【FC東京】W杯サバイバルに参戦せよ! FC東京のパリ五輪トリオが日本代表入りを狙う

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サッカー日本代表が8大会連続のFIFAワールドカップ出場を決定。2026年にカナダ、アメリカ、メキシコで共催される本大会の出場権を獲得した。ここから最終メンバーを巡るサバイバルが始まり、限られた最終登録メンバー入りのイスを多くの選手で争うことになる。

本大会に向けて新戦力の台頭が期待されるなか、昨夏のパリ五輪に出場した選手たちの成長と進化が待たれるところ。リヨンで行われたスペインとの準々決勝に敗れた直後、大岩剛監督からは「SAMURAI BLUEで成長した姿を見せてほしい」と想いを託された。そんなバトンを受け取った選手が、FC東京にも3人在籍している。

佐藤恵允、木村誠二、そして野澤大志ブランドン。三者三様、それぞれの道で憧憬の舞台をめざす彼らの想いと現在地に迫った。

【©FC TOKYO】

佐藤恵允
ドイツ帰りのストライカーは、ゴールを希求する。佐藤恵允は自身のキャリアを輝かせるのは歓喜の瞬間だと知る。

「単純なんですけど、結局は数字」

その答えに行き着いたのは、コロンビア人の父と日本人の母を持つ彼の特異なキャリアの描き方にあるのかもしれない。

幼い頃から目標にしてきたのは、スタジアムやテレビの中で青いユニフォームを着て、一身に声援を注がれる憧れの存在だった。ただ、日本代表は「いつかは行ってみたいけど、遠い存在だった」という。小中高とサッカーボールを追いかけてきたが、世代別代表とは縁遠く、無名に等しい選手だった。

それが明治大学入学後、才能を開花させて一気に距離が縮まった。大学サッカーで力強い突破を武器に頭角を現し、2021年5月にU-21日本代表候補に初選出。その後は世代別代表の常連メンバーに定着すると、2022年1月には日本代表のトレーニングパートナーとして合宿にも参加した。

「大学に入ってポッと一度練習に入れてもらった時、もしかしたら今は意外と近い存在になっているかもしれないと意識し始めた。そこから日本代表を強く意識しようとするようになった」

憧れは目標に変わった。パリ五輪を1年後に控えた2023年夏、彼は大きな決断を下す。明治大学サッカー部を退部し、ドイツ1部のSVヴェルダー ブレーメンへの加入を発表。自身のたどり着きたい場所を望み見た時、素直な気持ちに従って海を渡った。

「やっぱり日本代表は、海外でプレーしている選手がほとんど。それこそブンデスリーガで活躍したら代表に入れるという気持ちで僕はドイツに行きました」

翌年、パリ五輪には出場したが、ドイツでの主戦場はセカンドチームのままだった。今年1月に「もう一度経験を積んで自分の価値を上げたい」と帰国を選択。Jリーグ初挑戦のクラブには地元のFC東京を選んだ。

「まずはJリーグで圧倒的な存在になることが絶対に必要だと思う。自分を信じていくしかない。もちろんもっと技術的にうまくなって、強度の高い選手にならなければいけない。その上で、Jリーグで無双するくらいやらないとダメだと思う」

毎日の練習から研さんを惜しまない。その上で、めざすのはゴールとアシストの「数字」なんだという。

「分かりやすいのはやっぱり数字。どんなに前に前にゴールに向かっても、結局ゴールをとれなかったら意味がない。判断基準として一番分かりやすいのが、結局は数字なので。やっぱりゴールとアシストを残していくことが、日本代表への一番の近道でもある。そうすればJリーグでも活躍していることが周りから見ても一目瞭然になる。だから数字です」

【©FC TOKYO】

明快な答えだ。東京では攻守に果敢なプレーで存在感を強めており、佐藤のプレーからは「得点が欲しい」という気持ちが伝わってくる。日々の練習でディテールを積み上げ、試合ではウイングでもフォワードでも関係ない。いつだってゴールに矢印を向け続ける。

素直で、実直。捉え方、考え方も直球だ。分かりやすい下克上を狙う。いつか誰もが「日本代表には佐藤恵允が必要だ」と言わせる。「その自信は?」の答えは、もちろん「あります」だった。

【©FC TOKYO】

木村誠二
ここにもワールドカップをめざす選手がいる。それは冬の雪が解け桜の舞う春へと季節が変わるように、ごく自然な感情なのかもしれない。パリ五輪出場を経て、木村誠二は自分の胸の内の変化をこう言葉にする。

「もう世代別がなくなって、次に集まれるのは日本代表しかない。そこからですね。ワールドカップを強く意識するようになったのは」

日本代表経由パリ五輪行き──。パリ五輪代表を率いた大岩剛監督は、選手たちにそう言い続けてきた。

「だけど、(パリ五輪世代は)数人が日本代表に呼ばれているなかで、自分は全くかすりもしなかった。めざしてなかったわけじゃないですけど、それでもまだ遠いと思っていた」

昨シーズンは期限付き移籍したサガン鳥栖で出場機会を得ると、目標にしてきたパリ五輪出場をかなえた。結果はスペインの前に準々決勝敗退。そのスペインもEUROに出場した同世代のフル代表を欠くメンバーで、「自分がどれだけ世界のトップレベルに近付けていないかを痛感した」という。同時にセンターバックとして「やっぱり失点しないことが一番」という悔しい敗戦からの学びもあった。

「スペインは日本の攻撃をしっかり止めていたし、ゴール前までほとんど行かせてもらえなかった。センターバックとして、そこがちゃんとできている選手じゃないといけない。その上での足下の技術やポジションのうまさだと思うので、まず失点しない能力を純粋にもっと上げなきゃいけない」

そうした気づきや自らの成長も実感し、視野を広げ、視座を高くした。

「今までは第一の目標が五輪だった。昨シーズンを通じて試合に出て、五輪も経験したなかで、次の目標を考えたら、そこは日本代表になる。そこをめざす気持ちがより強くなった」

パリ五輪でコンビを組んでいた高井幸大(川崎フロンターレ)は、昨年9月に行われた中国との最終予選で一足先に日本代表デビューを飾り、ワールドカップ北中米大会の出場権を獲得したメンバーにも名を連ねている。

「隣で組んでいたあいつのうまさや強さは分かっているし、日本代表に入れる一つの基準を知れた。隣でプレーしていた選手が代表に行ったことは嬉しいし、悔しい。まだ足りないのも分かっているが、より足りない部分は明確になった」

さらにFC東京でチームメイトの長友佑都は「ワールドカップは中毒になる」と言い、前人未到の5大会連続出場をめざして奮闘を続けている。その姿を間近で見て、「ちょっと怖いぐらいですけど(苦笑)。あれだけとりこになるような大会なんだな」と想像を膨らませる。

「だから相当楽しいんだろうな、と。五輪ですら違った。世界大会という場で気分が上がるものもあった。それがもっと大きな大会になったら、どれだけすごいものなんだろう、と。なんとなく想像はつくけど、おそらく行ったらそれ以上のことが体験できる。行ってみないと分からないし、きっとあそこまではならない」

【©FC TOKYO】

再び青赤に袖を通した今シーズンは、開幕直前のコンディション不良で出遅れを余儀なくされたが、ようやく戦列に復帰。ここから木村は「やれる自信はあるし、それが過信だとも思っていない」と言い、自らの成長をピッチで示すことを誓う。その先には「今年が本当にチャンス」と日本代表入りを視野に入れる。7月の東アジアE-1サッカー選手権を「めざす」と明確に口にする。

足を止めなければ、夢や目標は大きくなり続ける。そのごく自然な感情に従い、また一歩と足を進める。そうして、木村は「やるからには自分がどこまでいけるか知りたくなった」と、見据える世界の解像度を上げていく。

【©FC TOKYO】

野澤大志ブランドン
アメリカ人の父と日本人の母を持ち、ダイナミックなプレーと神懸かったシュートセーブでピンチを救う。青赤から日本の守護神をめざす野澤大志ブランドンは、FC東京で結果を出し続け、自らと向き合いながら、再び招集の声が掛かるのを待っている。

「来年にはワールドカップを控えているので、本当に時間も少ないですし、あそこに入っていけるようにチームとしても、個人としても結果を出していかなきゃいけない思いに駆られています。招集されたらいつでもしっかりと結果を出したいなと思っている。夢がありますし、もし日本代表として戦えるのであれば、それはすごく誇らしいことだと思う」

加速度的な成長で、日常を変えてきた選手だ。2023シーズンにいわてグルージャ盛岡から武者修行を終えて青赤に帰ってくると、シーズン終盤に定位置を奪取。そこから「まだまだ」、「もっともっと」と際限なき成長をめざしてきた。その研さんが実を結び、2023年末に日本代表に初選出。昨年1月に行われたAFCアジアカップ カタール 2023のメンバーにも選ばれた。そこでの時間をこう振り返る。

「日本代表は個々が自分の思い描くイメージを表現していて、そういう選手たちが集まって、より力強いチームになっていると感じた。本当に自分自身のイメージを表現するスピードが大事。考えながらプレーしているようでは遅いし、合わせながらプレーしていても遅い。自分自身がどんどん積極的に主導権を持ってプレーして、そのプレーを技術で説得力を持って表現していかないといけない」

アジアカップでは出場機会がなかったが、その経験を生かして「表現していくことや、自分のプレーを積極的に発揮していくという部分ではすごく変わったと思う」と言う。

昨夏のパリ五輪もメンバー入りし、チームはベスト8に進出。2019年のFIFA U-17 ワールドカップ ブラジル大会以来となる世界大会の空気を吸った、野澤は「短期間で戦うので、キーパーの重要性を学んだ」と言ってこう続ける。

「ゴールキーパーは選手としてうまくプレーすること以上に、ピッチ内でもピッチ外でもどれだけエネルギーをチームにもたらせられるかが重要になる。特に短期間のタフなゲームが続くなかで、すごく大きな役割を担っていると思いました」

ただし、五輪でピッチに立つことは叶わず、大会直後は「物足りなさがあった」という。

「特別な経験でしたし、東京に戻ってきたことで慣れが出てしまって、刺激が薄まったこともある。ただ、時間が過ぎていくだけだともったいないので、この瞬間を大切にしていきたい」

その誓いは守り続けている。自分を見上げず見下ろさず、ただまっすぐ自身と向き合う日々の瞬間、瞬間を大切に過ごしてきた。

【©FC TOKYO】

「自分が今いる環境はFC東京ですし、FC東京で違いを出すことが一番。ワールドカップは世界の舞台だし、日本代表の基準はヨーロッパのリーグのレベルにあると思う。自分の立ち位置は肌で感じられていないから分からないけれど、現状に満足しないで向上心を持って成長し続けること、違いを出し続けることが大事だと思う」

「もしも」や「たられば」はない。アジアカップもパリ五輪も日本のゴールマウスを守ることはできなかったが、丁寧に積み重ねた日々はこう吐き出させる。

「あの時の僕は、もし出場しても良いプレーができなかったかもしれない。だけど、今ならやってやると思っているので、使われたら十分に後悔のないようにやり切りたいと思っています」



佐藤恵允は明快な数字で語り、木村誠二は視座を高くし、野澤大志ブランドンは丁寧な日々を過ごす。それぞれが彼の地にたどり着くために研さんを積む。青赤の若武者たちが、まだ見ぬ大舞台をめざして。


Text by 馬場康平
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著者プロフィール

FC東京は、「東京都」全域をホームタウンとする、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)に所属するプロサッカークラブ。

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