キャプテンとしてエースとして、宇佐美貴史がチームを奮い立たせる「熱量」

下薗昌記

なんとしても名古屋のゴールをこじ開けたい

J1でさらに上位を目指すガンバにとって、ホームでの名古屋戦は重要だ 【(C)GAMBA OSAKA】

――名古屋戦を含めるとホームでの試合は今シーズン残り2試合になります。シーズン終盤に向けてどの試合も大事な試合になりますが、昨季の終盤はホームで勝てないまま終わってしまっただけに、よりサポーターに勝利を届けたいという思いも強いのではないですか。

 名古屋戦が行われる時期にガンバがどういう順位にいるかまだ分かりませんが、目の前の試合が大事なのはもちろんですが、それに加えて、来季に向けていかにつなげていくかという部分も大事になってきます。先を見据えた戦いにしないといけませんし、契約的な部分でも選手の意識が分散しやすい時期でもあるので、メンタル的に同じ方向を向かないといけません。そのためにも、僕自分も何かしらキャプテンとしてアクションを起こさないといけない時期でもありますが、とにかくサポーターの前で勝つことが一番大事ですね。

――名古屋はポヤトス監督の就任一年目だった昨季はリーグ戦でいずれも0対1で敗れていますが、今季はアウェイで1対0で勝利しています。宇佐美選手のシュートを機に岸本武流選手が決勝点を決めました。ガンバを知り尽くす長谷川健太監督が率いる名古屋との戦いはどういう展開になりそうですか。

 ボールを持とうとするチームに対しては、名古屋の目線からいうと凄く相性はいいと思います。ガンバのようにボールを保持して、ボールをつないで攻撃するチームの方が名古屋はやりやすい相手だと思っているでしょうね。ただ、今のJリーグのトレンド的に見てもボール保持にこだわらず、相手にボールを持たせて、奪ってカウンターや前からプレスに行って後手を踏ませた上でインテンシティの高さを生かすチームが上位に食い込んでいる印象があります。名古屋もそうしたスタイルに近いですけど、より後ろに重心があって、守備ブロックを組んできます。永井謙佑選手のように走力がある選手が2列目にいて、カウンター1発を決めて、更に守備を堅くしてくるようなサッカーです。でも僕たちは主体的に試合を進める中で打破していかないといけません。上手く守られて、上手く点を取られてしまうような展開にだけはしたくないですね。

――名古屋のGKランゲラック選手はJリーグでも屈指の守護神で、セーブ力の高さを含めて一筋縄ではいかない相手です。それだけにより宇佐美選手のシュートはもちろん、高精度のアシストを含めて「一刺し」が勝敗の鍵を握りそうですね。

 僕が2019シーズンにガンバに復帰した最初の試合が名古屋戦でそのときは点を取っています。ただ、バシッとシュートを止められるイメージはありますし、僕だけでなく去年の(塚元)大のシュートを含めて普通のGKなら入っているだろうなというシュートを止める力がある選手なので、そこを上回るシュートを打たないといけませんし、何としてもゴールマウスをこじ開けたいです。

――長谷川監督はガンバを三冠に導いた監督で宇佐美選手も指導を受けた間柄です。長谷川監督が相手チームのベンチにいることは意識しますか。

 やっぱり、相手のベンチにいても存在感はありますし、今は名古屋の監督ですが、練習を見てメンバーを決めているんだろうなと感じますし、若い選手も惜しみなく起用してきますよね。パトリックとかユンカーがサブにいたりとか、名前で起用する監督ではないですし、練習でどれだけ頑張るかとかコンディションを見極めて起用する監督なので、色々な選手が台頭してきますし、チームを底上げしてくる監督ですよね。

――今季名古屋に移籍したパトリック選手は宇佐美選手とともにガンバで一時代を築いた間柄でもありますが、やはり勝負強さは健在です。当然、ガンバに対して高いモチベーションで挑んでくると思いますが、やはり名古屋戦は簡単な試合にならない感じですか?

 そうですね。僕らがボールを保持するという展開にはなると思いますけど、名古屋にはむしろ、そういう流れが一番やりたい展開かもしれません。リスク管理というか、うまくマネジメントしながら、攻撃の枚数を増やすことを上手くやらないといけません。一番難しいところですけどね。

ガンバクラップは勝利の儀式

サポーターと行う「ガンバクラップ」が作り出す一体感はパナソニックスタジアム吹田の魅力のひとつ 【(C)GAMBA OSAKA】

――先ほど宇佐美選手が指摘した通り、今季のJリーグも上位はインテンシティの高いチームが占めていますが、ただガンバも攻撃的な姿勢を保ちながらも今季はより強度の高さや切り替えの速さも出せていますね。そういう積み上げてきたスタイルを貫き、シーズン終盤にさらに結果を出したいのではないですか。

 もっとそのスタイルを追求したいですし、もっとボールを持っていないときのプレッシャーのかけ方も追求して成長させたいです。ボールを保持するだけでは上位には行けません。
やっぱり、しっかり守るところは守る、ボールを奪いに行くところは奪いに行く、ということが出来た上でボールは保持出来ると思っています。チームとして全てにおいてもっと成長したいですね。

――かつてのような攻撃一辺倒のスタイルではないにせよ、ガンバは常に攻撃的なサッカーを求められるチームです。その中で宇佐美選手の輝きや存在感は不可欠ですが、この先新たなガンバを作り上げる作業の中で、ご自身が意識する役割ややりがいを聞かせてください。

 32歳という年齢を迎えてベテランとしての色々なトライもさせてもらっていますし、キャプテンであったりとか僕と同じ役割ができる選手は、今のチームでいうと、多分いないとは思います。だからこそ自分が試合に出たからこそ、やれるプレーをしないといけないし、数字の結果も出さないといけません。そういう意味でもやりがいは常に感じていますね。

――活躍すれば宇佐美選手のチャントが特別な空気感を作り出し、勝利の後にはサポーターと行う勝利の儀式「ガンバクラップ」が一体感を作り出すのもパナソニックスタジアム吹田の魅力です。キャプテンとしてガンバクラップを先導する宇佐美選手にとっても、特別な思いがあるのではないですか。宇佐美選手が考えるガンバクラップの魅力を教えてください。

 毎週末、楽しくやらせてもらっていますし、これほど毎週末にエネルギーを使えるというのは現役中だけだと思います。特に今シーズンは、気持ち的なモノをまず先に燃やして戦っていますし、試合が終わった後の燃焼率というか、疲れ方も今までのシーズンよりは大きいですが、それだけ試合に僕自身が入り込んでやっているからですね。ガンバクラップは勝利の儀式みたいになっていますし、あれが出来た瞬間はやっぱり最高の景色ですね。

――名古屋戦に来場するサポーターに向けて、ガンバが見せたいサッカー、宇佐美選手が意識するプレーをメッセージで語ってください。

 パナスタの魅力は声援の大きさや臨場感ですし、全てにおいて他のスタジアムと違うと思っています。サポーターの皆さんに喜んでもらいたいという思いで僕たち全員がやっていますし、僕らが熱く戦って勝つ瞬間を見て欲しいですね。名古屋戦では見にきてくれた方がスカッとするような戦いぶりをピッチで表現するつもりです。


 32歳を迎えてなお、日々進化中。キャプテンとして、そしてエースとしてガンバを牽引する宇佐美貴史が名古屋の堅守をこじ開ける先頭に立つ。

2/2ページ

著者プロフィール

1971年大阪市生まれ。師と仰ぐ名将テレ・サンターナ率いるブラジルの「芸術サッカー」に魅せられ、将来はブラジルサッカーに関わりたいと、大阪外国語大学外国語学部ポルトガル・ブラジル語学科に進学。朝日新聞記者を経て、2002年にブラジルに移住し、永住権を取得。南米各国で600試合以上を取材し、日テレG+では南米サッカー解説も担当する。ガンバ大阪の復活劇に密着した『ラストピース』(角川書店)は2015年のサッカー本大賞で大賞と読者賞に選ばれた。近著は『反骨心――ガンバ大阪の育成哲学――』(三栄書房)

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント