MLBポストシーズンレポート2024

ここぞの場面で飛び出した、大谷翔平の同点弾 第1打席に潜む「伏線」とは?【地区シリーズ第1戦】

丹羽政善

10月5日(現地時間、以下同)に行われたパドレスとの地区シリーズ第1戦、大谷翔平は二回に同点に追いつく3ランを放つと、バットを投げ、雄叫びをあげた 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】

 季節外れの暑さとなったこの日、陽が落ちれば気温が下がるのがカリフォルニアだが、夜になってもドジャー・スタジアムがあるチャベス・レバインの熱気が冷めることはなかった。

 打った瞬間にそれとわかる一発は、“ここで打ってくれれば”、というところで飛び出した。

 初回に先発・山本由伸(ドジャース)が乱れ、いきなり3点のビハインド。しかし、追いかけている時間はそれほど長くなかった。

ドジャース先発の山本由伸から初回に2ランを放った、パドレスの主砲マニー・マチャド 【Photo by Harry How/Getty Images】

 ドジャースは二回裏、2死一、二塁のチャンスをつかむ。本塁打が出れば同点。最悪でも1点は返しておきたいという場面で、ゆっくりと大谷翔平が打席に向かう。ウォークアップソングである「The Show Goes On」が場内に流れると、つめかけた5万3028人のほとんどが、腰を上げた。

 いつものようにバットでベースとの距離を測って、左足の位置を確認する大谷。昨日の会見では、「初めてのポストシーズンで、どう自分の打席を冷静に送れるか」と一抹の不安を口にしたが、杞憂に終わった。

 初球、2球目とボール。3球目は、内角のボール球に手を出してファール。この時、自打球が左足に当たった。そこで主審が、少し痛みが和らぐまで、大谷に時間を与えた。ここで気持ちをリセットすると、直後の4球目――高めの真っ直ぐを大谷は捉えた。打球初速111.8マイル、打球角度25度という低空弾道の打球が、右翼席最前列に達するのに要した時間はわずか4.1秒。バットを一塁側に放り投げ、走りながら大谷が全身で絶叫すると、客席はもちろん、ダグアウトも呼応し、蜂の巣をつついたような騒ぎに。1打席目はレフトフライに打ち取られていたが、これ以上はないというポストシーズンデビューとなった。

「危ないところ。ちょっと思っていたよりギリギリの本塁打でしたけど、球界トップクラスの投手から打てたのはすごく自信になった」

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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