「危機感」が高まるパリ五輪最終予選  “国内組”の平河と荒木がU-23代表を救う新星に

大島和人

2年ぶり出場の荒木も存在感

DFの「隙間」に入り込めるのは荒木の強み 【写真:YUTAKA/アフロスポーツ】

 もう一人インパクトを感じたのが荒木遼太郎だ。高卒2年目の2021年に鹿島アントラーズで10得点を挙げた技巧派だが、その後の2シーズンはパフォーマンスを落としていた。今季はFC東京への期限付き移籍をきっかけに浮上し、開幕からの4試合で4得点と再ブレイクを見せている。U-23代表への参加は2年ぶりだった。

 マリ戦は起用されなかったものの、ウクライナ戦でインサイドハーフとして先発。染野唯月(東京ヴェルディ)とともにプレスの先頭に立ち、攻撃では再三再四の決定機に絡んだ。5本放ったシュートを決められず、67分で交代したという結果を見れば、悪いインパクトを残したとも言える。

 しかし彼がウクライナ戦の攻撃をけん引していたことは間違いないし、1本でも決めていればヒーローだった。

 試合後の荒木はこう振り返っていた。

「最低限のプレーはできたと思います。リーグ戦から続いて、ゴール感覚もあったので、シュートは積極的に行こうと思いました。自分のプレーはできたし、そんなに悪いと思ってはいません」

 ボランチの藤田はこう口にしていた。

「荒木はパスの精度、スペースでボールを受け取る技術が本当に高い。そういったところで自然と荒木にボールが入るシーン、奪った後のもうワンパスが彼に当たるシーンは多かった。決めたらベストでしたけど、あれから自分たちに流れが傾いた」

 荒木は170センチと小柄だが、狭いスペースに入り込んでボールを受ける、崩しに絡めるところは他の選手にない強みだ。ウクライナ戦は藤田、松木玖生(FC東京)とインサイドハーフを構成したが、その連携も良かった。

 荒木はこう振り返る。

「(松木)玖生はチームでやっているときも結構(低いエリアに)落ちながらプレーしてくれる。今回も落ちてくれるかなって思って、自分は高い位置を取りながら、いい関係でやれていたと思います」

 荒木の攻守における貢献、チームへの適応も、U23アジアカップに向けた収穫と言っていい。

「新星」の輝きがパリ五輪出場の決め手に

 Jリーグは良くも悪くも「若手を育ててヨーロッパに送り出す」リーグとなり、高校卒業と同時に渡欧する才能も増えている。欧州のクラブで戦力となれば、U-23代表の活動には招集が難しくなる。選手を呼びやすく、さらに出場枠が大きなA代表の予選に比べると、パリ五輪予選はかなり高い壁だ。

 入れ替わりが激しい中でどうチーム作りを進めるか、アジアの「引いてくる相手」とどう向き合うかはそれぞれ難題だ。一方で挑戦は若者たちの良き経験ともなる。

 そしてJリーグからは、新たな輝きが見えている。人材の輩出力と層の厚みは、そのまま日本サッカーの強みと言っていい。今季のJ1で輝いている平河と荒木は、今回の強化試合でも持ち味を出していた。そんな「旬」の選手の活躍はチームの希望であり、日本がU23アジアカップでパリ五輪出場権を勝ち取るための条件だろう。

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著者プロフィール

1976年に神奈川県で出生し、育ちは埼玉。現在は東京都北区に在住する。早稲田大在学中にテレビ局のリサーチャーとしてスポーツ報道の現場に足を踏み入れ、世界中のスポーツと接する機会を得た。卒業後は損害保険会社、調査会社などの勤務を経て、2010年からライター活動を開始。取材対象はバスケットボールやサッカー、野球、ラグビー、ハンドボールと幅広い。2021年1月『B.LEAGUE誕生 日本スポーツビジネス秘史』を上梓。

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