大会直前に大誤算が生じたU-23韓国代表 パリ五輪出場へ白星発進もメディアが指摘する「不安」とは?

日本とも縁が深いファン・ソンホン監督率いるU-23韓国代表。U-23アジアカップの初戦はUAEに苦戦しながらも、後半アディショナルタイムにようやくゴールをこじ開けて勝利を収めた 【Photo by Zhizhao Wu/Getty Images】

 4月16日のU-23アジアカップ初戦でUAEに1-0で勝利した韓国は、グループBで同居する日本とともに勝ち点3スタートに成功した。グループステージ最終節に日本との直接対決を控える東アジアのライバルは、パリ五輪の出場権がかかる今大会に向けてどのようなチーム作りを進め、そして現在どんな状態にあるのか。

ファン・ソンホン監督の下、国際経験を積み上げてきた

 U-23韓国代表を率いるファン・ソンホン監督は、現役時代にセレッソ大阪や柏レイソルに所属し、1999年シーズンのJリーグ得点王に輝くなど日本をよく知る人物だ。U-23代表監督に就任したのは大岩ジャパン発足より3カ月早い2021年9月だが、“パリ五輪世代”としての始動時期は異なる。

 というのも、就任当初は2022年杭州アジア大会(2023年に延期されて開催)での金メダル獲得を目指す1999年以降生まれの世代を中心に活動していたためだ。2001年以降生まれの現世代が本格的に始動したのは2022年9月で、当時は同じファン・ソンホン監督が率いる代表でも「アジア大会代表」「パリ五輪代表」と異なる呼称が用いられていた。

 そのため、パリ五輪代表の実質的な活動期間は現在まで約1年8カ月と大岩ジャパンより短い。それでも韓国のパリ五輪世代も着実に国際経験を積み上げてきた。

 昨年3月のU-23ドーハカップでは3戦全勝で優勝し、同年11月の欧州遠征ではティエリ・アンリ監督率いるU-21フランス代表に3-0の完勝。今年1~2月には約3週間のトルコキャンプを行い、3月のU-23西アジア選手権では、ファン・ソンホン監督が暫定的にA代表を指揮するため不在だったなかでも優勝を成し遂げた。

主力と目された欧州組3人が大会直前になって合流不可に…

イングランド2部のストークに所属するMFペ・ジュノ(右)をはじめ、参戦が見込まれていた欧州組3人の招集を断念せざるを得ない事態に……。ファン・ソンホン監督にとっては大きな誤算だった 【Photo by Nathan Stirk/Getty Images】

 ただ、そんな韓国を今大会直前に襲ったアクシデントが一部海外組の“招集拒否”だ。

 そもそも、U-23アジアカップは国際Aマッチ期間外に行われるため選手招集の拘束力がないが、ファン・ソンホン監督は大会前に候補選手が所属する欧州各クラブを訪問し、招集許可を得るため交渉を進めてきた。MFペ・ジュノ(ストーク)やMFヤン・ヒョンジュン(セルティック)、DFキム・ジス(ブレントフォード)などが主な選手で、3月上旬時点では指揮官自ら3人の「(U-23アジアカップ招集の)約束を取り付けた」とコメントしていた。

 ところが、4月に入ると状況が一変し、3人ともチーム事情により招集が不可能と発表された。結局、国内のクラブから急きょ代替選手を招集せざるを得なくなった。加えて、北米MLSでプレーするMFチョン・サンビン(ミネソタ・ユナイテッド)は15日にようやく合流。つまり、最終確定メンバー23人が集まることができたのは初戦の前日だったというわけだ。

 年初のA代表アジアカップのメンバーだったヤン・ヒョンジュンとキム・ジスはもちろん、昨年のU-20ワールドカップで10番を背負ったペ・ジュノも、今大会で主力を担うと期待された選手だ。その3人が直前に合流不可となったのだから、国内は「ファン・ソンホン号に緊急事態」「パリ行きに赤信号」「飛車角銀落ち」など不安ムードに包まれた。

 2002年日韓ワールドカップなどに出場した元韓国代表で、現在は公営放送KBSで解説を務めるイ・ヨンピョ氏も、「“五輪出場は当たり前”と思われるかもしれないが、今回ばかりは状況が違う」と自国の後輩に厳しい評価を下す。

「日本やサウジアラビア、ウズベキスタンは韓国よりも強く、オーストラリアやカタールは韓国と戦力が同じくらいと感じている。客観的な戦力で見れば、韓国が(パリ五輪ストレートインの)上位3位以内に入ることは簡単ではない」

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著者プロフィール

韓国スポーツを得意とする制作集団。特に韓国サッカーの取材・寄稿・通訳・コーディネイトの実績が豊富で2008年~2014年にはKFA(大韓サッカー協会)公式サイト日本版も担当。現在は『Kリーグ日本版』『スポーツソウル日本版』などのウェブメディアを運営している。

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