最大の決戦は開催国カタールと 大岩ジャパンは重圧を乗り越え、「23対23」で勝つ
決戦へ。大岩監督は「11対11だけでなく、23対23で勝つ」と位置付けた 【AFC】
準々決勝は大会のクライマックス
4月25日から4強を懸けての準々決勝は、五輪のアジア枠が「3.5」であることを思えば、最大の決戦の一つである。ここを勝ちさえすれば、アフリカ4位(ギニア)との大陸間プレーオフを含め、五輪切符への挑戦権「3回」が約束されるからだ。
カタールを率いるイリディオ・ヴァーレ監督は、今大会について「オリンピック出場権獲得が目的の舞台であり、それが通常のアジアカップとは異なっている」とした上で、「そのためにこの試合が重要になる」と強調した。だからこそ、この準々決勝は「クライマックス」と位置付けられるわけだ。
ヴァーレ監督はまた日本についてはこう評した。
「日本代表はアジアで最も強いチームの一つだ。だからこそ私たちは、日本の強さについて、個人的な力であれ、集団としての力であれ、よく知っている」
日本チームを侮るような質問も飛んでくる会見だったが、ヴァーレ監督は「繰り返しになるが」と言いつつ、「日本は強い」ことを強調。カタールがA代表のアジアカップを制したチームであることも「関係ない」としてカタールメディアに釘を差しつつ、この日本戦へ全力を傾注する旨をあらためて表明していた。
カタールはオーストラリアとのグループステージ最終節で主力を温存して戦っており(結果は0-0の引き分け)、この日本戦へ向けて体調面も万全。ヴァーレ監督は負傷していたA代表FWアフメド・アルラウィの復帰も示唆しており、戦力的にも整えてきている。
とはいえ、今大会のカタールの試合内容を冷静に見てみれば、そこまで突き抜けた力を見せてきたわけではない。「スタジアムの大観衆」「完全アウェイ」などといった煽り文句もよく見るが、そこまで強い熱狂があるわけでもない。大岩監督が「いっぱい来ていただいているし、本当に心強い」と語る日本のサポーターの存在だってあるわけで(その時点で「完全」ではない!)、過度に恐れる必要はないように思う。
「『完全アウェイ』と皆さんおっしゃいますが、我々にはコントロールができない部分なので、試合にしっかり集中したい」と言う大岩監督のスタンスは妥当なものだろう。
まず、この一戦のために
公式記者会見で受け答えする大岩監督(左)と藤田主将 【AFC】
グループステージ最終節となった日韓戦は互いに戦力を温存して臨む中で、0-1の敗戦。当然、控えメンバー主体でも勝てるという算段あっての勝負だったが、勝敗以前にこの試合で燃え尽きることなく「クライマックス」の準々決勝を迎える狙いがあった。
その点から言えば、まず「体力はまったく問題ない」と語るような選手をズラリと揃えられたのは確かだろう。スタメンは日韓戦のベンチメンバー主体、つまり10人近くを入れ替えて臨むのではと予想する。大岩監督が考える、現状のベストをぶつける形だ。
またベンチに回る選手も第3GKの山田大樹(鹿島)を除く全員が大会の「出場経験者」。通常、こうした大一番で投入するのは博打になってしまうが、今回そうしたリスクはない。大岩監督が「ゲームチェンジャー」と呼称する交代選手として、問題なく投入できるのもチームの強みとなる。
今大会のカタールはカウンターを狙う展開に持ち込む傾向があり、日本がボールを支配する時間が長くなる予想もあるが、MF松木玖生(FC東京)は「早めに先制点を奪ってしまいたい」と位置付ける。
究極の理想は昨年のアジア競技大会の初戦で対戦したときのように、開始早々に先制点を奪って完全に試合の流れを持ってくること。もちろん、そう都合良くいかないのは百も承知だが、立ち上がりから攻守に消極的なプレーが続いてしまった日韓戦の二の舞だけは厳に避けたいところだ。
「想定外のことは起こり得る」と指揮官が言うように、カタールの出方や変化を含めてイレギュラーな事態は起こるモノ。その中でのベンチワーク含めた対応力もあらためて問われることになりそうだ。