宇野昌磨が歩んだ、理想のスケーターに近づく道程 2016年「ボストンの涙」から、2024年「モントリオールの笑顔」へ

沢田聡子

「全力で取り組めるというのは、すごく貴重なこと」

プロスケーターとしても「全力を出したい」と語った宇野 【写真:長田洋平/アフロスポーツ】

 宇野は、プロスケーターとしても「楽しさ」を大切にしていくという。

「毎日の練習が楽しくなるような、自分が心から踊るようなスケートをしていきたいなと思っていて。競技から離れるので、自由にフィギュアスケートをやれるかなと。やるもやらないも自由だし、ジャンプを跳ぶ、スピンをやる、何をやるにしても自分で選べるというものなので、本当に自分の生き方にすごくマッチしているかなと思うので、すごく楽しみだなと」

 現役引退を決め、最後の試合となった世界選手権を終えてからは「自由度の高いスケートの練習、日々を送れている」と語る。

「今後演じていきたいスケートに関しては、やっぱりまずは自分が全力を出したい。そして『日々楽しい』と思えるプログラムを創って、自分の感情が前のめりに出てくるようなプログラムを、まずは皆さんにお披露目できたらなと思っています。その先に、『やらなきゃ』ではなく『やりたい』という気持ちから現れる素晴らしいプログラムが今後創れるんじゃないかなって、今わくわくしています」

 終始柔らかな表情だった引退会見で、宇野が最後に語ったのは「全力」で臨むことの尊さだった。

「自分が本当にすべての時間をぶつけられる場所があるというのは、すごく大事なことだなと思っていて。どんなに落ち込んでいても、自分の心を無にして全力で取り組めるというのは、すごく貴重なことなんだなと。それによって疲れるときもあるかもしれませんけれども、ただひたむきに向き合ってきた時間というのは、今後自分の財産になると思いますし。今後ともこの経験は、自分の人生に生かせる部分じゃないかな」

 いつも全力でスケートに取り組んだ21年間で得た“楽しさ”を、これからの宇野はプロスケーターとして表現していく。

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著者プロフィール

1972年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、出版社に勤めながら、97年にライターとして活動を始める。2004年からフリー。主に採点競技(アーティスティックスイミング等)やアイスホッケーを取材して雑誌やウェブに寄稿、現在に至る。

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