課題を残しつつ大一番に勝利したバレー男子代表 スロベニア戦で感じた「52年ぶりメダル」への期待

大島和人

「課題」が収穫に

石川の状態はこれから上がっていくだろう 【(C)FIVB】

 日本代表にとって、ネーションズリーグは「調整」「選考」「結果」の3つを求められる大会だ。ブラジル、日本、フィリピンと長距離移動の伴う連戦が続くなかで、選手に負荷をかけすぎることは禁物だ。相手との力関係や、世界ランキングへのインパクトに応じて、起用を工夫する必要がある。

 また五輪本大会は登録が12名で、ネーションズリーグより2人少ない。大会を通じて石川、高橋に次ぐアウトサイドヒッターの選考や、リベロに山本智大、小川智大、のどちらを入れるかといった焦点があり、評価を下すためには実戦で試す必要がある。

 そのような中で日本はスロベニアに勝ち、12試合中8試合を終えて5位につけている。世界ランキングも3位に浮上した。「伸びしろを残しつつ、必要な結果を残す」という、理想的なプロセスだ。

 石川は課題に対してポジティブな受け止めをしていた。

「完成度の部分ではまだまだ足りないところが見られましたが、ここで課題を色々発見できたことは大きな収穫だと思います。課題がたくさんある中でも勝てたことで、課題を詰めていけばもっと楽に勝てる試合が増える、強豪にも安定して勝てるようになるイメージができました」

「52年ぶり」のメダルに向けて

高橋藍はサントリーサンバーズ大阪と契約し、五輪後は新生SVリーグでプレーする 【(C)FIVB】

 日本の男子バレーは、金メダルを獲得した1972年のミュンヘン大会を最後に、メダルから遠ざかっている。そもそも1996年のアトランタ大会、2000年のシドニー大会、2004年のアテネ大会、2012年のロンドン大会、2016年のリオデジャネイロ大会と5度も予選で敗れていた。

 そんな日本が「黄金時代」に入りつつある。ブラン監督のもとには28歳の石川、24歳の西田、22歳の高橋と素晴らしい才能が揃った。石川、高橋に限らず海外クラブでプレーした経験を持つ選手も増えている。

 勝負の世界では、自信や手応えを得られないチームほど目先の結果に一喜一憂をしたり、実現困難な大言壮語をしがちだが、彼らにはそれがない。コート上のパフォーマンスだけでなく、選手の地に足のついた様子と冷静なコメントに「本当に強いチーム」の気配が漂っていた。

 チームは課題という「伸びしろ」を残しつつ、勝つべき試合を勝ち切った。パリ五輪本番でもライバルとなり得る強敵・スロベニアを退け、自信を得た。52年ぶりのメダルは、もう少しで手の届くところにある。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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