<国内男子ゴルフ>自身初の年間2勝を達成した岩田寛が自分のことより気にかけたこと
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賞金レースと賞金シード争い「第43回 カシオワールドオープン」
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6月のJGTO主催「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」以来の今季2勝目を通算7勝目で飾った。
1打リードの単独首位でプレーを終え、プレーオフに備えていた練習グリーンで朗報を知った途端の逃げ足は速かった。
ペットボトルの水を手に、向かってくる若い選手たちの姿を見つけるなり猛ダッシュ。
全力で駆け回り、恒例の水シャワーを回避。
「風邪をひくのが嫌だから」。
若い子たちをさっそうと振り切った43歳は遠くでバンザイ。この日一番ニヤニヤした。
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バーディの獲りあいでは攻めあぐねてしまうが、今年は特に土・日に風が吹き、日曜日はグリーンの速度が格段に増した。
岩田も前半9ホールはバーディ、ボギーを2つずつ。伸ばせないままターンをしたが、13番の速報ボードは「上が意外と伸びていない」。
確認した途端に、136ヤードの2打目を9アイアンで1メートルにつけバーディ。
15、16番共にピンそばのチャンスにつけ今週初の首位を奪うと17番で3メートルのフックラインをセーブし、1打リードで迎えた18番パー5は、最後下りの1.5メートルこそ逃したが、「右ならどこでもいい。ティショットで絶対に左に打たないように」。
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今年6月のJGTO主催「BMW 日本ゴルフツアー選手権 森ビルカップ」で通算6勝目を飾ったが9月、10月の7大会は、なぜか全滅(棄権2)。
「いろいろあって、思い出したくないです。部屋から出たくないし、誰とも話したくない。年に1回あるんですけど、ゴルフが上手くいかないと陰(いん)になっちゃう」と、引きこもりがちになったが、底を極めた日米共催「ZOZOチャンピオンシップ」でやっと開放。
「一番下まで行ったので。これ以上はやばいかな、と」。
終盤に、再起動するなり一気に今季2勝目を達成。
プロ20年目にして年間2勝は初めてだ。
「今までしたことがなかったので、嬉しいです」と、とつとつと述べた。
これで賞金ランクは前週の12位から5位に浮上。
次週のシーズン最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」で初の賞金王へ、可能性を残すことができたがしばし熟考…。
「それは…明日考えます。今は余韻に浸らせてください」と、いつもみたいにけむに巻いた。
むしろ自分のことより、1差で初優勝を逃した清水大成(しみず・たいせい)の涙を気にかけた。
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勝者を祝福しようと18番グリーンで待ち構えていた若い選手たちには、「ついででしょ?」と言った。
確かに、中には清水を出迎えに来た者たちもいただろう。
「僕を応援してくれる人はあまりいないだろう、といつも思いながら試合をしてるんですけど。それでも、僕を応援してくれる人がいます。感謝しています」と、精いっぱいの謝礼を述べた。
口下手だけど、1語1語に心がこもる。
26季守ったシード権を失い涙を流した56歳の谷口徹(たにぐち・とおる)は来季、1年シードの生涯獲得賞金25位内の資格を使うか迷っているが、「使うと思いますよ、たぶん。僕が使わせます。いないといないで寂しいので」。
さりげないセリフにベテランへの敬愛がこもる。
賞金シードのかかった今週は、他にも当落線上で格闘する昔なじみの選手たちの名前を挙げ「ずっと(結果を)気にしてました」と、思いを寄せる。
翌月曜日に、食事の約束をしていた20年来の友人は、「あしたヒロシが勝つと思う」と、昨晩の電話で断言してくれたそうだ。
「ずっと応援してくれる友人なので。信じてました。その言葉でリラックスしてプレーすることができた」。
あすの食事会は祝勝会だ。
大会会長が表彰式のごあいさつで、岩田のコメントを受け取る形で、「私たちも岩田選手を応援していますよ」と、祝辞を述べられていた。
独特のヒロシワールドは、主催者さんたちの心さえ揺さぶる。
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