広島に「勝ち点2差」まで迫られた首位・町田 新潟戦の無得点から見える攻撃面の課題とは?

大島和人

町田は8月25日の新潟戦を0-0で終えた 【(C)FCMZ】

 第15節からJ1の首位に立つFC町田ゼルビアが、8月25日の第28節・アルビレックス新潟戦は0-0で引き分けた。2位は6連勝中のサンフレッチェ広島で、最大12ポイントあった勝ち点差は「2」に縮まっている。

 町田は相手のボール保持を苦にしないチームだし、黒田剛監督は勝つこと以上に「負けない」ことを重んじる発想の持ち主。新潟戦はボールを握られつつ「崩される」場面はなく、終盤は攻勢に出ていた。

 新潟が6月1日の前回対戦で敗れた相手という事実も含めて考えれば、スコアレスドローを前向きに受け止めてもいい。町田はJ1初昇格のチームだし、「5位以上」「勝ち点70以上」を目標にスタートした開幕直後ならば、この結果と内容を是としていただろう。

黒田監督が口にした課題

黒田監督は会見で攻撃面の課題を口にしていた 【(C)FCMZ】

 しかし試合後の黒田監督は、コメントに「ダメ出し要素」が多かった。

「ここまで昨年の天皇杯、そして前半戦のゲームと、新潟さんには2連敗している状態です。今回は3戦目のチャレンジをさせてもらい、クリーンシートで終われたことはよかったです。しかし攻撃へ転じたときに単純なロストがあり、そこからパス一つのクオリティに精彩を欠きました。なかなかフィニッシュまでいい形をうまく作れなかったところに、自分たちが改善しなければならないポイントは多くあるのかなと思います」

 町田も新潟も、慎重な試合運びをしていた。町田は最終ラインがまず背後のスペースを消し、相手FWの中盤まで引く動きは早めの受け渡しで対応していた。新潟も攻守とも「後ろ」に数的優位を作る配置をしていた。そうなれば必然的に展開は重くなる。

 ただ町田は前線に194センチのオ・セフンがいて、そこで高さのアドバンテージが取れる。相手が「中央」「後方」を固めている中で、サイドにもスペースがあった。新潟のボランチが消耗した終盤の15分は、サイドから町田のチャンスが一気に増えた。だが、それを仕留めきれなかった。

 黒田監督はこう言及する。

「相手が2枚で前を追いかけて来ている中で、サイドから入っていける場面はありました。そこをもう少し臨機応変にやりたいということで、ハーフタイムにディフェンス(DF)陣と話をしました。後半はいくらかサイドから形ができましたけども、前半からやれる場面はあったと思います」

 87分に荒木駿太がゴール右脇からフリーでシュートを放った場面については、黒田監督は決めきれなかった当人でなく、他のアタッカーの動きに言及していた。そこは黒田監督らしい視点だ。

「(荒木が)あそこまで入っていけたので、シューターに対してニアまた平行、マイナスのところで、一瞬にして(入っていく形を)作らなければいけなかった。あれを打たざるを得ないところに、詰めの甘さがあると思います。あの1本は完全に仕留めなければいけないシーンでした」

「奪ったあとの1本目」に苦しむ

町田は前線で競った「次」を制することができなかった 【(C)FCMZ】

 第28節・新潟戦は、町田のプレスが「ハマらない」展開だったことも間違いない。FW藤尾翔太はこう振り返る。

「(後ろに)枚数をかけられてハイプレスへ行きにくくなったときに、僕たちがハイプレスにするのかミドルプレスにするのか、どちらにするのか少し迷いながらやっていた。そこで後手を踏んだのかなと思います」

 新潟はGK小島亨介も含めて後ろに厚みを作ってビルドアップをするスタイル。町田はハイプレスを強みとするチームだが、新潟も「食いつかせてスペースを作る」ことを狙っている。夏場の試合で、相手はビルドアップの質がJ1屈指というレベルも考えると「奪いに行く積極的な守備」はリスクが高い。そこに町田のジレンマがあった。

 後ろが押し上げてコンパクトな組織を作り、前からマンツーマン気味にハメていく時間がもっとあっても良かった。ただ町田が慎重に「持たせる対応」をしたことが、失敗とまでは言えない。

 DF陣の厚みは、町田の攻撃を苦しめた。町田はFWが競った、FWに預けた「次」のプレーでチャンスを広げられなかった。いい奪い方を、有効なカウンターにつなげられなかった。

 藤尾は言う。

「相手は距離感がいいので、すぐ切り替えてボールを奪いに来ることができていた。(町田は)1人で2人3人と対峙する場面がよくあった。そこで頑張って3秒くらいキープできれば周りがついてきてくれるのかなと思いますけど、難しい部分でした」

 右サイドバックの望月ヘンリー海輝はこう振り返る。

「1つ競った後にボールが落ち着かないので、それは初めから難しいなと感じました。相手のサイドハーフもついてきて、最終ラインに人が多いので、前に逸らしても自分たちのボールになりにくかった」

 左サイドバックの杉岡大暉も「奪ったあと」をポイントに挙げていた。

「守備は危ないシーンも作られていなかったので、問題なかったですけど、攻撃のところで、不用意なロストが多かった。奪ったあとの1本目にはこだわらないといけない。個人的なミスもありましたし、カウンターを成立させるなら出ていかなければいけない。(失点)ゼロはポジティブですけど、勝たないと優勝はできない」

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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