周回、1分24秒689のベストタイムは全23人中17番手のタイムだった。この日最速だったシャルル・ルクレールの1秒1落ちという数字だけ見ると、物足りなく感じるかもしれない。ただしマクラーレンのランド・ノリスは角田とほぼ同タイムの16番手、オスカー・ピアストリは19番手だった。

 角田たちF1レースドライバーによる今回のテストの主目的は、来季に向けてのタイヤデータ収集だった。各種コンパウンドを試しながら淡々と周回を重ねるというかなり地味な作業だが、安定したラップタイムで走り続けるのは決して簡単なことではない。

 何よりエンジニア側はドライバーに、的確な技術フィードバックを求める。レッドブルのパフォーマンス担当チーフエンジニアのベン・ウォーターハウスはこの点に関して、「ユウキは2025年型ピレリについて素晴らしいフィードバックを提供し、タイヤの変更点について貴重な洞察を提供した」という評価を与えている。

 レッドブル上層部はアブダビGPの翌日に、来季のドライバーラインナップについて協議した。すでに結論は出ていると思われるが、今回のテスト結果がどれほど考慮されたかは不明だ。来季の角田はレッドブルに昇格できるのか、あるいはRBで5年目を迎えるのか。11日の時点で、まだ発表はない。
(了)

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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