能登半島復興支援チャリティー演技会に見た、羽生結弦が滑る理由 五輪連覇の目的だった、震災支援への思い

沢田聡子

出演スケーターが口にした、羽生への感謝

プロスケーター4人が、それぞれの魅力をみせた 【(C) 矢口亨】

 演技会終了後の囲み取材で、スケーターたちは演技に込めた思いと、演技会開催に尽力した羽生への感謝を語った。

「なかなか実際にチャリティーという形で開催することはできない中で、羽生くんの力を本当に使っていただいて開催できたということで、『そこで滑る意義はすごく大きかったな』と僕自身感じています」(無良)

「なかなかないチャリティショー、こんな機会に自分も参加できたことに、本当に嬉しく思っていますし、自分のスケートを通して、人々への助けが自分でもできたら嬉しいなと思って滑りました」(宮原)

「震災が起きる度にすごく自分の無力さを感じてしまうんですけれども、でも今日こういった機会に私たちが滑ることによって、何か伝えられるものがあるんじゃないかという気持ちをしっかりと胸に、今日はここへ来て一生懸命滑りました」(鈴木)

 鈴木が「本当にこういう機会をありがとうございます」と羽生に頭を下げると、羽生も「ありがとうございます」と答える。

「少しでも笑顔の輪が広がってくれたらいいなと思いながら滑りました」と振り返った羽生は、プロとしてチャリティー活動に取り組む姿勢について語った。

「やっぱり僕自身、『金メダルを2個取りたい』という気持ちの中の大きな一つの目的として、2連覇したところから被災地への支援や思いやりみたいなものをスタートしたいなという気持ちがあって、常に競技時代頑張ってきました。で、やっと自分がプロに転向してから、こうやって徐々に徐々に被災地だったり、本当にいろんな災害がありますけれども、そういったところに心を馳せることができ始めています。

 そういった中でも、やっぱり自分はスケーターであるということが一番なので、どうしても演技で、皆さんに対しての支援や感情に対してのちょっとした助け、そういったものになれないかなと思って」

「配信という形でも、石川で滑ることを大切にされた意義は」という質問に、羽生は「なるべく辛かった方々、今現在辛いと思っている方々、いろんなことに悩んでいる方々の近くで、やっぱり滑りたいと思いました」と答えている。

「その地域の力みたいなもの、その現場の空気みたいなものって、僕等はすごく感じながら滑るので。そこの空気の大切さとか、この場所から波動としてちょっとでも空気が動いて、『皆さんの元に届けー』って思いながら、配信でも滑らせていただきました」

 この演技会は、一般については配信映像のみという形式で行われたが、会場には能登地域の親子20組が招待され、能登の4カ所にはパブリックビューイング会場が設けられた。羽生の思いは、能登の人々に届いただろう。

 プロスケーターとして前人未到の道を行く羽生だが、「僕は震災の支援をしたいと思って、オリンピック2連覇したいと思ったので」と言う。

「この2連覇というものを使って、いい意味でこの知名度みたいなものを使って。今回配信のチケットを買って下さった方々もそうですし、少しでも本当に、お金もそうですし、注目もそうですし、ちょっとでもちょっとでも力になれればいいなと思いました」

 ソチ五輪を制した直後の羽生は、故郷の復興に対する無力感を感じると語っていた。だが今の羽生は、五輪連覇という実績を生かし、被災地に大きな力を届けられる存在になったのだ。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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