イタリアに大逆転負けで準々決勝敗退のバレー男子 「決め切れなかった」石川に、それでも感謝する仲間たち

大島和人

イタリア戦は石川が印象的な場面にいくつも絡んだ 【写真は共同】

「惜しかった」「もったいない」という言葉では表現が弱く思える、日本が勝つべき試合だった。パリオリンピックの男子バレーボールは5日に準々決勝を行い、日本はイタリアにセットカウント2-3(25-20/25-23/25-27/24-26/15-17)で敗れた。

 日本は第3セットの終盤に24-21とリードし、マッチポイントが3回あった。そのうち1本でも決めていれば、準決勝に進んでいた。そのすべてを取り逃したのち、3セットを連取され、大逆転負けを喫する結末となった。

 日本は1次リーグを全体の8位、イタリアは全体1位で勝ち上がっている。強敵を追い詰め、そして追い逃した。

「あと1点」を決め切れなかった石川

試合後の石川は「結果を背負う」発言を繰り返していた 【写真は共同】

 イタリア戦で際立った活躍を見せたのが、キャプテンの石川祐希だ。192センチのアウトサイドヒッターで、中央大を卒業後はイタリアのプロリーグでステップアップに成功。28歳の今では世界有数のアタッカーに数えられている。

 彼はこの大一番で、チーム最多の32得点を挙げている。61本のスパイクを放ち、そのうち30本を成功させた。それでも試合後は、自らを責めるコメントを残している。

「チームメイトは頑張ってくれましたし、僕がこの結果を招きました。最後に託されて決め切れなかった部分に、責任を感じています。3セット目の途中まではいいところで点を決めたりしましたが、試合を決める1点が取り切れなかった」

 第3セットの23-21から山本智大のレシーブを石川がダイレクトで絶妙のコースに落とし、日本は「あと1本」のマッチポイントを迎えた。ただ石川は24-22からのスパイクを決め切れず、さらに続くレセプションでも相手のエース(サーブから直接決める得点)を誘発してしまった。チームにとっても痛恨のプレーだった。

「(24-22から)ストレートを打ちに行ったんですけど、少し力んでしまった。『これを決めてやろう』と思いすぎていた。ちょっと強く長く打ちすぎたなと思います。その後のレセプションに関しては、1点を取ることにフォーカスしすぎて、パスをしてからというのがおろそかになっていた。間のボールを任せてしまったけど、僕のボールでした」

チームメイトが語る石川への感謝

石川を責めるチームメイトは皆無だ 【写真は共同】

 しかし石川の活躍がなければ、第3セットのマッチポイントもなかった。石川は周囲が「託そう」と思われるだけのエースであり、実際にこの試合で結果も出していた。

 日本は1次リーグを1勝2敗という「ギリギリ」の成績で突破している。イタリア戦は石川が復調したからこそ、この大会でもベストと言い得るバレーを見せられた。だからこそ、石川のミスを責めるチームメイトは誰一人いない。

 リベロの山本智大は、そのプレーについてこう述べる。

「彼が苦しんでいる状況を一番理解していたので、予選リーグの敗戦からコミュニケーションを取ったり、話を聞いたりしていました。背負っているものがいっぱいあったと思うけど、それを払拭して、今日はクリーンな状態でコートに入ってくれた。非常にいいプレーをしてくれましたし、一緒にオリンピックを戦えて非常に幸せに感じます」

 ミドルブロッカーの小野寺太志は、試合後の円陣について内容をこう明かす。

「最後キャプテンとして決め切れなかったことを謝っていました。でも祐希がここまで引っ張ってきてくれた」

 セッターの関田誠大も石川への感謝を口にする。

「彼とは7年間一緒にやってきましたが、世界のブロッカー相手にどう戦っていくかを教えてくれて、僕をここまで導いてくれたことに感謝しています」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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