MLBポストシーズンレポート2024

記者席にも届いた大谷の雄叫びと凄まじい気合 8投手による完封で「感謝の最終戦」へ【地区シリーズ第4戦】

丹羽政善

10月9日に行われたドジャースとパドレスによる地区シリーズ第4戦、二回に2点目のタイムリーヒットを放ち、雄叫びをあげる大谷翔平 【Photo by Sean M. Haffey/Getty Images】

 ドジャースは試合前にチームミーティングを行った。

 後のない戦い。シーズンを最高勝率で駆け抜けた実績も、あと1敗すれば無となる。負ければ、3年連続地区シリーズ敗退という屈辱。負傷者が多かった、という言い訳は、なんの慰めにもならない。

 デイブ・ロバーツ監督は、士気を高めるためにどんなスピーチを行ったのか。ケガで出場できなかったフレディ・フリーマンや、ミゲル・ロハスもみんなの前に立ったのか。大谷翔平はWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)決勝の試合前、「あこがれるのはやめましょう」とチームメートに声を掛けた。大谷も思いを口にしたのか?

 ただ、ある選手が教えてくれた。

「いや、そんなミーティングではなかった。みんな、いろんな面白いことをして、それは言葉では表現ができないけど、あんなに腹がよじれるほど笑ったことはなかった」

 集中力を高めるというより、リラックスすることが目的だった?

「そうだね。みんな、集中していた。でも、あまりにもしすぎると、硬くなってしまう。腹を抱えて笑って、力が抜けた。少なくとも自分はそうだった」

8投手によるドジャースの完封リレー

第4戦でドジャースの先発を務めたライアン・ブレイシア。後がない試合を託された37歳のベテラン右腕は、1.1回を投げ、被安打、与四球ともに0。無失点で2番手のアンソニー・バンダに繋いだ 【Photo by Harry How/Getty Images】

 それは、効果があったのだろう。ドジャースは序盤で勝負を決めた。

 初回、ムーキー・ベッツが、前日の試合に続いて先制本塁打を放つと、3回までに5対0とリードを広げ、8人の投手が1点も許さなかった。リラックスしたことで、逆に集中力が高まったか。

 大谷の気合いの入り方も凄まじかった。

 初回、足跡ひとつないバッターボックスに足を踏み入れると、初球、ディラン・シースの投じた100マイルの真っ直ぐをフルスイング。空振りだったが、それだけで球場がどよめいた。

 翌二回、下位打線がつながって、大谷に2死一、三塁で打席が回ってきた。

 ドジャースの課題は、下位打線。負けた2試合は全く機能せず、大谷は一度も得点圏で打席に立てなかった。大谷が得点圏で打席に立ったのは、第1戦の八回、1死一塁で打席に入り、一塁走者の盗塁で1死二塁となったとき以来だったが、大谷は久々に訪れたチャンスを逃さなかった。

 昨日までの13試合で、大谷は得点圏で17打数11安打、6本塁打。相手はまともに勝負するのか?――そんなことを考えるもなく、初球、高めに浮いた外角のバックドアスイーパーを捉えると、打球は一瞬で一、二塁間を抜けていった。

 貴重な2点目をたたき出し、ちょうどパドレスファンが静まり返ったタイミングでほえた大谷の声は、ネット裏の記者席にも届くほどだった。

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著者プロフィール

1967年、愛知県生まれ。立教大学経済学部卒業。出版社に勤務の後、95年秋に渡米。インディアナ州立大学スポーツマネージメント学部卒業。シアトルに居を構え、MLB、NBAなど現地のスポーツを精力的に取材し、コラムや記事の配信を行う。3月24日、日本経済新聞出版社より、「イチロー・フィールド」(野球を超えた人生哲学)を上梓する。

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