オーダー変更で勝負も中国の牙城を崩せず 卓球女子団体銀メダル、倉嶋洋介の見解

C-NAPS編集部

果敢に攻めた張本は、早さでは王曼昱を上回る

リスクを承知の上で果敢に攻めた張本(右)。敗れはしたが、早さにおいては王曼昱を上回っていた 【写真は共同】

 張本選手の第3試合は、果敢に攻める姿勢が見られましたね。攻勢に出るとそれだけミスの恐れがあるので、そうしたリスクを承知の上で攻めた張本選手はすごくよかったと思います。過去の対戦成績では、張本選手が王曼昱選手に勝ったことは一度もありません。しかし、タイミングの早さに関しては王曼昱選手を確実に上回っていました。

 王曼昱選手は身長が170センチ後半であり、手足のリーチの長さが特徴の選手です。だからこそ体に近いミドルのエリアを攻めるのが効果的でした。ミドルを使って崩せていた場面もけっこうあったんですが、決めきれなかった部分が多かったのが惜しかったですね。サーブレシーブの駆け引きで少し劣っている点について、中国に対抗するには改善が必要です。中国は甘い球を見逃してくれませんので。

 王曼昱選手はボールを包み込む巻き込みサーブが得意で、左回転のかかった球に対してチキータなら良かったのですが、ツッツキなどで対応すると回転量の多いドライブかかった球で主導権を握られてしまう展開になりました。戦いぶりは悪くはなかったのですが、他国と比較して3段階くらいレベルが異なるのが中国の選手なので、レシーブ力をより高めることは、日本選手において共通の課題だと考えます。

打倒中国の目標を継続して4年後には勝利を

現在の日本の実力なら、表彰台のトップに立つうえでの壁となるのは中国以外に存在しない。4年後にはこの勢力図を覆せるのか 【写真は共同】

 卓球の日本女子の実力を考えれば、中国以外には敵はいないレベル感といっても差し支えはないと思います。東京五輪が終わってからの3年間は、「打倒中国」を掲げて頑張ってきましたが、次の4年間に向けても同様の取り組みを継続する必要があるでしょう。女子に関しては、中国にとっても日本が最大のライバルであることは間違いないので、いつかは追いつきたいところです。

 中国に勝つうえでは、日本の長所であるタイミングの早さをより磨くこと、そして、課題であるレシーブ力やサーブレシーブの駆け引きを伸ばしていくことが重要になります。完全無欠の王者に見える中国についても主力の充実は際立っていますが、次の世代の台頭に関してはそこまでではありません。世代交代が上手くいっているわけではないので、その点においては日本のほうが若い今後に期待のタレントが育ってきています。

 なので、この先に「中国超え」を果たすビッグチャンスは必ず訪れるはずです。特に最年少の張本選手は16歳であり、次のロサンゼルス五輪は20歳、その次もまだ24歳。今後のさらなる成長を考えると、果てしない道のりに思える中国からの勝利を達成できる日は、近づいてきているのではないでしょうか。

倉嶋洋介(くらしま・ようすけ)

【本人提供】

名門・明治大学を卒業後、協和発酵に入団。全日本選手権では2001年大会で混合ダブルス優勝、02年、04年、05年大会では男子ダブルス優勝の実績を残す。現役引退後の07年から母校・明治大学のコーチに就任し、水谷隼選手らを指導。10年には卓球男子日本代表のコーチを務め、12年には監督に就任した。16年のリオデジャネイロ五輪では日本男子卓球界初の五輪銀メダルをもたらし、東京五輪でも団体銅メダルを獲得。現在はTリーグの強豪・木下マイスター東京の監督を務めている。

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著者プロフィール

ビジネスとユーザーを有意的な形で結びつける、“コンテキスト思考”のコンテンツマーケティングを提供するプロフェッショナル集団。“コンテンツ傾倒”によって情報が氾濫し、差別化不全が顕在化している昨今において、コンテンツの背景にあるストーリーやメッセージ、コンセプトを重視。前後関係や文脈を意味するコンテキストを意識したコンテンツの提供に本質的な価値を見いだしている。

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