2日間にわたる国内史上最大規模の7大世界戦プラス1開催 秋の世界戦ラッシュ【10月のボクシング注目試合①】

船橋真二郎

元世界王者4人登場、小國以載はアフリカ人と勝負の一戦

小國以載は「覚悟」「度胸」を世界ランク奪還のポイントに挙げる 【写真:船橋真二郎】

 13日の横浜武道館では、元世界王者4人が登場する「TREASURE BOXING 7」も開催される。メインでは元世界3階級制覇王者のジョンリエル・カシメロ(比/35歳、33勝22KO4敗1分)が1階級下のWBO世界バンタム級 8位、サウル・サンチェス(米/27歳、21勝12KO3敗)と戦う。

 セミでは元世界2階級制覇王者でIBF世界フライ級10位の京口紘人(ワタナベ/30歳、18勝12KO2敗)がWBA世界フライ級4位のビンス・パラス(比/25歳、21勝15KO2敗1分)と過去1勝1敗、今年5月の論議を呼んだ判定負けを受けての“因縁の決着戦”。同門の元WBO世界ミニマム級王者、谷口将隆(30歳、18勝12KO4敗)の世界ランカー戦も予定されている(対戦相手は未定)。

 そして、元IBF世界スーパーバンタム級王者で現在はノーランカーの小國以載(角海老宝石/36歳、21勝8KO2敗3分)が、WBO世界スーパーバンタム級9位にランクされるフィリップス・ンギーチュンバ(ナミビア/28歳、14勝12KO2敗)との8回戦で丸1年ぶりのリングに上がる。

 2022年は東洋太平洋バンタム級王者の栗原慶太(一力)、2023年はカシメロ、年1回ペースで戦い、小國らしい戦略的なボクシングで好試合を演じながら、いずれも偶然のバッティングによるストップで、4回負傷引き分け。今回こそ勝って、世界ランク奪還なるか――。

「いや、意識したら、日本にも結構おるんですよ」。小國が真っ先に口を開いたのは、キャリア初対戦となる“アフリカ人対策”について。「アフリカ系の人がおったら、俺、こういうやつと殴り合うんやな、思いながら、目を慣らす練習してます。今日も2、3人見てきました。つり革を持ってる、ここの筋肉(上腕二頭筋)、ハンパねえわー、思いながら」。

 小國一流の軽妙なトークがすべて冗談と流せないのは、この頭脳派ボクサーが勝利のポイントに「覚悟」「度胸」を挙げるからだ。

 ンギーチュンバは昨年5月、フィリピンでカシメロに12回判定負け。ダウンを奪われながらも奮闘した。身体能力が高く、本能的、アグレッシブに攻めてくる。そこに小國はデメリット、メリットの両面を見る。

「俺は駆け引き、作戦で勝っていくタイプ。でも、あいつはお構いなしに攻めてくるんで、こっちのペースでは戦わせてくれない」。それでも、大差でリードされたとしても攻めにくる可能性が高く、最後まで望みはある。

「ブンブン来るところを打つしかないです。ビビッたら、終わります。覚悟して、同時に打ちにいく。その度胸ですよね。勝とうと思ったら、怖いけど、“キワキワ”のところを行くしかないし、リスクを取って打たんことには勝てないと阿部(弘幸トレーナー)さんとも」

 少しでも相手の体力を削ぎながら、ポイント五分で“魔の4回”を乗り切り、中盤あたりのどこかで左ボディなり、一発効かせるのがベストと小國は言う。

 客観的に見て、能力的には相手が圧倒的に上と分析する。だが、観衆が入った会場の空気感、油断など、不確定要素があるのが本番のリング。「そこの勝負では自信があるので」。約8年前、圧倒的不利と言われた22戦全勝全KOの王者から、見事な世界奪取を成し遂げた阿部トレーナーとの“名コンビ”再び。「ここは何が何でも勝ちたい」というベテランの戦いに注目である。イベントの模様は「U-NEXT」でライブ配信される。

7戦全KO勝ちのホープ・村田昴が初タイトルを懸けた全勝対決

デビューから7連続KO中の村田昴(右)は山﨑海斗とプロ初タイトルを懸けた全勝対決へ 【写真:ボクシング・ビート】

 10月最初の東京・後楽園ホール、5日のメインはWBOアジアパシフィック・スーパーバンタム級王座決定戦。同級1位の村田昴(帝拳/27歳、7戦全勝7KO)と同2位の山﨑海斗(六島/26歳、9戦全勝5KO)が、TJ・ドヘニー(アイルランド)の井上尚弥挑戦が決まったことで、空位になったタイトルを争う。

 村田は和歌山・貴志川高時代に高校3冠、ユース五輪3位、日大時代には国体、全日本選手権優勝の実績を残した。自衛隊体育学校を経て、2021年6月に本場・ラスベガスでプロデビューした期待のサウスポーは、全7戦中3戦をアメリカのリングで戦ってきた。今回がプロ初の日本人対決。当初は切れ味鋭い左ストレートで倒す姿が印象的だったが、最近はインサイドで上下にまとめ打ちするなど、幅の広さを見せてきた。

 対する山﨑もアマチュア出身で、高知・岡豊高時代にインターハイ・ベスト16、大阪商大時代に国体3位。2学年違いの村田と同時期にデビューし、3戦目で日本ランク下位に名前を連ねた。バランスのいい右ボクサーファイター型で、8月の前戦では高橋利之(KG大和)とのランカー対決に2度のダウンを奪い、判定勝ちしている。

 帝拳ジムは2024年に入り、藤田健児、李健太、豊嶋亮太(現在は返上)、波田大和、増田陸、中野幹士、松本流星と王者が続々と誕生。六島ジムからは西田凌佑が名城信男以来、ジム2人目の世界王者となり、こちらも気勢を上げる。全勝対決を制し、プロ初タイトルを手にするのはどちらか。

 セミには元IBF世界スーパーフェザー級王者の尾川堅一(帝拳)が13ヵ月ぶりに登場する。2022年6月にイギリスで王座を失って以来、再起3戦目。アラン・アルベルカ(比)との8回戦で健在を示したい。また実力者ひしめくライト級の日本王座挑戦権を懸け、同級1位の浦川大将(帝拳)と2位の村上雄大(角海老宝石)が戦う。ターゲットとなる王者は三代大訓(横浜光)。プロ叩き上げの浦川は三代へのリベンジ、アマ出身で長身サウスポーの村上は2度目のタイトル挑戦を目指す。試合は「U-NEXT」がライブ配信する。

3/3ページ

著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

新着記事

編集部ピックアップ

コラムランキング

おすすめ記事(Doスポーツ)

記事一覧

新着公式情報

公式情報一覧

日本オリンピック委員会公式サイト

JOC公式アカウント