2024年F1日本GP、春開催へ変更の影響は? 広報、メディア、エンジニアらの本音
今年は3日間をとおして22万2000人もの観客が日本GPを訪れた。一部の観客に話を聞いたところ「開催時期に関係なく、24年も来ます!」という声が多かった。熱烈なファンが多いといわれている日本GP、春開催になってより一層パワーアップしそうだ 【Red Bull Content Pool】
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1987年からは舞台を鈴鹿サーキットに移し、日本GPとしてほぼ毎年開催されてきた(2020、21年はコロナ禍で中止)。2007、08年の富士スピードウェイでの開催を含め、すべての日本GPが、秋開催だった。
それが来年は4月開催となる。これまで春に組み込まれてきたアゼルバイジャンGPと、入れ替わる形だ。F1を運営するフォーミュラワン・グループは近年『リージョナル開催』という概念を掲げている。世界各地をいくつかの地域に分け、同一地域での開催をできるだけ同じ時期にまとめ、効率的かつエネルギー排出の極力少ない移動を目指す取り組みだ。実際、来季の日本GPの前後にはオーストラリアGP、中国GPが予定されている。
では日本GPが春に移動することで、具体的にどのような変化が予想されるのだろうか。今年の日本GPは、つい数日前に終了したばかり。来年の日本GPは、約6カ月という短いスパンで開催されることになる。となると矢継ぎ早の開催による、観客数の減少が危惧されるところだ。
しかし日本GPの広報担当者は、「そこはあまり心配してません」という。「熱心なファンは毎年待ちきれない思いでしょうし、むしろ半年後に観戦できることを喜んでいるくらいだと思います。イースターの旅行シーズンでもあり、インバウンドの増加は今年以上に期待できるでしょうね」。
一方、ハースF1でギュンター・シュタイナー代表の右腕として活躍する小松礼雄エンジニアは、「シーズン大詰めで、チャンピオンが決まるかどうかというワクワク感。それがなくなるのは残念です」と語る。「子どものころF1を見始めたのは、ちょうどセナ・プロスト時代でした。シケインの接触事故を、ハラハラしながら見ていました。タイトル決定戦というのが醍醐味のひとつだったから、それがなくなるのはちょっと寂しいですね」。
実際、小松エンジニアの子ども時代だった1980年後半〜90年代初めはその傾向が特に顕著で、1987年から91年まで5年連続鈴鹿でチャンピオンが決まっている。近年も2019年と今年はコンストラクターズタイトルが、そして昨年はドライバーズタイトルが鈴鹿で確定した。
それに対して「春開催は他の見所もある」と主張するのは、フランス『レキップ』紙のF1ジャーナリスト、フレデリック・フェレだ。
「シーズン4戦目で、まだ各チーム間の力関係が定まっていない。しかも序盤3戦は市街地サーキットなど、マシンの戦闘力がはっきり見えにくいコースだ。そこに鈴鹿という、ドライバーにとってもエンジニアにとっても非常に難易度の高いコースが登場する意味は、非常に大きいと思う。いつも以上に、鈴鹿に来るのが楽しみになりそうだ」
みんなが鈴鹿を待っている
序盤戦に組み込まれると今年のようなタイトル決定の瞬間を見届けるのは難しくなるが、勢力図が固まりきっていない時期であるため『誰が勝ってもおかしくない』ワクワク感が味わえそうだ 【Red Bull Content Pool】
ただし広報担当によれば、鈴鹿市内の桜の満開時期は例年3月末とのことで、4月には散ってしまっている可能性は高い。そこは開花の遅れを、期待するしかないだろう。
最後に、春の日本GPはどんなレースになるだろうか。鈴鹿・日本GPはこれまで、波乱の展開になることが多かったが、台風襲来の恐れがなく、天候も比較的安定している春開催でもそれは変わらないのだろうか。
「そこは特に変わらないでしょう」と、小松エンジニアは言う。
「春の鈴鹿は、路面温度も風向きも変わるかもしれない。でも秋開催であっても、昨年と今年だけでも全然コンディションが違いましたよね。クルマも毎年まったく違ってきますので、大事なのはいかにサーキットに合わせて100%の性能を発揮させるか。それは春でも秋でも同じですよ」
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