フェルスタッペンの4連覇がほぼ確実に ノリスに足りなかったものとは?

柴田久仁夫

マックス・フェルスタッペンの勝利は 6月末のスペインGP以来、実に12戦ぶりだった 【(c) Redbull】

ノリス戴冠の可能性はほぼ消滅

 大荒れの展開だったサンパウロGPで、マックス・フェルスタッペンは17番グリッドからレースを制した。最後は2位エステバン・オコンに20秒近い差をつけての圧勝だった。6月末のスペインGP以来、実に12戦ぶりの勝利。ではこれでフェルスタッペンが完全復活を果たしたかといえば、そう言い切るのは時期尚早だろう。

 ウェット路面のレースでは空力性能の優劣が結果に直結しにくく、マクラーレンが真価を発揮できなかったこと。セイフティカー導入や赤旗中断のタイミングが、レッドブルに有利に働いたことなど、このレースならではの状況が大きく勝敗を左右したからだ(とはいえ王者フェルスタッペンのドライビングは圧巻だったが)。

 一方で確実なことが、ひとつある。ランド・ノリスのタイトル獲得の可能性が、ほぼ消滅したということだ。

 サンパウロGP開催前の時点で、ドライバーズ選手権首位のフェルスタッペンとノリスのポイント差は47。残り4戦しかないことを思えばすでにこの時点でも、ノリスのタイトル奪還は厳しい状況だった。サンパウロではスプリントレースで勝利したものの、差は3ポイントしか縮まらなかった。

 そして決勝レースではフェルスタッペンが優勝した上にファステストまでたたき出して26ポイントの荒稼ぎ。対するノリスは6位に終わり、二人の差は62ポイントまで広がった。残り3戦でこの大差を詰めるのは、フェルスタッペンが連続してリタイアでもしない限り不可能だ。

前半の貯金で逃げ切るフェルスタッペン

USGPで1-2を遂げたフェラーリ。ライバル同士でポイントを奪い合ったのも、結果的にフェルスタッペンを助けた 【(c) ScuderiaFerrari】

 ノリスがタイトルを獲れないとしたら、それはなぜか。

 ドライバー以外の要因で言えば、シーズン序盤のマクラーレンの戦闘力不足が痛かった。マシン床下の気流で強大なダウンフォースを発生させる、いわゆるグランドエフェクトカーが導入されてから今年で3年目。チーム間の性能差は、今まで以上に縮まるはずと予想され、シーズンは実際その方向で推移していった。

 それでもシーズン前半のフェルスタッペンは、スペインGPまでの10戦で7勝を挙げタイトル争いを独走した。ノリスもその間に、キャリア初優勝を含む計6回の表彰台に上がってはいるが、この時点ではまだレッドブルRB20の戦闘力がマクラーレンMCL38をしのいでいたからだった。

 第10戦スペインGP終了時で、両車のポイント差は69。しかしその後のマクラーレンは度重なるアップデートが功を奏し、どんな特性のコースでも速い最強マシンとなった。その結果、後半11戦での獲得ポイント数では、フェルスタッペンの174に対してノリスが181と上回った。だが前半の負債を帳消しにするまでには行かなかった。言い換えればシーズン前半に築いた貯金のおかげで、フェルスタッペンは逃げ切りに成功しつつあるということだ。

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著者プロフィール

柴田久仁夫(しばたくにお) 1956年静岡県生まれ。共同通信記者を経て、1982年渡仏。パリ政治学院中退後、ひょんなことからTV制作会社に入り、ディレクターとして欧州、アフリカをフィールドに「世界まるごとHOWマッチ」、その他ドキュメンタリー番組を手がける。その傍ら、1987年からF1取材。500戦以上のGPに足を運ぶ。2016年に本帰国。現在はDAZNでのF1解説などを務める。趣味が高じてトレイルランニング雑誌にも寄稿。これまでのベストレースは1987年イギリスGP。ワーストレースは1994年サンマリノGP。

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