400mリレー5位で“お家芸”復活ならず 日本短距離界の停滞脱却を朝原宣治が思案

久下真以子

代表強化には陸上ファンを増やす取り組みが必要

陸上が今以上に脚光を浴びるためには、選手たちのレベルアップに加え、関係者の意識も変えていく必要がある 【写真は共同】

 東京五輪のメンバー選考の際は、直前に山縣亮太選手(SEIKO)が9秒95の日本新記録をたたき出し、多田修平選手や小池祐貴選手(ともに住友電工)らが9秒台を狙う争いをするなど、ハイレベルな切磋琢磨がありました。現在の日本はサニブラウン選手が頭一つ抜けていますが、彼らを脅かすような若い選手や新しい選手が出てくることが、今後世界で戦う上で必要になってくるでしょう。

 選手としても解説者としても長く携わってきた身として思うのが、陸上って本当に奥が深い競技なんですよ。例えば野球やサッカーなどのチームスポーツだったら、試合展開が分かりやすいじゃないですか。どちらかが点をとってリードしたり、逆転したりする勝負の過程が見てとれます。

 一方、陸上は「いかに速く走るか」「いかに遠くに跳べるか」を争う一見すると分かりやすい競技ですが、実はその中にペース配分やバトンパスのような緻密な調整や戦術があります。でもそうしたディティールを分かって楽しんでいるファン層はまだ一部しかおらず、そういう面白さを僕たちがもっと伝えていかなきゃいけないと感じさせられました。

 25年には東京で世界選手権が開催されますが、日本の陸上界全体を盛り上げる意味でも、会場に足を運ぶ陸上ファンをもっと増やしたいですね。パリ五輪の陸上も連日満員で盛り上がっています。日本の陸上大会においても、そうした盛り上がりのムーブメントを起こして、注目度を増すことが競技レベルの底上げにもつながるはずです。

 観戦ポイントなどは、僕たちが引き続き伝えていきますが、みなさんにはもっと気軽に陸上を楽しんでもらうのが理想的だといえます。例えば「推し」を見つけて、その選手の活躍を見に行くとか。そういう興味レベルでもOKです。大きなスタジアムに大観衆が集まる雰囲気はやっぱり独特だし、陸上を現地で観戦するとそのスピード感やダイナミックさに驚くと思いますよ。世界選手権では、国立競技場がパリ五輪のように満員になって、盛り上がることを楽しみにしています。

朝原宣治(あさはら・のぶはる)

【写真:本人提供】

初出場の1996年アトランタ五輪の100mで準決勝に日本人としては28年ぶりに進出。北京五輪の4×100mリレーでは、悲願の銀メダル獲得。2010年に次世代育成を目的として陸上競技クラブ「NOBY T&F CLUB」を設立。地域貢献活動の一環でもあり、引退後も自身のキャリアを社会に生かそうとチャレンジを続けている。

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著者プロフィール

大阪府出身。フリーアナウンサー、スポーツライター。四国放送アナウンサー、NHK高知・札幌キャスターを経て、フリーへ。2011年に番組でパラスポーツを取材したことがきっかけで、パラの道を志すように。キャッチコピーは「日本一パラを語れるアナウンサー」。現在はパラスポーツのほか、野球やサッカーなどスポーツを中心に活動中。

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