日本の誤算、韓国の妙手 「絶対に負けられない」…わけでもなかった日韓戦の機微と「後々」への布石

川端暁彦

「絶対に負けられない」準々決勝へ

カタールとは昨年秋のアジア競技大会の初戦で対戦。3-1で日本が勝利している 【写真:森田直樹/アフロスポーツ】

 後半18分に日本は3枚替えから得点を狙いにいったものの、決定機を逃した直後にCKからゴールを許し、ビハインドを負ってしまう。その後もチャンスは少なからず作ったものの、結果は0-1の敗戦。韓国に勝利を譲る形となった。

 シュート数は14対6、ボール支配率は61.1対38.9、空中戦のデュエル(1対1)は63.6対36.4、地上戦のデュエルも57.0対43.0と日本が圧倒している内容ではあった。ただし、枠内シュート数は日本が2本に対し、韓国は3本。ゴールを奪ったのは韓国で、その差が勝敗の差という見方は一面で正しい。

 このため、個人の反省として、「決め切るところを決め切る」(MF松木玖生=FC東京)と、いわゆる「決定力」にフォーカスするのは当然だろう。グループステージで「当たり」の出なかったFW陣はそれぞれが猛省していた結果を次のステージに反映させたいところではある。

 ただ、チームとして持ち越すべき課題は少し違っているようにも思える。相手次第で様子見から試合に入り、やるべきサッカーを現出できなかったこと。実力差があってできないのであれば仕方ないとも言えるが、アジアの戦いでそこまで隔絶した差が生まれることはない。

 松木が「アジアのチームに関しては『相手に合わせない』というところがすごく重要になってくると思う」と語ったように、受け身になるのではなく、試合の立ち上がりから能動的に仕掛けていくべきだろう。

 逆に言えば、負けても次の試合があるこの段階で、その教訓を得たことをポジティブに捉えるしかない。

 途中出場だったMF山本理仁(シントトロイデン)はこう語る。

「勝つに越したことはないですけど、敗退したわけじゃない。最後にオリンピックの出場権を奪って、この1敗でチームがまとまったり、またチームが強くなったよねという話ができるように、まずはチャレンジしていきたい。それができるメンバーだと思うので、切り替えて前を向いていく」

 次の相手は開催国のカタール。昨年のアジア競技大会ではグループステージの初戦で対戦し、代表経験に乏しいメンバーで臨んだ日本が、FW内野航の得点などで3-1と快勝している。佐藤恵允(ブレーメン)も内野航も「良いイメージはある」と語っており、別に恐れるような相手ではない。

 もちろんアウェイの雰囲気、あるいは「不利なジャッジをされるのでは」という疑心自体が日本のプレーを萎縮させる可能性もあるが、そこを乗り越えられれば、またチームの財産が一つ増えるというものだ。

 若い選手たちにとって、開催国を向こうに回し、パリへの切符を懸けてのプレッシャーがあるゲームをこなせるのはさらなる成長へのチャンスでしかない。

「絶対に負けられない」準々決勝、アウェイの雰囲気の中、勝利を引き寄せていく、アクティブなプレーを見せてくれることを期待するのみだ。

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著者プロフィール

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣の『エル・ゴラッソ』をはじめ、『スポーツナビ』『サッカーキング』『フットボリスタ』『サッカークリニック』『GOAL』など各種媒体にライターとして寄稿するほか、フリーの編集者としての活動も行っている。近著に『2050年W杯 日本代表優勝プラン』(ソル・メディア)がある

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