堀米雄斗の起死回生連覇に荒畑潤一もうなる “愛されスケーター”がストリートの伝説に

田中凌平

大逆転となるトリックを決めて雄叫びを上げる堀米。五輪連覇という偉業を成し遂げた 【写真は共同】

 7月29日(日本時間30日)に行われたパリ五輪・スケートボード男子ストリートに、堀米雄斗(三井住友DSアセットマネジメント)、白井空良(ムラサキスポーツ)、小野寺吟雲が出場した。高レベルの戦いを制した堀米が金メダルを獲得し、東京五輪に続く連覇を達成。メダル独占が期待された日本勢だったが、白井は4位、世界ランク1位で14歳の小野寺はまさかの予選落ちとなった。

 白井は3位、堀米は4位で予選を通過するが、ジャガー・イートン(米国)とナイジャ・ヒューストン(米国)の得点をなかなか超えることができなかった。堀米は最後のベストトリックで96.98を超えないと連覇の可能性が閉ざされる中、この日最高得点の97.08を叩き出し、大逆転優勝を飾った。

 五輪連覇を目指す堀米、東京五輪の雪辱を果たしたい白井、世界ランク1位の重圧を背負う小野寺――それぞれが異なる想いで挑んだパリ五輪。その想いは滑りにどのように表れたのだろうか。18歳で全日本チャンピオン(AJSA)を獲得し、日本スケートボードシーンを牽引してきたパイオニアの荒畑潤一さんに白熱の試合を振り返ってもらいつつ、堀米の魅力について解説してもらった。

後がない場面で完璧に決める堀米の“強さ”

ジャガー・イートン(左)、ナイジャ・ヒューストン(右)の出来が良かっただけに、堀米の金メダルはとてつもない価値を持つ 【Photo by Cameron Spencer/Getty Images】

 男子ストリート決勝は、伝説的なドラマが生まれたとてつもなくレベルの高い一戦でした。堀米選手は、予選では着実に確実に勝ち上がり、決勝で魅せていく戦略だったのではと感じました。その結果、堀米選手の最後のトリックがすべてを決定づける一発となりましたね。堀米選手でも相当決めるのが難しい「ノーリーバックサイド270テールブラントスライド」を、この上ないくらいキレイに決めたことに衝撃を受けました。「メダルを獲るにはこの技を決めるしかない」という状況だったので、最後の1回で完璧に決められるのが堀米選手の“強さ”です。

 最後のトリックに至るまでを見ても、決勝の1本目のトリックも素晴らしい出来でした。堀米選手があまり大会で出したことのない「ノーリーバックサイド180フェイキー5-0グラインド」でしたが、動きも着地も完璧でした。ランでも1本目に89.90を出しましたし、ベストトリックの1本目も94.16でメイクしたので、これがラストにつながるいい流れを生みましたね。

 それまで上位にいたアメリカのイートン選手と堀米選手の差は、ほんのわずかでした。もしイートン選手のベストトリックの4本目がキレイにメイクしていたら結果は違っていたかもしれません。これを成功させる人は初めてというくらいのトリックでした。

 3位になったヒューストン選手は、「勝ちにいく滑りをしている」「攻めていない」などと悪く言われたり、洋服を批判されたりすることもありました。それでも気合いを感じるかっこいい滑りをするので、私は1人のスケーターとして心を打たれましたね。他にもコルダノ・ラッセル選手(カナダ)の圧巻のベストトリックなど、堀米選手の最後のトリック以外にも興奮と感動が止まらない最高峰の試合でした。

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著者プロフィール

東京都出身。フリーライター。ラグジュアリーブランドでの5年間の接客経験と英語力を活かし、数多くの著名人や海外アスリートに取材を行う。野球とゴルフを中心にスポーツ領域を幅広く対応。明治大学在学中にはプロゴルフトーナメントの運営に携わり、海外の有名選手もサポートしてきた。野球では国内のみならず、MLBの注目選手を観るために現地へ赴くことも。大学の短期留学中に教授からの指示を守らず、ヤンキー・スタジアムにイチローを観に行って怒られたのはいい思い出。

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