球場が揺れたフリーマン劇的満塁弾の裏にある、WSをめぐる忌まわしき「事件の記憶」【WS第1戦】
10月25日(現地時間)に開幕した、ドジャースとヤンキースによるワールドシリーズ(WS)。第1戦は十回、ドジャースのフレディ・フリーマンにサヨナラ満塁本塁打が飛び出し、6-3で勝利。劇的な幕切れとなった 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
延長十回、右足首を痛め、全力疾走ができないフレディ・フリーマン(ドジャース)が2死満塁で打席に入ると、初球を引っ張った。打球が右翼席に消えると、客席は蜂の巣をつついたような騒ぎに。そのとき、足元が揺れていた。
おそらく、あのときもこんな感じだったのだろうか。
1988年のワールドシリーズ第1戦。ナ・リーグチャンピオンシップシリーズで左太ももと右膝を痛め、スタメンを外れていたカーク・ギブソン(ドジャース)が、1点ビハインドの九回2死、走者を一人置いて代打で起用されると、右翼席へ逆転サヨナラ2ランを放った。残っている映像を見る限り、映像がぶれている。つまりは客席が揺れ、カメラが揺れていたのだ。
ワールドシリーズ史上、2死からの逆転サヨナラ本塁打は、この2本だけ。
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サヨナラ満塁本塁打を放ち、チームメイトに迎えられるフレディ・フリーマン(ドジャース)。まるで世界一になったかのような、歓声に包まれた 【Photo by Daniel Shirey/MLB Photos via Getty Images】
球場が凍り付いた「2つの事件」
一つは「スティーブ・バートマン事件」。2003年のナ・リーグチャンピオンシップシリーズ第6戦でカブスは7回まで3対0とリードし、58年ぶりのワールドシリーズ出場まであと5アウトと迫っていた。
八回表1死二塁の場面で、ルイス・カスティーヨ(マーリンズ)が左翼へファールフライを打ち上げた。レフトのモーゼス・アルー(カブス)が、フェンス際で捕球体勢に入ったものの、スティーブ・バートマンというカブスファンが手を伸ばし、捕球を妨害。その後、カブスは大量8点を失って敗れると、第7戦も落としてしまった。
そのファンが敗退のスケープゴートとされたことは容易に想像できるが、今もスティーブ・バートマン事件として語り継がれている。
もう一つは、1996年のア・リーグチャンピオンシップシリーズ第1戦。オリオールズに1点をリードされていたヤンキースは八回、デレック・ジーターが右翼に大きな当たりを放った。フェンス際、入るかどうか――というところだったが、ジェフリー・メイヤーという少年が、フェンスから身を乗り出してキャッチ。それが本塁打と判定された。
もちろん、ライトを守っていたトニー・タラスコ(その後、2000年に阪神でプレー)は守備妨害を訴えたものの、認められなかった。同点としたヤンキースは延長でサヨナラ勝ち。そのままシリーズも制した。
2対2の同点で迎えた九回、グレイバー・トーレス(ヤンキース)が放った左中間への大きな当たりを見つめる、ドジャースのマイケル・コペック 【Photo by Alex Slitz/Getty Images】
即座に二塁塁審が守備妨害を宣告し、リプレイでも判定が覆ることはなかったが、時代が時代なら、どんな結末を迎えていたか。
「ホームランだと思った。やってしまった、と」
守備妨害の判定に心から安堵した。
「もう、救われた――そんな思いだった」
2死二塁となったが、フアン・ソトを敬遠し、ドジャースはなんとアーロン・ジャッジと勝負。ここでは代わったブレーク・トライネンが、ジャッジをショートフライに仕留めた。