一流の守備職人による野球教室。参加者のとある共通点とは…? 西崎幸広が語る三井ゴールデン・グラブ賞OBの知られざる活動
【写真提供:三井広報委員会】
日本ハム・西武で一世風靡。「トレンディ・エース」が語る野球教室の中身
「その野球教室は、選手が対象ではなく、『ジュニア野球の指導者のための野球教室』なんです」と西崎さん。
元日本ハム/西武の西崎幸広さん 【©PLM】
井端弘和氏による守備の指導 【写真提供:三井広報委員会】
西崎さんの投手向け指導 【写真提供:三井広報委員会】
投手である西崎さんは、1988年と1996年の二度、三井ゴールデン・グラブ賞を受賞。2011年から野球教室の指導に参加し、これまで全国各地で開催された22回のうち15回参加している“常連”だ。
子どもへの野球指導法が昔と今で大きく変わったことは、しばしばメディアでも取り上げられているが、西崎さんは、「今には今のやり方がある」とし、「上から押し付けるような指導、大人の権力や体格差を使って恐怖を与えるような指導はもってのほか」だと話す。そしてそれをしっかりと言葉で指導者に伝えるとともに、子どもたちの上達のヒントを教えていく。
子どもが参加する野球教室も経験している西崎さんは、指導者向けの指導と子ども向け指導の違いをこう話す。
「私が子どもたちへ指導をするとなるとその日1日限りですが、指導者向けの指導は、その指導者が1年、2年と子どもたちと接していきますよね。ということはその指導者の方にしっかりと教えれば、子どもたちは常に正しい練習法で練習ができるというわけです」
教室のなかで大切にしているのは2点。それは「キャッチボール」と「子どもに自分で考える力を養わせること」だ。
キャッチボールについては、なぜキャッチボールが大切なのかを理解していない指導者が多いと西崎さんは話す。「指導者の皆さんも案外できていなかったり(笑)。すべての動作の基本であり、怪我予防にもなるキャッチボールをおろそかにしないようにというのを、まず教えています。それがしっかりできているチームはやっぱり強いですから」
投げて捕る動作の連続がキャッチボールではない。まずは構えから。子どもの7割がセットポジション、2割がノーワインドアップ、1割がワインドアップから投球動作に入るそうだが、「自分に合った構えを自分で見つけるのがいいと思います」と西崎さん。「自分のリズムが取りやすいのであれば、矯正する必要はないわけです。そういうことを子どものときから自分で考える癖をつけさせるのです」
ワインドアップの西崎さん 【写真提供:三井広報委員会】
「プロもキャッチボールは入念に行うんです。体重移動とか、肩の可動域とか、今日のコンディションとかをひとつひとつ確かめながら投げる。なので、子どものうちからじっくり時間をかけてやるように教えているわけです」
それから、キャッチボールの相手に近い距離で力いっぱい投げないこと。そんな「思いやり」も身につけるようにと、西崎さんは指導者に伝えている。野球を通じて仲間を思いやり、人間的にも成長していくことを目指してもらいたいという。
投手は9番目の野手。だから基本に忠実な守備を
そしてファーストへの送球やベースカバーも正確に。特にベースカバーは中継のカメラには抜かれず、派手さはないプレーだが、これも「自分を助けるため」に、内野ゴロであれば一塁手が止めるまでは全力で走ってカバーに入るように、と基本の動作を確認しながら教えていく。
先述の通り、西崎さんは日本ハム時代の1988年と1996年に、パ・リーグの投手部門で三井ゴールデン・グラブ賞を受賞している。当時の思い出をうかがうと、「いや、まさかだったんですよね。特に1996年はライバルも多く、とれるとは思っていなかった」と笑うが、基本をおろそかにせず、地道な守備練習を積んだことが実を結んだのだろう。
「この野球教室が間接的にでも将来の三井ゴールデン・グラブ賞受賞者につながったら嬉しい」と西崎さんは話した。今年の三井ゴールデン・グラブ賞は、いよいよ11月28日に表彰式が実施される。
取材・文 海老原悠
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