センバツで評価を上げた野手10選 捕手の箱山に加え、外野手にもドラフト上位候補が揃う

西尾典文

4番、扇の要、そして主将として健大高崎を初の日本一に導いた箱山。2回戦までは打撃で結果が出なかったが、準々決勝、準決勝でいずれも3安打を放ち、大会通算.444の高打率を残した 【写真は共同】

 健大高崎の初優勝で幕を閉じた第96回選抜高校野球。今大会はドラフト候補という観点で見ても楽しみな選手が多く、大いに盛り上がった。そこで、今回のセンバツで評価を上げた選手を下級生も含めて、投手、野手それぞれに10人ピックアップ。投手編に続いて今回は野手編をお届けする。

箱山遥人(健大高崎/3年/捕手)

 大会前から高校ナンバーワン捕手との呼び声が高かったが、攻守にわたる活躍でチームを優勝に導き、その評価を不動のものとしたと言える。

 守備は地肩の強さだけでなく、フットワークやハンドリングも高レベル。打撃も長打力と確実性を兼ね備えており、4番としての役割を見事に果たした。またキャプテンとしてチームを引っ張る姿勢も素晴らしく、そういったプレー以外の面も高く評価できる。今年は大学生と社会人に有望な捕手が少ないだけに、高い順位でのプロ入りも十分に考えられる。

能美誠也(星稜/2年/捕手)

近年、星稜からは山瀬(巨人)、内山(ヤクルト)と好捕手が生まれているが、今後の成長次第ではそうした先輩の域に達しても不思議はない 【写真は共同】

 2年生の捕手では増田湧太(大阪桐蔭)、小泉蒼葉(宇治山田商)も目立ったが、現時点での総合力は能美がトップだろう。体つきはまだ細いものの、抜群のフットワークを活かしたスローイングは今大会屈指と言える。ミットを動かさずにしっかりボールを止められるキャッチング、投球の正面に入るブロッキングも高水準だ。打撃もミート力が高く、4試合で4割を超える打率を残した。

 順調に成長すれば、2025年の高校球界を代表するキャッチャーになる可能性は高い。

ラマル ギービン・ラタナヤケ(大阪桐蔭/3年/一塁手)

大阪桐蔭・不動の4番打者は数字的には物足りなかったが、高校屈指のスラッガーとして実力の片鱗は見せた 【写真は共同】

 3試合でシングルヒット2本、打点は1と期待されたような結果を残すことはできなかったが、それでも高校生離れしたパワーを見せた。全身を使ったフルスイングは迫力があり、右方向にも大きい打球を放つことができる。今大会でもあわや長打という当たりは多く、打球の速さも圧倒的なものがあった。

 一方で大会直前にサードからコンバートされたファーストの守備は捕球、送球、判断の全てが課題と言える状況だ。脚力と肩の強さはあるだけに、将来のことを考えると外野に挑戦するのも選択肢のひとつである。

高山裕次郎(健大高崎/3年/二塁手)

全5試合で3番・セカンドを務めて優勝に貢献。チームメイトの箱山とともにU-18代表候補にも選ばれた 【写真は共同】

 攻守ともに高いレベルのプレーを見せてチームの優勝に大きく貢献した。特に驚かされたのがセカンドの守備だ。昨年までは外野を守っていたとは思えないフットワークとグラブさばきを見せ、度々チームのピンチを救った。体は大きくないが、高いミート力とパンチ力のある打撃も持ち味で、5試合全てでヒットを放ち、積極的な走塁も光った。

 高校から直接プロというタイプではないが、欠点らしい欠点がなく、内野も外野も守れるのは大きな強みだ。将来的にはプロ入りも狙えるだろう。

石見颯真(愛工大名電/3年/遊撃手)

 チームは初戦で敗れたものの、持ち味のバッティングで強烈にアピールした。逞しい体格で下半身の粘り強さがあり、少し泳いだようなスイングでもしっかりミートすることができる。ヘッドの走りも抜群で、左打席から左方向へも引っ張ったような強い打球を放てるのも魅力だ。

 秋季大会が終わってから取り組んだショートの守備はまだまだ課題が多いが、将来を考えて内野に挑戦するという意識の高さも買える。打撃は高校球界でもトップクラスだけに、高校から直接のプロ入りも十分あるだろう。

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著者プロフィール

1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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