パリ五輪に臨むFW佐藤恵允、磨いた個の打開力と“他者とのつながり”

安藤隆人

“明治発世界へ”を体現できたら

「偉大な先輩たちのように、“明治発世界へ”を体現できたらと」と語る 【写真は共同】

 この姿勢が大岩監督の信頼をさらに深めた。だからこそ、ブレーメンに加入してからドイツ5部でのプレーが続いても、大岩監督は佐藤を呼び続け、4月開幕のパリ五輪アジア最終予選となるAFC U-23アジアカップ(カタール)では10番を託した。

 初戦の中国戦で公判途中から左ワイドに入り、数的不利のチームにおいて球際の激しい守備と、運ぶドリブルで苦しむチームを助けた。それ以降は第2戦のUAE戦、準々決勝のカタール戦、決勝のウズベキスタン戦に左ウイングでスタメン出場を果たし、かつ全6試合すべてに出場。ゴールこそ生まれなかったが、「球際、切り替え、運動量」をベースに周りとリンクしながら、攻守においてチームのためにストロングポイントを出し続けた。

 そして、7月3日発表されたパリ五輪に臨む18人の中に選ばれた。昨年、ドイツに飛び立つ前に彼はこう口にしていた。

「もっと世界で通用する選手になりたいし、パリ五輪はもちろん、その先の2026年のワールドカップも目指しているので、そのために今何をすべきか常に考えています。長友佑都さんなどの偉大な先輩たちのように、“明治発世界へ”を体現できたらと思います」

 まっすぐに未来と、時間を共にする仲間を見つめて。パリでは真夏の炎天下で中2日の連戦という過密日程で、しかもメンバーが通常の国際大会より少ない中で行われる。

 チームとしての底力が問われる戦いとなるからこそ、佐藤恵允が積み上げ、さらにドイツで1年をかけて磨いた個の打開力と、自分のことを知らない周りと培ってきた“他者とのつながり”の力が必要不可欠となる。自覚と覚悟を持って。真価を発揮する最高の舞台がいよいよやってくる。

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著者プロフィール

1978年2月9日生まれ、岐阜県出身。5年半勤めていた銀行を辞め単身上京してフリーの道へ。高校、大学、Jリーグ、日本代表、海外サッカーと幅広く取材し、これまで取材で訪問した国は35を超える。2013年5月から2014年5月まで週刊少年ジャンプで『蹴ジャン!』を1年連載。2015年12月からNumberWebで『ユース教授のサッカージャーナル』を連載中。他多数媒体に寄稿し、全国の高校、大学で年10回近くの講演活動も行っている。本の著作・共同制作は12作、代表作は『走り続ける才能たち』(実業之日本社)、『15歳』、『そして歩き出す サッカーと白血病と僕の日常』、『ムサシと武蔵』、『ドーハの歓喜』(4作とも徳間書店)。東海学生サッカーリーグ2部の名城大学体育会蹴球部フットボールダイレクター

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