J1首位攻防戦で完敗した町田 広島との「差」はどこにあったのか?
広島が町田の強みをほぼ完全に封じた試合だった 【(C)FCMZ】
広島は直近のリーグ戦3試合を3-2、2-2、6-2とハイスコアの撃ち合いで終えている。シーズン途中に加入したトルガイ・アルスラン、ゴンサロ・パシエンシアら強力FW陣が得点力を発揮する一方で、守備については懐疑的な見方もあった。しかしエディオンピースウイング広島で開催された大一番は、ホームの広島が2-0の完封で制し、首位を堅持した。広島は4月3日のアウェイ戦(2◯1)に続く勝利で、町田に対して「ダブル」を記録している。
町田は9月28日の広島戦を迎えるまで、31試合で22失点の堅守を誇っていた。町田はサイド攻撃を強みとしつつ「サイドから失点しない」チームで、リーグ戦はクロスからの失点が「1」しかなかった。にもかかわらず開始3分、23分と右ウイングバック中野就斗のクロスから2失点を喫している。
「町田の強み」で広島が上回る
「終わってみれば、立ち上がりの悪さ――。そこで2失点してしまったことが、敗因のすべてだと思います。システムを多少変更して入った後半は、かなり我々の意図する守備ができたのですが、前半のクロス対応があまりに悪すぎた。たった2本でも『2本中の2本』をしっかり仕留めてきた広島さんが一枚上手だった印象です」
広島は攻守ともアグレッシブなスタイルで、試合の序盤ほどその強みが出る。立ち上がりは当然ながら警戒ポイントだったが、そこを封じられなかった。
町田の強みは「1対1」「セカンドボール」「両ゴール前の際」といった部分だ。この試合はそこで上回れなかった。
広島は特に3バックの1対1でファウルをせずに守り切る「上手さ」が光った。塩谷司は35歳、佐々木翔は34歳とベテランの域に達したセンターバック(CB)で、身体や手の使い方が際立って上手い。荒木隼人も含めた3バックは194センチのFWオ・セフンの持ち味を消し、前半での交代に追い込んだ。
黒田監督はこう説明する。
「(広島は)ボール際、それからセカンドを回収する感覚、立ち位置がさすがに洗練されているなと感じました。経験の違いといえばいいのか、我々はまだまだこういうステージで優勝を争えるところに到達してないメンバー、経験してないメンバーも多くいます。そこに関して広島さんと少し差があったのではないかなと総評できます」
守備でも町田が後手を踏む
右ウイングバック中野就斗は2点に絡む活躍だった 【(C)J.LEAGUE】
「単純に[4-4-2]と[3-4-2-1]でミスマッチが生まれる中で、コンパクトにさせてくれなかった印象です。広島はしっかりFWの選手が背後を取る中で、シャドーが(手前に)ポジションを取るところがやはり上手い。相手のウイングバックにボールが入ってから、ボランチなどの背後に流れる動きが広島の特徴というのは分かっていました。でも僕と(ナ・)サンホがそこに行き過ぎると、ウイングバック(の対応)でズレが生まれる。なるべく二度追いしようとしたのですが、やはりフリーの時間は増えてしまっていました」
広島のサイド攻撃も町田の「十八番」を奪うものだった。1得点目は左足、2得点目は右足のクロスでゴールをお膳立てした中野はこう説明する。
「町田は人に強く来るので、ニアに走り込んだ後のところにスペースがあるというのはチームとして(意識を)統一していました。早い時間帯で本当に自分のアシストからゴールにつながって、そこから勢いにも乗れました。2点目は(ゴールを決めた加藤)陸次樹くんに感謝です。あそこは(DFの)股が空いてくるかなと思って、速いボールで足を開かせることを考えていました」
黒田監督はこう評する。
「ゴール前できちっとニアサイドとファーサイド、マイナスの3点に入り込んできたところはさすがです。(パシエンシアの先制点は)普通なら吹かして終わる、なかなか打ち切れない場面ですが、そのクオリティもさすがだなと思いました」
広島の2得点目は左サイドのクイックリスタートが起点になった。町田の昌子源主将はこう悔いる。
「相手も上手ですけど、ああいうのがウチは多いですね。前には(町田の選手が)立っていたけど、あれが逆に広島さんだったら、蹴らせてないでしょう。そのしたたかさと言うべきなのか、ウチの経験不足・弱さなのか……。おそらく後者です」