英国人はフットボールを語りたくて仕方がない 噂の域を出ないゴシップ記事の存在意義
フットボール談義のネタを提供するのがゴシップ欄
英国のファンにとってゴシップ記事は必要不可欠なものだ。それをネタにフットボール談義に花を咲かせる 【Photo by Alex Pantling/Getty Images】
結論から言ってしまうと、現地では全く構わない。いいのである。というよりむしろ、英国人にとってこうしたフットボールにかかわる噂話は必要不可欠なものなのだ。
つまりこういうことである。フットボール狂だらけの英国では毎日、いつでも、どこかで、誰かがフットボールを話題にする。話したくて仕方がないのである。しかしそのとっかかりになるネタが必要だ。それを提供するのがゴシップ欄である。
ファンは「おいお前、あの記事読んだか?」という感じで話のとっかかりにする。例えばリバプールファンであれば、アレクサンダー=アーノルドをはじめ、ユルゲン・クロップ政権下から長年チームを支えてきたモハメド・サラー、そして主将のフィルジル・ファン・ダイクの主軸3人が、今季いっぱいで契約が満了する状況のままであることに対し、常に敏感にアンテナを張っており、何か情報が入るたびに仲間内で喧々諤々(けんけんがくがく)とする。
「トレントがクラブとの交渉を拒否している」という情報が入れば、それをきっかけに1日中、熱くアレクサンダー=アーノルドの去就について「ああでもない」「こうでもない」と語り合うのだ。
無論、ペップも今季いっぱいで契約が終了する状況があり、それがファンの大きな関心を集めるのは当たり前だ。マンチェスター・Cのサポーターなら、ぜひともペップに監督を継続してほしいことだろう。
しかし熾(し)烈なプレミアリーグで頂点を極めて、昨季限りで勇退したクロップと同様、偉大なスペイン人知将にも「すり減り症候群」とでもいう兆候が表れている気がする。最近のペップにはマンチェスター・Cにやって来た当初のインテンシティは感じられない。
だからファンなら、こうした残留記事が出たら、むさぶるように読み、仲間と「そうなればいい」などとあれこれ話し合うのである。
一方アンチは、マンチェスター・Cが直面する115件のファイナンシャル・フェアプレー(人件費や移籍金などの支出がクラブ収入を超えることを禁じる規程)の問題も絡めて、「いやいやそんなことはない。まずこの問題でクラブが無罪とならなければ、ペップが去就を明らかにするはずがない」などと言い合って、まさに金字塔のような黄金時代を築いた忌々しいスペイン人敵将の残留報道が、それこそゴシップの典型のような泡沫(ほうまつ)記事になってほしいと願うのだ。
日本のファンも仲間と熱い議論を交わしてほしい
このところは遠藤の去就話も英メディアを賑わせている。記事の信憑性はともかく、ファンにとってはフットボールを語り合うとっかかりになる 【Photo by Robbie Jay Barratt - AMA/Getty Images】
ただただフットボールについて語り合っていたい。そんな英国人の日常を彩るもの、それがゴシップ記事なのである。
それに何はともあれ移籍のゴシップ記事は、そのクラブの問題点や補強ポイントにも触れ、スポットライトを当てる。最近ではリバプールで出番が激減している遠藤航選手の去就も英メディアを賑わせるが、そんな記事が出るたびに、日本のフットボール・ファンも我らが日本代表主将の将来について、ぜひとも仲間とあれこれ熱い議論を交わしてほしいものである。
(企画・編集/YOJI-GEN)