東京六大学2024春季リーグ展望 慶大、明大の牙城を崩すチームは現れるか?

高木遊

昨秋に日本一に輝いた慶大は、昨年1年間でリーグ戦9勝を挙げたエース外丸が健在だ。野手の主力級がごっそり抜けたとはいえ、今季も優勝候補と見ていい 【写真は共同】

 4月13日に開幕する東京六大学野球春季リーグ。2021年春からの過去6季は慶應義塾大、明治大のいずれかが覇権をつかんでいるが、果たして今春はどんな展開になるのか。各校の戦力分析や注目選手の紹介とともに、優勝校に与えられる天皇杯の行方を展望する。

2季連続優勝を目指す慶大は水鳥の活躍や清原の成長が鍵

 昨秋に4季ぶりのリーグ優勝を果たした慶應義塾大は、青山学院大を下して大学日本一となった明治神宮大会決勝のスタメンから廣瀬隆太(ソフトバンク)ら野手5人が卒業。4月1日の社会人野球対抗戦で堀井哲也監督が「打順はもう少し考えていきたい」と話していたように、ギリギリまで試行錯誤を繰り返していく。

 そのなかで期待されるのは、ドラフト候補に挙がる遊撃手の水鳥遥貴(4年/慶應義塾)だ。俊足と強肩を活かした守備には定評があり、昨秋に打率.271、11打点を記録した打撃がさらに向上すればチームの勝利もおのずと近づいてくるだろう。

 新戦力として期待が大きいのは清原和博氏の長男・清原正吾(4年/慶應義塾)だ。昨秋までリーグ戦通算5試合の出場で1安打のみながら、社会人野球対抗戦では7番・一塁手として先発出場し、内野安打で打点をもぎ取るなど貪欲な姿勢を見せた。堀井監督も「今年は頑張ってもらわなきゃ困る。計算している選手」と、父譲りの長打力や年々高まっている対応力に期待をかけている。

 投手陣は、昨秋にリーグ戦6勝0敗、明治神宮大会決勝でも青山学院大を5安打に抑えて完封した右腕・外丸東眞(3年/前橋育英)が今年も大黒柱。2番手以降は、昨秋に早慶戦2回戦や明治神宮大会準決勝などで先発として好投し自信をつけた右腕・竹内丈(2年/桐蔭学園)、一昨夏に浅野翔吾(巨人)らとともに甲子園8強入りした左腕・渡辺和大(2年/高松商)、元広島投手の広池浩司氏(西武副本部長兼編成統括)を父に持つ最速151キロ右腕・広池浩成(2年/慶応義塾)らがおり、堀井監督の采配にも注目だ。

戦力充実の法大が慶大、明大を追う

昨秋は4季連続優勝を逃して2位に終わった明大。大黒柱の宗山は怪我で今春は全休と見られるが、選手層は厚く、覇権奪還の可能性は十分だろう。昨年までのエース村田らが抜けた投手陣では、4年生の浅利(写真)や藤江などに期待がかかる 【写真は共同】

 春3連覇を狙う明治大は、侍ジャパントップチームに選出された「今年のドラフトの目玉」とも言われる宗山塁(4年/広陵)が主将に就任し、精神面でも引っ張る存在と目されている。しかし、2月下旬のオープン戦で死球を受け、右肩甲骨を骨折。それでも代役の遊撃手候補となっているのが、一昨年夏の甲子園準優勝に貢献した津田基(2年/近江)と侍ジャパンU-18代表歴を持つ光弘帆高(2年/履正社)ということからも層の厚さが窺える。

 また、宗山は4月3日の社会人対抗戦でベンチに入り、シートノックにも入った。田中武宏監督は戦力としては「いないものと考えている」と話しているが、ベンチでの姿勢については「本当によくやってくれている。自分のチームだと思って、いろんな指示を出してくれている」と感謝するように、試合に出ずともその存在はチームにとって欠かせない。

 投手陣は村田賢一(ソフトバンク)や蒔田稔(JFE東日本)、石原勇輝(ヤクルト)が抜け、未知数の部分が大きい。それでも浅利太門(4年/興國)、藤江星河(4年/大阪桐蔭)、千葉汐凱(4年/千葉黎明)、久野悠斗(3年/報徳学園)と力のある左右の投手が豊富に揃う。さらに、一般入試を経て入学した右腕・松本直(2年/鎌倉学園)もオープン戦で最速152キロを計測するなど力をつけており、楽しみな投手のひとりだ。

 慶大、明大に続く位置につけると言っていいのが法政大だ。様々な大学の監督が「大学野球は4年生」と言うように、最上級生の活躍や姿勢が鍵となることが多い。その点、法政大は4年生に有力選手が揃う。

 まず投手陣は、木更津総合時代からチームメイトとして切磋琢磨してきた最速157キロ右腕・篠木健太郎(4年)、最速151キロ左腕・吉鶴翔瑛が2本柱だ。篠木は昨秋に右肩を故障し離脱したが、開幕に向けての調整は順調。左足を高く上げるフォームを改良し、上げ幅は大人しくなったものの、「投げている時の気迫など良いものは消さないようにと思っています」と、熱のこもった投球が変わらず見られそうだ。吉鶴は昨秋に篠木が離脱するなかで5試合に先発し(登板数は9試合)防御率1.87と好投。自信をつけて最終学年のシーズンに臨む。

 彼らに続く投手も強力で、侍ジャパンU-15代表の経験を持つ左腕・安達壮汰(4年/桐光学園)と、こちらは軟式の侍ジャパンU-15代表歴を持つ右腕・山城航太郎(4年/福岡大大濠)が、ここにきて台頭。安達はリーグ戦未登板、山城は昨秋に2試合登板したのみではあるが、早くから高いポテンシャルを評価されていただけに開花に期待したい。

 打線も、昨年の春秋ともに3割を超える打率を記録した武川廉(4年/滋賀学園)、高校時代から注目されてきた中津大和(4年/小松大谷)、1年秋から出場を続ける西村友哉(4年/中京大中京)、主将で正捕手の吉安遼哉(4年/大阪桐蔭)と役者が揃う。

 充実の戦力と、オリックスなどで活躍した大島公一新監督(助監督から昇格)、近鉄の主戦投手として活躍した髙村祐・助監督の首脳陣で、2020年春以来の優勝を目指す。

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著者プロフィール

1988年、東京都生まれ。幼い頃よりスポーツ観戦に勤しみ、東洋大学社会学部卒業後、スポーツライターとして活動を開始。関東を中心に全国各地の大学野球を精力的に取材。中学、高校、社会人などアマチュア野球全般やラグビーなども取材領域とする。

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