健大高崎、悲願の日本一へ 今度は甲子園で嬉し涙を流す

大利実

今年の健大高崎は主将の箱山(左端)をはじめ好選手が揃う。チームのまとまりもよく、初の全国制覇を果たすだけの力はある 【YOJI-GEN】

 2年連続7回目のセンバツ出場となる健大高崎。昨年は準優勝した報徳学園に初戦(2回戦)で敗れ、春夏を通じて初めて1勝もできずに甲子園を去ったが、今大会では優勝候補の一角という声も聞こえてくる。これまでの最高成績は2012年のベスト4。悲願である日本一を掴み取れるか。

泥臭く、気持ちを全面に出して戦う

 2023年7月下旬、夏の北海道遠征に向かうフェリーの中で、新主将に就いたばかりのキャッチャー箱山遥人の体に異変が起きていた。出発前から違和感を覚えていた腹部の痛みが我慢できないほど強くなり、太平洋沖で海上保安庁の船に救出され、岩手・石巻市の病院に緊急入院。診断結果は盲腸だった。

 遠征後に復帰を果たしたが、秋季県大会のシード権がかかった西毛リーグの初戦で東農大二に7-8で敗れ、ノーシードからセンバツを目指すことになった。

「足元を固める時期に、キャプテンである自分が離脱して、いい入りができなかったことがシードを逃した原因。負けてからは危機感がチーム全体に生まれて、『泥臭く、気持ちを前に出して戦おう』と言い合うようになりました。自分たちの代は『能力の高い選手が集まった』と言われていたんですけど、それだけでは勝てない。能力があるからこそ、ほかのチームよりも強い気持ちや気迫を全面に出していく」

 影響を受けたのが、4つ上の兄(直暖)がプレーしていた福島・聖光学院のチーム作りだ。兄から斎藤智也監督の話を聞いたり、本や記事を読んだりするなかで、勝てる集団に必要なことを感じ取った。

「勝って泣けるチームになろう」を合言葉に

四番でキャッチャー、そして主将を務める箱山は、仲間からの信頼も厚いチームの大黒柱だ。昨年のセンバツでも正捕手としてプレーした 【写真は共同】

 チームとして手応えを掴んだのが、県大会2回戦の翌日に行われた青森山田との練習試合だったという。逆転に次ぐ逆転の激戦のなか、気持ちで一歩も引かずに立ち向かい、1点差ゲームをモノにした。

 この勢いのまま群馬大会を制すると、関東大会準々決勝では中央学院に逆転勝ち。勝利の瞬間には箱山、森山竜之輔ら、主力選手の目に嬉し涙が見えた。

「日頃から何事も本気でやってきて、『勝って泣けるチームになろう』とみんなで言い合ってきました。でも、それがどういうチームなのか、自分たちもわからないまま戦ってきたんですけど、中央学院に勝ったあとには自然に涙が出てきて。自分たちがやってきたことは間違っていなかったと実感できた試合でした」

 プレー面だけでなく、リーダーシップにも優れ、仲間からの信頼も厚い箱山。江戸川中央シニア時代からのチームメイトで、寮では同部屋でもある森山は、笑いを交えながら語る。

「普段は“構ってほしいタイプ”で、よくちょっかいを出してきます。たぶん、人とずっと喋っていたい性格なんだと思います。独り言も多い(笑)。それが、グラウンドに入ると一気にスイッチが入って、ミーティングでもいつも気持ちが入るようなことを言ってくれる。本当にすごいやつです」

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著者プロフィール

1977年生まれ、横浜市出身。大学卒業後、スポーツライター事務所を経て独立。中学軟式野球、高校野球を中心に取材・執筆。著書に『高校野球界の監督がここまで明かす! 走塁技術の極意』『中学野球部の教科書』(カンゼン)、構成本に『仙台育英 日本一からの招待』(須江航著/カンゼン)などがある。現在ベースボール専門メディアFull-Count(https://full-count.jp/)で、神奈川の高校野球にまつわるコラムを随時執筆中。

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