ベンドラメ礼生が語る社会貢献と選手会活動 被災地支援を「自己満足」にしないための考えとは?

大島和人

社会貢献活動についても熱心なベンドラメ礼生がインタビューに応じてくれた 【(C)B.LEAGUE】

 日本のバスケットボール界には、チャリティ活動に対して積極的なカルチャーがある。B.LEAGUEはB.Hopeの枠組みを介した被災地復興支援活動や、防災を目的とした「そなえてバスケ supported by 日本郵便」のような取り組みを行っている。

 日本バスケットボール選手会も東日本大震災や熊本地震後の被災地訪問など、様々な活動を続けてきた。ベンドラメ選手は現在30歳で、サンロッカーズ渋谷所属。東京オリンピックにも出場したB.LEAGUEを代表するポイントガードの一人だ。

 ベンドラメ選手は選手会の副会長も務めていて、社会貢献活動についても「想い」と「言葉」を持っている。今回は彼に選手会の議論、チャリティ活動についての考えを語ってもらっている。
――B.LEAGUEは「B.Hope」の枠組みで様々な社会貢献活動をしています。ベンドラメ選手も復興支援などに関わったことがあると聞いていますが、ご自身の経験についてお聞かせください。

 選手会で岩手県の陸前高田に行きました。被災地を見て、そこでクリニックを行った経験があります。竹内譲次さんとか、岡田(優介)さんや、田口(成浩)さんなど、選手20人くらいで行きました。

 僕たちが岩手県に行ったのは東日本大震災から8年が経過し、復興が始まってはいるけれど「完璧に復興はしていない」タイミングでした。電気や水道は通っていましたが、大きなイベントが開かれることは、なかなかなかったと思います。そういった中で子どもたちにバスケットボールを教えながら、笑って楽しい時間を過ごしました。みんなにとって一生の思い出にもなるだろうと感じましたし、目をキラキラさせている子どもがすごく多かった記憶があります。

2019年6月に陸前高田で実施したクリニック活動の様子 【(C)B.LEAGUE】

――率直にどんなことを感じましたか?

 津波の被害を受ける前と後の写真を見比べると、すべてが消えて、まったく何もないような状態になっている場所がありました。テレビ越しに見て「大きな被害だな」というのは感じていましたが、実際その場所に行くとテレビとはレベルの違う驚き、衝撃がありました。

 でも現場の雰囲気に暗い印象はなくて、むしろ明るかったです。大変なはずなのに、元気よく過ごしている子どもたちを見ることで、僕たちが元気づけられる瞬間もありましたね。現地の状況を知る、そして現地で感じて周りに広める発信もプロ選手のできることだし、そこもすごく大事かなと改めて思います。

活動実施にあたり、被災状況や地域を知る見学を行う選手たち 【(C)B.LEAGUE】

――先ほど仰っていた「プロバスケットボール選手だからできること」は、今回のインタビューのテーマとして、ぜひお聞きしたいと思っていた部分です。そこを改めて、ベンドラメ選手の言葉でお話しいただけますか?

 子どもたちを笑顔にする、みんなに夢を与えることが僕たちの仕事です。クリニックや選手との触れ合いで、「プロバスケットボール選手になりたい」「目指したい」という気持ちが生まれれば、そこから生活が変わる、ポジティブになるきっかけになると期待できます。「夢ができた」とか、そういったこと言ってもらえるとすごく嬉しいですし、それもプロの価値の一つだと思います。

――能登半島地震が今年の1月1日に発生しました。ベンドラメ選手は選手会の副会長でもありますが、シーズンオフの支援活動についてどのような考えをお持ちですか?

 先ほど陸前高田について話をしましたが、災害から数年が経って、まだ復興が完全にできていない地域が日本にはたくさんあります。能登半島に対する支援はもちろん大事ですが、これだけB.LEAGUEの選手がいるので、5人ずつとかでも各地に行って、そこでイベントをすることはできます。色んなところに選手が足を運んで、色んなところで幸せな空間を作れたら良いなというのは思いますね。日本をバスケットボールで盛り上げる意味でも、そういったアプローチはあると考えています。

――選手会はこのような支援活動、チャリティに限らず、かなりの頻度で幹部の方が話し合っていると聞いています。

 オフシーズンに向けてもそうですし、新しいB.PREMIERに向けても色々と話し合うこともあります。全体のミーティングが終わった後も、田渡(凌・会長)や僕たち副会長で「今日の話し合いはどうだった?」「次、どうしたら良いかな?」とか、そういう話をしています。

 選手会で話し合っていることはなかなか表に出づらくて。議論の熱量が伝わりにくいなとも感じています。田渡とも「どうやったら、この俺たちの話し合いの熱量がみんなに伝わるのかな?」とよく話しています。

 あと選手全員に当事者意識を持って、プロ選手、B.LEAGUE選手として、できることを考えてほしいなとすごく思います。

 オフシーズンの活動についても、これからもっと深く話しますが、去年は様々な地方に選手が行って、クリニックを実施しました。それをもっと広げるのか、もっと大きなイベントにするのか、そこはまだ分からないですけど、それは僕たちができることだと考えています。

――昨シーズンは何ヶ所でイベントを開催したのですか?

 6ヶ所へ行きました。公募して、そこからいくつか選んで行きました。このような社会貢献活動や復興支援活動は、こちら側の自己満足で終わってしまいがちです。現地の人たちはそれぞれに思うことがあって、「今は来て欲しくない」というタイミングもあるはずです。選手会でも「求められているところに行くべきではないか」というアイディアが出て、一昨年から公募企画を実施しました。

オフシーズンのクリニック活動に参加するベンドラメ選手 【(C)B.LEAGUE】

――確かに支援が押し付け、自分たちだけが満足するだけで終わったらダメですね。

 もちろん足を運んでイベントを開催したら、笑顔になってくれる人はいます。でも大変な状態が続いている地域に、僕たちが宿泊するのはどうだろう? 出てくるご飯を俺たちが食べるのはどうだろう?となるケースもあるでしょう。だから「求められる場所に行く」ことは一つ、大事だと思います。

――能登半島への被災地支援にも関わる部分ですね。

 もちろん、支援したい気持ちはすごく大事です。それがしっかり愛情を持った内容だったら、より良いかなと思います。愛情なく、自己満足で動いてしまうと、それは迷惑となってしまう場合もあるので、難しいところです。

 能登半島も被害の大きい被災地域では、正直まだ現地でバスケットボールができる状況ではないと僕は考えています。一方で子どもだけ県外の中学校に行っている家族がいると聞いていますし、未来を作っていく子どもたちにはぜひ力を与えたい。現地に行くことも大事ですが、親元を離れて生活している子どもたちのために、何かやりたいなというのが僕の個人的な意見です。


 プロスポーツ、選手の社会貢献活動に「自分たちのイメージアップ」という狙いがあっても、それが悪いわけではない。どんな目的でも結果的に支援を受けた人が笑顔になる、幸せになるなら、それは「有り」だろう。

 ただベンドラメ選手の言葉からは社会貢献、被災地支援を突き詰めた「本気度」が伝わってきた。彼に悩みがあったとしてもそれは決して後ろ向きなものではなく、「自分たちの持つ力を有効活用するための最善の方法は何か」という前向きな試行錯誤だ。

 被災地の復興支援、社会貢献活動はもちろん「良い活動」だが、対象への愛情を持ち、相手の負担にならないような気遣いも大切だ。そんな考えの深さ、優しさを持つのがベンドラメ礼生という人間なのだろう。それはおそらくプロバスケットボール選手に限らず、人を助けようとする人間が持つべき大切な原則だ。

 彼のコメントからは日本バスケットボール選手会が持つ「熱」も伝わってきた。日本のバスケットボール、B.LEAGUEが「B.革新」として進化しても、選手たちからこういう純粋さは消えないで欲しい。

「そなえてバスケ supported by 日本郵便」クラブ対抗「そなえてバスケ杯」表彰式

B1優勝:千葉ジェッツ

【(C)B.LEAGUE】

B2優勝:福島ファイヤーボンズ

【(C)B.LEAGUE】

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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