ドラフトの目玉・関西大の金丸夢斗 早川隆久、武内夏暉らの大学時代と比べても成績が突出

西尾典文

アマ球界最高の左腕と評される関大の金丸。侍ジャパンでの活躍もあり、いまや明大のショート宗山と並ぶ今秋ドラフトの目玉と目される 【写真は共同】

 3月に行われた侍ジャパンの試合での鮮烈なパフォーマンスが記憶に新しい関西大の金丸夢斗。関大が加盟する関西学生野球ではまさに無双状態で、4月6日に開幕した春季リーグでどんなピッチングを見せるか注目される。この左腕がいかに素晴らしい投手であるかは、早川隆久(楽天)、武内夏暉(西武)ら近年のドラフトで目玉だった大学生サウスポーと比較することでより鮮明になるはずだ。

近年の目玉左腕の活躍も金丸人気高騰の要因

 2024年のドラフトは野手では宗山塁(明治大)が最注目と見られるが、一方で投手の目玉と言えるのが金丸夢斗(関西大)だ。3月に行われた侍ジャパンの強化試合にも招集され、第2戦で先発を任されて2回をパーフェクト、4奪三振という圧巻の投球で、6人の継投による完全試合達成に大きく貢献した。

 金丸が注目を集めている理由の一つには、右投手より希少価値の高い左投手であるということが挙げられる。そこで今回は、近年のドラフトで目玉と見られていた大学生左腕と比べて金丸のどんな点が優れているのか、その投球や成績から探ってみたいと思う。

 過去10年間のドラフトで最初の入札で複数球団による1位指名があったのは、早川隆久(早稲田大→楽天/2020年4球団競合)、隅田知一郎(西日本工業大→西武/2021年4球団競合)、武内夏暉(国学院大→西武/2023年3球団競合)の3人だ。

 早川と隅田はすでにローテーションの中心となりつつあり、新人の武内もプロ初登板となった4月3日のオリックス戦で7回を無失点の好投で早くも初勝利をマークしている。プロの世界は過去の成功事例が選手の評価に影響することが多分にあり、彼らが期待通りの活躍を見せていることが、「大学生の目玉左腕」である金丸の人気高騰につながっている部分もあるはずだ。

早川らと比較しても成績が突出している

2020年のドラフトで4球団が1位入札した早大の早川。プレーしていたリーグが異なる点は考慮すべきだが、現在は楽天に在籍するこの左腕と比較しても金丸の成績は圧倒的だ 【写真は共同】

 しかしそんな3人の投手と比べても、金丸が明らかに上回っていると言えるのが試合を作る能力の高さだ。3人と金丸の大学でのリーグ戦通算成績を比較してみると以下のようになる(金丸は2024年4月15日時点)。

■早川:53試合14勝12敗・防御率2.51(東京六大学)
■隅田:42試合14勝7敗・防御率1.96(九州地区大学野球)
■武内:36試合14勝7敗・防御率1.58(東都大学)
■金丸:34試合19勝3敗・防御率1.02(関西学生野球)


 早川、隅田、武内のいずれもが金丸とは違うリーグでプレーしていたため単純な比較はできないが、関大が加盟している関西学生野球は全国でも上位レベルのリーグであり、それを考えてもいかに金丸の成績が突出しているかがよく分かるだろう。

 リーグ戦デビューした1年秋は規定投球回数に未到達ながら防御率は1点台を記録。その後の4シーズンでは全て規定投球回に到達して防御率1点台を2度、0点台を2度マークしている。

 また先発した22試合のうち6回以上を投げて自責点3以下の“クオリティ・スタート”は19試合、そのうち7回以上を投げて自責点2以下の“ハイ・クオリティ・スタート”が15試合を数え、いかに高いレベルで先発投手としての役割を果たしているかがよく分かる。4月6日の今春リーグ開幕戦は京都大を相手に0-1で敗れてリーグ戦の連勝は18でストップしたが、この試合も8回を投げて自責点0であり、これで昨年秋から7試合連続での“ハイ・クオリティ・スタート”となった。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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