寺地拳四朗の参戦でフライ級のタイトル争いが熱を帯びる 熱戦必至のスーパーフライ級にも注目【8月のボクシング注目試合①】

船橋真二郎

フライ級で世界見据え、飯村と畑中が防衛戦

左から佐藤直樹トレーナー、飯村樹輝弥と妻・真成美さん 【写真:ボクシング・ビート】

 飯村(26歳、6勝2KO1敗)は16日、後楽園ホールで開催される「WHO'S NEXT DYNAMIC GLOVE on U-NEXT」のセミファイナルで日本フライ級4位の見村徹弥(千里馬神戸/28歳、12勝2KO4敗)を挑戦者に迎える。

「防衛するごとにプロの水に慣れてきた」と言うように、今年4月の2度目の防衛戦は好戦的なファイターの井上夕雅(真正)に9回TKO勝ち。1位挑戦者との熱戦を劇的なダウンでフィニッシュし、デビュー戦以来のTKO勝ちを飾った。

 小学5年の終わり頃からボクシングを始め、高校時代は選抜3位、主将も務めた日大では国体準優勝の成績を残した。サイド、前後とステップを駆使し、多彩な角度からのコンビネーション、カウンターを決める。5戦目でアマ時代からのライバル、永田丈晶(協栄)との接戦に競り勝ち、ベルトを巻いた。唯一の負けはケガを押して強行出場したエスネス・ドミンゴ(比)戦で喫したもの。

 神戸を中心にキャリアを重ねる見村はキャリア初のタイトル挑戦。これが全日本新人王決定戦で敗れて以来、約6年ぶりの後楽園ホールになる。飯村が防衛戦で退けてきた村上勝也(名古屋大橋)、井上、またオラスクアガに屈した加納に敗れている。170cmの長身でリーチを利した左ジャブ、右ストレートを軸に戦う。

 飯村の現在の世界ランクはWBA11位のみ。「世界を狙えるようなボクシングを見せて、WBA以外にも売り込める勝ち方をしたい」。試合と同時期に花咲徳栄高、平成国際大でアマチュアのリングに立った愛妻・真成美さんが第1子の出産を控え、さらに上へと意気込む。試合は「U-NEXT」でライブ配信される。

史上初の親子世界王者を目指す畑中建人 【写真:ボクシング・ビート】

 畑中(26歳、15勝10KO無敗)は12日、名古屋国際会議場でWBC8位、WBA15位の世界ランカー、タナンチャイ・チャルンパック(タイ/24歳、24勝15KO1敗)と初防衛戦を行う。

 昨年9月、当時全勝のサウスポー、宝珠山晃(三迫)との王座決定戦でフルラウンドの激闘を繰り広げ、小差の判定をものにしたが、顔を大きく腫らすなど、ダメージが大きく、「この内容ではまだまだ世界とは言えない。一歩ずつ階段を上がっていきたい」と出直しを誓っていた。

 中部のジムから初の世界王者となった畑中清詞会長を父に持つ。中学2年のときにグローブを握り、岐阜・中京高でアマキャリアを積んだ。高校1年時の国体3位が最高成績。デビュー戦は父と同じ高校3年の、同じ11月27日に、同じく1ラウンドで試合を終わらせた。現在はIBF13位、WBO14位にランクされ、日本では史上初となる親子世界王者に期待がかかる。

 タナンチャイとは今年2月に対戦予定だったが、畑中のケガで仕切り直しになった経緯がある。打ち下ろすような右ストレート、左ボディがタナンチャイの攻撃の軸。畑中はもともと気が強く、正面で打ち合うのが悪いクセだった。いかに被弾を抑えられるか。世界ランカー対決であり、結果はもちろん大事だが、世界を目指すには内容こそが問われる一戦だろう。

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著者プロフィール

1973年生まれ。東京都出身。『ボクシング・ビート』(フィットネススポーツ)、『ボクシング・マガジン』(ベースボールマガジン社=2022年7月休刊)など、ボクシングを取材し、執筆。文藝春秋Number第13回スポーツノンフィクション新人賞最終候補(2005年)。東日本ボクシング協会が選出する月間賞の選考委員も務める。

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