最大の決戦は開催国カタールと 大岩ジャパンは重圧を乗り越え、「23対23」で勝つ

川端暁彦

乗り越えるべき代表の重圧

「プレッシャーはない」と言い切る松木(左)。ゴールに期待がかかる 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

「日本代表のアジア予選」というシチュエーションが生み出す精神的な重圧は、やはり特別なものがある。

「負けたら終わり」。そんな言葉一つでも、各選手がプレッシャーを強く感じている様子もある。

「あんまり緊張とかしないタイプ」だと語ってきた主将のMF藤田譲瑠チマ(シントトロイデン)でさえ、「きっと緊張すると思う」と語るほどだ。

 日韓戦の敗戦もあり、SNSなどで受ける批判や中傷に心を痛める選手も出てしまっているようだが、23日の夜には選手だけでのミーティングも実施。

「世間からどんなに叩かれようと、ここにいる選手23人とスタッフたちは絶対に仲間だからというような話をした」(DF内野貴史=デュッセルドルフ)

「人生で一番」と語る選手が複数いるほど、やはり代表の舞台というのは特別なもので、それ故に心の袋小路に迷い込んでしまったような選手もいたのだが、「雑談みたいな雰囲気で」(内野貴)語り合ったこのミーティングで「吐き出して楽になった」(MF佐藤恵允=ブレーメン)という声も聞かれた。

 注目度の裏返しでもある批判ぶった嘲笑、否定の罵声といったものは、現代の選手たちに非常に届きやすくなってしまった。その中で悪い影響を受ける選手も出てしまうが、これもまた乗り越えるべき経験ではある。

 逆に言えば、こうしたプレッシャーを感じられているのは、いま日本でこの23名だけ。そして、この重圧を乗り越えて成長していけるのも彼らだけである。ネガティブに捉える必要もないはずだ。

「プレッシャーはかかりますけど、余裕持って楽しまないといいプレーはできないんで」と言うFW藤尾翔太(町田)は、「一番目立つし、チームも僕もうれしいんで、それがいい」と、ゴールを目指すと笑った。

 また「大学サッカーはこんな注目されないんで、不思議な感じなんですけど、むしろうれしいっていうか」と少々脳天気なことを言い出したのはFW内野航太郎(筑波大学)。「ここで決めれば手のひら返しだと思うんで」と、こちらもどん欲にゴールを狙う。

「いかに自分たちが平常心で今まで積み重ねてきたことをできるかが鍵になってくる」と語った松木は、「プレッシャーは感じないです」と断言。記者から「負けたら終わりだが?」問われると、食い気味に「考えないです。絶対勝つので」と否定した。

 そこで「松木玖生はこういう一発勝負に強いよね」と問いかけてみると、「はい、そうです。見ててもらえればわかると思います」と言ってのけ、「(点を)決めます」とも宣言してみせた。

 いろいろなキャラクターがいるのでどういうスタンスが正しいといった単純な話ではないのだが、日韓戦の敗北後に生まれてしまった妙にネガティブな空気感は、少なくともチーム内においては振り払われた感がある。

 こうした大一番、まず乗り越えるべきは己自身にあるもの。ただ、何も一人で乗り越える必要はない。大岩監督は「23人全員で戦う」ことを重ね重ね強調してきたが、そうしたチームスピリットは間違いなく力になることだろう。

 勝ってパリ五輪へ王手をかける。日本時間25日23時、チームは結成以来最大の決戦を迎えることとなる。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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