キャプテンとしてエースとして、宇佐美貴史がチームを奮い立たせる「熱量」

下薗昌記

今季のJ1では上位につけているガンバ大阪でチームをけん引している宇佐美貴史(左) 【(C)GAMBA OSAKA】

 ポヤトス体制の2年目を迎えたガンバ大阪はJ1リーグで上位争いに加わり、天皇杯では4シーズンぶりの準決勝進出を果たしている。リーグ屈指の堅守を誇る今季のガンバ大阪だが、宇佐美貴史が語るチームの特長は「熱量の高さ」。チーム最多の得点とアシストで攻撃を牽引するだけでなく、泥臭い守備や戦う姿勢でもチームを牽引するキャプテン宇佐美に今季のガンバ大阪やシーズン終盤に懸ける思いを聞いた。(取材日:2024年9月25日)

サイドで勝負できる選手が増えて攻撃の厚みが増した

――リーグ戦では夏場以降、足踏みが続いているとはいえ、現在5位(取材日9月25日時点)につけていますし、天皇杯では4シーズンぶりのベスト4進出を決めています。ダニエル・ポヤトス監督が2年目の指揮を執る今シーズンの手応えや、昨季との違いについてどう感じていますか。

 去年よりは良いシーズン送っていますし、チーム状態としては、去年と比べものにはならないと思います。去年が順位的に深く潜りすぎてしまったのはありますが、チームとしても選手個人としても、ある程度の成長は出来ている手応えはありますね。

――8月以降、勝てない流れが続いていますが見せているサッカーの内容に関してはシーズン前半よりも向上しています。得点数に関しては課題がありますが、宇佐美選手が感じる手応えを教えてください。

 去年、ちらほらと出せていた攻撃的な部分の良さがよりコンスタントに出せるようになっていますし、守備がものすごく強固になりましたから、必然的に今季は勝つ確率が上がってきたと思います。具体的に今季の攻撃の良さを挙げると、サイドで勝負できる選手が増えましたよね。ウェルトンにしても(山下)諒也にしてもそうですが、そこでサイドの攻撃に関して厚みが出ていますし、彼らは推進力ももたらしてくれるので攻撃面でも効いています。相手に戻られて、全員で守られる前に、攻撃を完結させてしまうような攻撃も少しずつ出来るようになってきていますよ。

――今シーズンは勝敗に関わらず、ガンバが見せる迫力に明らかにパナソニックスタジアム吹田に集うサポーターが沸く場面が増えています。それは攻撃面だけでなく、宇佐美選手が今季のキーワードとして掲げる「チームの熱量の高さ」が関係していると思います。攻守でチームを引っ張る宇佐美選手は過度に熱量の高さは意識していないかもしれませんが、自ずとチームを牽引していますね。

 いや、僕は過度にサポーターに見せるぐらいでもいいと思っているんですよ。しっかりと熱量を表に出そう、ということは僕だけでなく他の選手にも伝えていますし、一つのモーションでサポーターやスタジアム全体を巻き込んで戦うことは意識していますし、他の選手にも意識してもらいたいですね。

僕自身が一皮、二皮剥けないとチームの順位は上がらない

8月以降の結果が思わしくない点について、宇佐美(左)は「自分たちで奮い立たせていくべき」とキャプテンシーをみせた 【(C)GAMBA OSAKA】

――このインタビュー時点の成績ですが、宇佐美選手は得点数が計9ゴール、アシスト数も7でそれぞれチーム最多です。キャプテンとして姿勢でも数字の結果でもチームを引っ張っていますが、ここまでのご自身のパフォーマンスをどう評価されていますか。

 まだまだかなと思っています。僕自身が思っているよりも、ゴール数もアシスト数も少ないのでもっと数字の結果をチームにつけないといけないなとは思っています。ただ、チームの得点への関与率というか、表に出てこない数字も考えればそれほど悪くないですけど、まだまだ取りたいですね。

――守備時に自陣の危険地帯で体を張って味方にメッセージを送ったり、決定的なパスでチャンスを演出したりと、宇佐美選手の輝きがなければリーグ戦で上位に食い込んでいるガンバの成績はないように思いますが、いかがですか。

 でも、それは皆で作ってきたものですよ。ただ、ピッチ内外でチームを牽引している自負はありますけど、もっと圧倒的にチームを引っ張らないといけませんし、出来ているなと感じる手応えと、まだまだ足りないなって思う部分は半々の感覚で自分の中でせめぎ合っている状態です。

――イッサム・ジェバリ選手の負傷離脱などもあってボックス内で機能するFWが不在の今、ワントップもこなしながら攻撃の大半に関与する宇佐美選手の役割は大きい一方で、負担も多いと思います。シーズン終盤に向けて、さらに意識する個人のプレーや役割を聞かせてください。

 ゴールなりアシストなり、まあ個人的にはゴールの方がよりいいですけど、数字を付けるという作業を僕がさらにやっていかないと、ここからチームが上に行くことは出来ないと思っていますし、僕自身が一皮、二皮剥けないとチームの順位は上がらないと思います。シーズンの終盤に僕がギアを上げないことにはチームのギアも上がりません。特に今、勝てていないので、僕がこのチーム状況を打開しないといけないですね。

――宇佐美選手のシュートの鋭さは従来同様ですが、今季はより決定的なスルーパスを見せたりと、攻撃面で万能性を見せています。32歳を迎えてなお、ご自身で成長している部分を感じますか。

 よりプレーの幅が広がりましたし、本当に数多くのタスクをこなせている感じはします。サイドに開いてドリブル突破することもあれば、攻撃の作りに関わることもあったり、それこそ今言ってもらった決定的なパスを出したりすることもあります。メンタル的なところで、チームのメンタリティを底上げすることや、本当にいろんなタスクがあるので、凄く疲れますけど、自分で選んだ道というかポジション(キャプテン)ですし、ここを乗り切ってまたギアを上げることが出来れば、一人の選手としても人間としても大きく成長できる機会だと思うので、シーズンの最後までトライし続けたいですし、努力し続けたいと思っています。

――サッカーの内容が必ずしも悪くない試合も多い中で、8月以降はなかなか結果が出ないジレンマもあると思います。昨季は9月以降に失速しましたが、サッカーの質を考えれば去年とは異なる状況です。このままシーズンを終われないという思いも強いと思いますが。

 個人としてもそうですし、チームとしてもこういう状況に対して自分たちで奮い立たせていくべきですし、こういう逆境がやってきたときに、むしろこの逆境を喜ぶぐらいじゃないとチームとしての伸びはないのかなと思います。もちろん、プレッシャーを感じている選手も多いとは思いますが、やっぱりチームとして一回、沈む瞬間がないと成長できないというところは僕自身も凄く感じる部分です。今の状況は、完全に沈んでいる状況なので、ここで1つ勝って自分たちの流れを作ることが出来ると思いますし、今いる選手たちも自分の成長につなげることが出来るはずです。今はそういう時期なのかなと思いますね。

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著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

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