“開心那スタイル”で2大会連続銀メダル 荒畑潤一が語るスケボー女子パークの本質
スケートボード女子パークでは、15歳の開心那が2大会連続となる銀メダルを獲得した 【写真は共同】
予選1位通過の開は、決勝の1本目から91.98の高得点を叩き出す。しかし、アリサ・トルー(オーストラリア)やスカイ・ブラウン(英国)ら海外勢も続々と高得点を連発し、メダル争いは混沌を極めた。3位で迎えた3本目、開は1本目を上回る92.63の滑りを披露し、東京五輪に続く2大会連続の銀メダルに輝いた。
3年前の東京五輪よりも格段に競技レベルが上がったスケートボード女子パーク。今後のメダル争いはさらに熾烈を極めることが予想されるだけに、日本のスケーターたちはパフォーマンス向上のために何を意識すべきなのだろうか。18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得し、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの荒畑潤一さんに日本勢3選手の滑りと、スケーターとして大切にすべき本質について語ってもらった。
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“唯一無二のスタイル”が光った開の滑り
“開心那スタイル”を貫いたスケーティングは、荒畑さんも「かっこよかった」と太鼓判を押す 【写真は共同】
開選手の滑りはスタイリッシュでかっこよく、スケーターの本質をもっとも体現していると感じます。開選手にしかできない攻め方をして、他の選手と違う滑りをするところが、さらにかっこいいと感じさせる点ですよね。まさに開選手の“唯一無二のスタイル”が確立されています。
予選から安心して見ていられましたし、ふんわりと板に乗っているのではなく、足が板にピタッとついてコントロールできている印象を受けました。スタイルが選手によって異なるので一概には言えないのですが、1位のトルー選手との差を強いて挙げるのであれば、エアーのバリエーションかなと思います。しかし、開選手はエアーで勝負をするスタイルではないので、レールのバリエーションの難易度を上げたり、フリップでかける削り系のトリックを増やしたりすることが、今後の得点アップにつながるはずです。
開選手はきれいにメイク(トリック成功)していましたし、エアーもしっかりと飛び切っていました。難易度の高い1個1個のトリックをしっかりとまとめたところはさすがです。12歳で迎えた3年前の東京五輪から身長も20センチほど伸びて、どんどんかっこよさが増しています。まだ15歳ですし、今後のさらなる成長に期待です。
ハイレベルな中にも温かさを感じた空気感
決勝で8位に終わった草木だが、「勝つなら金メダル」の姿勢で果敢に高難易度の技に挑戦した 【写真は共同】
決勝ではいきなりドラ・バレラ選手(ブラジル)が85.06を出しましたし、最終的にメダルを獲得するには92.31を上回る高得点を出さなければなりませんでした。強敵ぞろいの試合で草木選手がメダルを獲得するには、ベストを出すしかないので全力で滑っていましたね。予選の滑りにサランラップ360とキックフリップ・インディーを加えられれば、十分にメダルは狙える得点でした。
予選敗退となった前回王者の四十住は決勝進出を逃したものの、自身のスケーティングを貫いた 【写真は共同】
予選後のインタビューでも80点台を出せなかった悔しさに涙を浮かべている様子でした。その中で私が感動したのは、「決勝には行きたいけれど、他の選手がミスするのを願いたくはない」と発言していたことです。とても四十住選手らしさが出ていて素晴らしいなと感じました。各選手がいい滑りをしたらお互いに讃え合う姿も印象的でしたし、それがスケートボードの良いところです。特に女子のパークは、会場全体がスケーターへのリスペクトに溢れた温かい雰囲気でしたよね。