イタリアに大逆転負けで準々決勝敗退のバレー男子 「決め切れなかった」石川に、それでも感謝する仲間たち

大島和人

まだ手に入れられていない「本当の強さ」

高橋藍はブラン監督に見出され、影響を受けた選手 【写真は共同】

 いい試合をすることと「勝つ」ことは同じようで違う。勝負どころで決められる、大一番ほど結果が出る、内容が悪くても勝てる――。それが分かりやすい「強いチーム」の特徴だ。

 日本男子も五輪直前に開催されたバレーボールネーションズリーグ(VNL)は準優勝を飾っており、それなりに強いチームであることも間違いないのだが……。とはいえオリンピックは4年に一度で重みも違う大会だ。

 準々決勝は「負けたら終わり」「勝てばあと2試合が保証される」という重要な節目だった。そんな試合のもっとも得点が必要な場面で奪えず、絶対的に有利な状況から逆転を許したのだから、日本にはまだ「本当の強さ」がないのだろう。

 選手たちには記者から「勝ち切れなかった理由」「本当に強いチームとなるために必要なこと」を問う質問が飛んでいた。ただし、どの選手も答えを言いあぐねていた。そもそも簡単に答えが見つかる問いでないはずだ。

 高橋藍はこう述べる。

「(オリンピックは)他の大会に比べると、相手チームの気持ちの強さが違います。今日もそうですけど、ラスト1点を普段だったら取れている部分もあったのかなと思います。相手はその1点取られないために、死に物狂いやってくるのがオリンピック。勝ち切る難しさはあったのかなと思います」

夢を見せてくれた日本バレー

チームの活動がここで終わるのは残念だ 【写真は共同】

 パリ五輪の準々決勝敗退という結果は、2021年の東京五輪と同じだ。しかしブラジルにストレートで敗れた前回大会と違い、日本は強豪・イタリアをマッチポイントまで追い込んだ。一時は世界レベルから取り残され、自力での五輪出場も16年ぶりだった日本が、本気でメダルや優勝を狙えるレベルに到達していた。そこは明確な収穫だ。

「狙えるレベル」に来ていたからこそ、イタリア戦の逆転負けは悔やまれる。コーチ時代も含めて日本を7年間かけて引き上げたブラン監督は、この五輪限りでの退任が決まっている。石川が28歳、高橋は22歳と次がある年齢とはいえ、千載一遇の好機を逃した現実は認めざるをえない。

 だとしても彼らがイタリアを相手に素晴らしいプレーを見せた、ファンやメディアに「夢を見せて」くれたことも事実だ。

 テレビ中継でこの試合を見届けたファンには「モヤモヤ」が残っただろう。しかし日本がイタリアに負けて悔しがれるレベルに到達したことは、ブラン監督や石川がチームを引き上げてきた成果だ。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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